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NHK「「被曝(ひばく)の森~原発事故 5年目の記録~」: 福島の放射能は安全だって

2016-03-07
 ひで~な、NHK!!
 一応終了している本ブログですが、一言、書かずにはいられないじゃないか。
 昨日2016年3月6日放送のNHKスペシャル「被曝(ひばく)の森~原発事故 5年目の記録~」、11分35秒くらい~16分25秒頃までで紹介される弘前大学・三浦富智・准教授の研究紹介、

被曝(ひばく)の森01

(ナレーション)「つまり、ネズミは被ばく量が多いにもかかわらず、現在のところ、染色体への影響は見られない。」

 だそうです。
 三浦富智の研究というのは、福島原発事故で汚染された森で捕獲されたアカネズミの染色体を調査して、放射線の影響を考える研究なのだそうですが、この研究、最初から間違ってます
 番組のナレーションは言います、「アカネズミが暮らす森の地面、今なお高い放射線量が測定される。また、食べ物となる木の実なども汚染されている。体の中からも、外からも被曝するアカネズミは、影響を受けやすいのではないかと三浦さんは考えた。」
 こんな考えでアカネズミを調査しているならば、研究者として大バカでしょう。なぜなら、ネズミはネズミ算で生きている生物だからです。
 誰でも知ってるように、ネズミは多産です。アカネズミがどれだけの繁殖力を持っているかは知りませんが、ラットなどでは一度の出産で子ネズミを5~6匹生み、これを3~4か月ごとに繰り返し、2年程度続きます。ざっと掛け合わせると30匹以上、しかも、子ネズミの方も3~4か月で出産可能になりますから、こっちも増えて・・・まあ、とんでもないネズミ算です。
 でも、ネズミが増えすぎて困るといった事態は、普通の森の中では起きません。ある森の中では、ほぼ一定の個体数が維持されています。何が起きているかといえば、例えば、1匹のネズミが15匹の子を残すなら、次の世代に生き延びるのは1匹だけで、他の14匹は死んでいるということです(1つがいから30匹なら、1匹ならその半分ということで、とりあえず15匹)。キツネやタヌキ、イタチに猛禽にヘビ、と、ネズミを餌にしている動物はいくらでもいて、大抵のネズミは喰われて死んでいる、ということです。その森の許容するニッチのサイズ(個体数)を超えた個体は、理由の如何によらず消去される、というのが森の掟です。
 このような強烈な生存競争(高い淘汰圧)の下にあるのがネズミですから、遺伝子異常でもなんでも、ちょっとでも調子の悪い個体がいれば、それはすぐに生存個体群から除去されます。毛の色が保護色と違ってしまった、ちょっとした体調不良で素早く逃げられない、関節の形が変形していてうまく動けない、なんて個体はすぐに捕食者に食われるでしょう。つまり、その辺をピンピン跳び回っている個体を捕まえてみたところで、遺伝子異常なんて見つかるはずがないのです。問題は、死んでいった14匹のうち、放射線障害に起因する死亡個体数が、1匹だったのか、7匹だったのか、ということなのです。死んでしまってここにいないネズミこそが放射線障害の真実を証明できるのであって、ここにいるネズミは何も語らないのです。死人に口なし、いや死ネズミに死体なしなのですから、結局、何もみつかるはずないのです。(細かく言えば、生きているネズミでも、月齢数を比較することにより、多少の推計を試みることはできる・・・障害発生が死に直結すると考えられる今回のケースでは、生涯の各時点での放射線障害発生率=死亡率上昇は、ニッチに許容される個体数や個体群の健康度を変化させなくとも、早めに死ぬ確率を高くするわけですから、個体群構成の低年齢化はさせると考えられる・・・しかし、そのためには、膨大な個体数の月齢を測定する調査と、放射線以外の要素が全て同じというあり得ない前提を置かないと、なかなかうまくいかないはずですが)。
 こういうインチキ研究をもとに、

(ナレーション)「これまでの調査では、奇形や個体数の減少など、目に見える異変は見つかっていない。」

被曝(ひばく)の森2
(三浦発言)「この線量が本当に体に悪いのか、実際はわからない部分が多いのが現状」

 と来ます。バカかぁ。わざと「実際」が分からないようにする研究してるんじゃないか。

 で、これがいかに悪質かというと、

福島県内の野生生物における遺伝学的変化を指標とした放射線の生物影響評価
 三浦富智が研究分担者として名を連ねている報告ですが、

「本年度は、以下に示す研究成果を得た。まず第1に、2011年秋期では両地域で捕獲したアカネズミの齢構成を比較すると、齢カテゴリーwIV(2011年2~6月出生)の個体は青森県で27.3%を占めるのに対し、福島県では捕獲されなかった。また2012年春期においても齢カテゴリーwV、VI(2011年1~10月出生)の個体が青森県に比べ福島県では有意に少なかった。いずれの場合も福島第一原子力発電所事故発生時期に出生した個体が少ないという結果を得た。」

 と書いてあります。何を研究しなければならないか、解っているじゃないですか。ネズミの歳、月齢(引用文中の「齢」)ですよ。

 もっとも、その後で「一方、両地域間では、染色体異常頻度や個体成長率に有意な差が認められなかった。以上より震災前後に出生した個体数の減少における放射性物質の影響である可能性が少ないことが示唆された」とも書いてあります。ネズミ算の世界が本当に解っていないバカなのか?? (そもそも、福島では原発事故期に生まれたネズミがいない--青森では27.3%もいたのに--というのが、原発事故の影響ではないと、何でそうなる??)

 いずれにせよ、ここまでバカな研究(もしくは分かってやっているなら悪意に満ちた研究)をたっぷりと時間を取って紹介するNHK、原発推進安倍政権へのご奉仕ご苦労さんなことです。

 ちなみに、この番組も最後のところでは強烈な淘汰圧のかかっていない(ネズミ算の世界ではない)サルの研究例を出して、放射線による異常が発生してることを述べざるを得なくなっています。ま、人間が考えなければならない問題が、ネズミ算の世界と、サルの世界のどちらに近いのか、明らかではあります。


PS. 生きネズミの染色体に語らせるならば、DNAの中立領域における変異確率を調べて、そこから、DNAの有用領域へのダメージを推計するという方法も考えられるでしょう。でもそれは、染色体の中身となるDNAの分析なので、三浦がやっている染色体の数を数えるような原始的な研究方法では絶対に無理なことです。


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危険!! 放射能汚染、ステルス化!!

2014-08-30
 8月25日の福島事故原発に関する東電記者会見、その最後のところでフリージャーナリストの木野氏が突っ込んでいる問題、東電の回答にあまりにも重大な内容が含まれていたため、あせった木野氏が東電の明らかな発言ミスを見過ごしてしまうほどなのですが、メディアでは全く取り上げられませんね~。



 木野氏「去年から今年にかけて、セシウムの量とストロンチウムの流出量が逆転しているのは、・・・略」

 ことが重大すぎで、木野氏自身も、この後の質問があさっての方角に行ってしまっていますが、昨今ではセシウムよりもストロンチウムの方が多量に放出されているということは、大変な事態です。
 なぜなら、ストロンチウムは見えないからです。
 いや、正確に言えば、見ようとすれば見えるのですが、手間がかかる(金が掛かる)ことを理由に、政府が測定しない、ボランティアもそこまで手が回らないのが、ストロンチウムです。
 ですから、放射能汚染の主体がストロンチウムであれば、計測されない・・・見えない、ということになります。
 しかも体外に排出されるセシウムと違って、ストロンチウムは体内に蓄積されますから、セシウムより少量で大いに危険です。少しづつでも体内に溜まっていきます、特に骨に。
 この点から言うと、「海水を分析しても計測限界以下だったが、魚の骨にはしっかり蓄積していた」、というような意味でもステルス化の危険があります。

 この事態、実は小野先生が1年も前に警告を発されていた事態です。

 「海水中のストロンチウムはセシウムの10倍。深刻化する海産物の放射性セシウム濃縮」(「院長の独り言」ブログさん 2013年7月3日)

 この時は、でも、セシウムもかなりの量出ていましたから、それなりに(大雑把なモニタリングでも)、汚染魚は汚染魚として(セシウム汚染魚としてですが)発見される可能性がありました。しかしセシウムが減り、もっぱらストロンチウムが汚染物質の主体となってしまったとすると、放射能汚染が発見さえされないことになります。
 現状の水産物監視体制の刷新が求められます。技術的には、やればできるはずです。

 「台風が暴いたストロンチウム測定時間と破損の恐れがある1F高レベル汚染排気筒」(「院長の独り言」ブログさん 2013年10月16日)

 やはり小野先生の指摘です。「(台風による低濃度汚染水放水の際)なんと、ストロンチウムの分析がほんの数時間で終わっています。水産庁の役人は、ストロンチウムを測定するのは、4週間かかるから測定しても意味がない と豪語していましたが、今回の台風騒ぎで嘘がばれました。なぜ、放出するときには簡単に-しかもリットル当たり1Bq以下の精度で-測定できるにもかかわらず、人間の口に入る食品になったとたんに調べようとさえしないのでしょうか。/サカナの骨などを対象にすれば、ストロンチウムが大量に検出されることでしょう。」
 う~ん、後半部、気になりますね~。“魚の骨から大量のストロンチウムが検出されたりしたら水産物が売れなくなる、だから検査しない”ってのは、水産庁、いかにもありそうです。
 とにかく、海洋の放射性物質汚染はステルス化している、これを頭において、我々は生活していく必要があります。ま、基本的に、太平洋の魚は食べない、ということでしょうか。皆で食べず、売上が激減すれば、水産庁も計測せざるを得なくなる、といった状況に追い込んでいく必要があるように思えます。



 ところで、陸の上ですが、ステルスには高性能レーダーです。ということで(苦しいこじつけだ・・・)、疫学・統計的レーダーです↓

セシウム心筋梗塞
(「福島県で急増する『死の病』の正体を追う!~セシウム汚染と『急性心筋梗塞』多発地帯の因果関係~【第1回】」 8月26日)

 『宝島』編集部の力作です。単に地図を描き出すだけでなく、原発事故による飛散放射性物質以外の原因を排除する作業を、沢野伸浩・金沢星稜大学女子短期大学部教授の支援を受けて、やっています。
 それにしても実に、汚染地図のとおりです。

早川部分2
早川先生の汚染地図から部分)


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また食道ガンです・・・福島原発行動隊・前理事長、死去

2014-06-18
 福島原発行動隊・前理事長が死去しました。

 「山田恭暉氏死去=福島原発行動隊前理事長」(時事通信HP 6月18日)

 福島第1原発の事故直後、“事故対策に当たる作業員の被曝を老年世代が肩代わりしよう”と呼び掛け、退役技術者による「福島原発行動隊」を結成し、収束作業にあたった人です。【訂正】作業は行っていませんでした。「原発利権に阻まれた」そうです。
 死因は「食道がん」だそうです。吉田・福島第一原発所長(事故当時)と同じ死因です。

 吉田所長(福島当時)について、当時の報道記事は「事故後の被ばく放射線量は約70ミリシーベルトで、食道がん発症の原因になった可能性は極めて低い」と記しています。
 今回の山田前理事長も“福島原発事故とは関係ない”、とされるのでしょうか?? 原発事故収束作業での被曝のせいで死なせてもらうのが「本望」なんだろうな、なんて思ってしまいますが。

 チェルノブイリ事故作業員における、がん発症状況です↓

チェルノブイリ発がん数s
(ドイツ放射線防護協会・核戦争防止国際医師会議ドイツ支部・著、原発の危険から子どもを守る北陸医師の会・訳 『チェルノブイリの健康被害-原子炉大惨事から25年の記録』の「第2章 汚染除去作業員」内の表をグラフ化)

 “5年経たなければ発症しない”、なんてこと、なさそうです。
 それに、そこらじゅうを舞っていたであろうホコリ(ホットパーティクル)を食事の際に一緒に摂取してたら、食道なんて、いかにもやられそうな気がします。生唾を飲むシーンもいろいろあったでしょうし。

 吉田(当時)所長について言えば、入院後、「12年7月には脳出血で倒れた」なんてこともやってますから、70mSvという数字自体、なんかとっても怪しいんですけどね。

チェルノブイリ疾患数
(上のグラフと同じ)

 茶色のライン「循環器」の疾患(吉田元所長の「脳出血」というのは血管の疾患ですから、これにあたると思いますが)は、悪性新生物(ガン)の20倍以上、発現する症状です(事故1年後: 537例/24例≒22.4倍、事故7年後: 4,250例/184例≒23.1倍・・・数値出所は上掲グラフと同じ)。症状が揃ってます。

 なお、上のグラフで不思議な動きをする黄緑の線、「精神症状」について、『チェルノブイリの健康被害-原子炉大惨事から25年の記録』の本文は、まず「神経系への損傷」(グラフでは1992年以降、最多疾患となる)について次のように記し↓

 「また、セミパラチンスク(カザフスタン)の核兵器実験地域周辺からの重要な記録(10年間)がある。それによれば、その地域で生活している村民たちは神経障害や知覚障害、頭痛に苦しんでいた。このような情報があるにもかかわらず西側諸国では真剣に受け取らず、むしろ逆に、チェルノブイリ事故後に起こった多くの健康問題は放射線のせいでなく、ヒステリ-反応と決めつけ、“放射線恐怖症” という病気 をでっち上げた。/キエフのパラギュイン生化学研究所のナデイダ・グラヤはチェルノブイリ地域に住む(棲む)人と動物の神経細胞を研究し、神経系にみられる損傷の原因は放射線への恐怖のためではなく、放射線のため組織が実際に深刻な障害を受けたためであると報告している。」

 そして「精神疾患」として様々な研究例を示しています。例えば↓

 「P.フロ-ル・ヘンリ-の報告によれば、さまざまなうつ状態、あるいは統合失調症や慢性疲労症候群のような症状は汚染除去作業員に非常に多く見られ、脳の器質的変化(右ききでは主に左半球の)を伴っており、脳波検査によって客観的に診断できる。彼らの考えでは、これは、さまざまな神経的、精神的疾患が0.15~0.5シ-ベルトの放射線ひばくで引き起こされるということを示しているようだ。」

 事故1年後の山は、心理的な原因によるものかもしれませんが、それじゃ済まないことが黄緑の線のその後の上昇に明確に示されている図、ということになります。


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原子力規制委「格納容器破損で100テラベクレル放出」想定、福島じゃ17,000~20,000テラベクレル放出なのに・・・

2014-05-28
 原子力規制委員会の発足以前から当ブログでは注目していた島崎委員長代理、クビになりました。

島崎氏クビ
(朝日新聞西部本社版朝刊 5月28日)

 このごろ審査姿勢が甘くなってきていましたので、何かあったなと思っていましたが、昨日の報道ステーションでは、かなり厳しい圧力がかかっていたとのこと。結局、クビです。
 いよいよ、安倍政権、原発再稼働に本腰です。

 で、原子力規制委員会、どこまで壊れたかな、というところなんですが・・・・・・本日、規制委のHPに掲載された「緊急時の被ばく線量及び防護措置の効果の試算について(案)」です↓。

100TBq.png
原子力規制委員会HP掲載資料

 原子力規制委員会が考えている「炉心損傷・格納容器破損事故」の規模、セシウム137が100テラベクレル、他の元素はそれに対応した量が放出、だそうです。
 これは大笑いです。

 「1万7千~2万テラベクレル放出 福島原発事故でセシウム137」(47NEWS=共同通信 5月9日)

 福島第1原発事故で放出されたセシウム137が17,000~20,000テラベクレルと推定されています。原子力規制委員会の想定している事故はなんと、その1/170~1/200。
 福島原発事故が酷い事故だと言っても、破損原子炉内の放射性物質のせいぜい2.8%しか放出されていません。チェルノブイリでは、20~40%放出されました。つまり、福島原発事故より悪い状況なんて、簡単に発生し得ます。

 でも原子力規制委員会が想定しているのは、福島事故の1/170以下の規模です。
 あまりにばかばかしくて笑いが止まらず、腹の皮がよじれます。

 原子力規制委員会、完全に壊れています。というか、頭おかしいんじゃないか。そもそも福島原発事故の教訓の上に設置された委員会なのに、何で事故想定、その170分の1の規模になっちゃう!? 「安全神話」も何も、ただのバカだろ、学習能力ゼロ。


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計算してみたら怖すぎる!! ホットパーティクル

2014-05-27
 昨日のホットパーティクルのリンク先を読んでみると、福島事故で放出されたホットパーティクルの正体、いろいろ説明してあります。で、これで被曝するとどうなるか、計算してみました。(計算そのものは無理があるものですが、結果は気に懸けるのに十分なものだと思います)。

ホットパーティクル
nature.comからスクリーンショット)

 ↑ホットパーティクルの一粒(写真のよりも小ぶりな直径2μmのもの)の発している放射線量は1.4Bqだったと書いてあります。内訳はCs134が0.78Bq、Cs137が0.66Bqとのことです(1.4Bqというのは、四捨五入して切り捨てたものでした)。
 で、今回のケースでは、セシウムが人間の代謝経路に入るわけじゃなくて、体表面(鼻の粘膜とか肺胞の表面とか)に付着するわけですので、よくある内部被曝の換算係数なんては使えません。体表面・外部からの直接被爆です。
 外部からの直接被爆を計算するには↓こんな式になります。

実効線量外部被曝
(『放射線緊急事態時の評価および対応のための一般的手順』 より85頁)

 なんか複雑ですが、まずは直接体表面に付着ですから「遮蔽を無視するためには遮蔽厚dをゼロに設定する」ということで、(0.5)のなんたらかんたら乗の部分はあっさり「1」とさせていただけば、話はまあ、簡単で、被曝期間をT時間として、

 Cs134   実効被曝線量 = {(0.78×10^-3)×(1.6×10^-7)×T}/(1×10^-6)^2
 Cs137   実効被曝線量 = {(0.66×10^-3)×(6.2×10^-8)×T}/(1×10^-6)^2

 となります。え~、ここで、線源からの距離Xをどうしようかなと思ったのですが、ゼロじゃ計算できませんので、直径2μmの球の中心が仮想線源ということにして、距離Xは1μmにしてあります。なお、(1.6×10^-7)と(6.2×10^-8)は、上の式のリンク先の88頁にある表E1に書いてある換算係数です。
 これを計算すると、次の式が得られます

 総実効被曝線量(Cs134+Cs137) = 1288.9 × T (mSv)

 つまり、ホットパーティクルが付着した場所の細胞の被曝線量は、1時間あたり1.3Svほどということになります。なんと、これはもう全然、低線量被曝なんてもんじゃないじゃないですか。ホットパーティクルによる被曝を考える場合、「被曝致死量」なんて概念、無意味ではありますが(全身被ばくした時の値ですから)、でも、ま、「被曝致死量」とされるのは、とりあえず6~7シーベルトです。ですから、数時間もすればこの細胞、たぶん死にます。
 で、細胞が死んだってホットパーティクル、別に都合よく排出されるわけじゃないでしょうから、今度は次にくっついたお隣の細胞を被曝死させるでしょう・・・。で、どうなるんだ??

 昨日、当ブログ記事に「えまのん」さんからコメント頂きました

 「『鼻の粘膜のマイクロ・ホットスポット』説が正しいと仮定するならば、同様にポワソン分布にもとづいて『肺まで達して肺癌発生』やら『眼球付着で眼の毛細血管負傷からの出血』の率も増加するはずではないでしょうか?/鼻血以外、とくに眼球出血という鼻血以上に目立つ特殊な状況が増えたという話も聞きませんので、『鼻の粘膜に着いた何か』が原因としても、それはマイクロ・ホットスポットになるような放射性物質ではなく、PM2.5のような非放射性物質の微粒子であると考えるのが妥当では?」

 後半はまさに、いろいろと取りざたもされているし、昨日・本日と当ブログでも書いているホットパーティクル説のことだと思います。ポアソン分布の話、別にホットパーティクルの散布の話としても、別に同じことなので、微粒子かポアソン分布かという話が対立しているわけではないと思います。問題があるとすれば、鼻の粘膜への異物の粘着というメカニズムを考えると、他の部位と同列に分布を考えることができなくなりますので、そこに問題があることになります。もともと鼻は、肺に異物を入れないためのゴミ取り場ですから、眼球よりも多くホットパーティクルを集めそうです。呼吸量もバカになりません。(ただこの場合も、何人の人にどの程度の量が付着するのかという統計的分布と考えると、やっぱりポアソン分布は有効のはずです)。
 で、まさに考えなきゃいけないのは、コメントの前半です。「『肺まで達して肺癌発生』・・・の率も増加するはずではないでしょうか?/・・・鼻血以上に目立つ特殊な状況が増えたという話も聞きませんので」の所、これでいいんでしょうか?? ホットパーティクルがくっついた細胞そのものは死にそうですが、そこからちょっと離れた細胞、死なない程度に被曝してガン化しないでしょうか?? で、1個や数個のガン細胞が増殖して、ガンとして認識されるサイズになるまでには、どのくらいの時間がかかるのでしょうか??

 チェルノブイリでは、5年後からガンを含む、様々な病気が急増したという話はよく知られたところです。「鼻血以上に目立つ特殊な状況が増えたという話も聞きませんので」というのは、「まだ聞きません」というだけのことかもしれません。
 ホットパーティクル“地獄玉”を多量吸い込んでしまった人々が、恐らくは大量にいます。国は「美味しんぼ」の鼻血を否定することに血道を上げるなどというバカなことをするよりも、他にすべきことがあるはずです。福島事故の被爆者、特にホットパーティクル被爆者について、全力を挙げて医療調査・対策を行うことを考えるべきです。

 ちなみに、本記事で取り上げているnatureの論文にはホットパーティクルの放出状況地図も掲載されています。

ホットパーティクル地図s
nature.comからスクリーンショット)

 実は数行前、「福島の被爆者」と書かず「福島事故の被爆者」と書いています。この地図を見れば、そう書かざるをえない理由が明白と思います。ホットパーティクルの場合、環境で観測される放射線量値が低いというのは、単にホットパーティクルを拾う確率が低いということを意味するに過ぎません(“低線量被曝”になるわけではなく、あくまで“地雷を踏むか踏まないか”です)。上でやった計算が真実の1割でも捉えていれば、一旦吸入してしまったホットパーティクルは、高線量被曝線源として体内に存在し続けることになります。


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降り積もる放射性物質・・・福島第1原発

2014-05-26
 本日の東京電力のプレスリリースからです。

降下物201405
東京電力発表資料 5月26日

 福島第1原発で降り積もる塵「降下物」、環境管理棟では、Cs-134が53Bq/m2、Cs-137が150Bq/m2となっています。これがどれくらいの被曝かというと、

 実効線量=降下量×換算係数

 という、ありがちな換算式で計算されるようです。ここで、国際原子力機関(IAEA)が示した換算係数は、降下量1Bq/m2当たり、

 Cs-134  0.0000051mSv
 Cs-137  0.00013mSv

 です(青森県境保全課の資料から)。つまり、1ヶ月の降下量が上の資料の通りですから、フクイチ環境管理棟では1ヶ月あたり、

 Cs-134  53Bq/m2 × 0.0051μSv ≒ 0.27μSv
 Cs-137  150Bq/m2 × 0.13μSv ≒ 19.50μSv

 を被曝することになる・・・ということで、降り積もる埃から、合計19.77μSv/月の被曝ということになります。
 12を掛けて年間に換算すると、237μSvということになります。普通の人の年間許容放射線量、1mSv=1000μSvと比較しても低いので、電力な人たちには十分に許容される値でしょう。
 でも、事故直後はどんなだったのでしょうか?? 残念ながら、現在の形式で発表された資料は東電HPを検索する限り2012年4月のものになりますので、事故直後の様子というのはわからないのですが、とりあえす2012年4月の数値は↓

降下物201204
東京電力発表資料 2012年4月17日

 つまり、

 Cs-134  2000Bq/m2 × 0.0051μSv ≒ 10.2μSv
 Cs-137  2800Bq/m2 × 0.13μSv ≒ 364μSv

 合計374.2μSv/月ということになります。年間なら4490≒4.5mSvの被曝相当ということになります。これが事故から1年経った時点での状況です。

 ということで、福島で生活していた人たちの降下物からの被曝量はどんなものだったのでしょうか??
 写真家、森住卓氏のブログのスクリーンショットのごく一部です(「引用」の範囲にしたいので、ごく一部です)↓

親指
森住卓氏のブログから引用)

 森住氏が、酪農家の手袋を、放射線が映るように工夫して撮った写真の親指の部分です。光っているのが、放射線です。ポツポツになっているのはホットパーティクル(“地獄玉”とも呼ばれる)のように思えます。ブログには手袋の全体像はもちろん、何枚も写真が掲載されていますので、もしまだ見ていない方がいらっしゃったら必見です。
 
 圧倒される写真、写真、写真です。

 こんなもんが塵として風に舞い、降下する福島、鼻血くらい出るでしょう。


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福島原発事故は最悪事態じゃない

2014-05-25
 「福島事故はラッキーだった」と書くと、怒られそうですが、少なくとも菅(当時)首相が示された、いわゆる「最悪シナリオ」と比較すれば、被害は甚小(こんな言葉、ないか・・・)で済んだわけです。
 このことの意味、もっと重大に受け止められるべきではないでしょうか。なぜなら、我々が原発事故のことを考える際、反射的に福島事故を思い浮かべ、それを被害最大のケースと想定していることが多いように思うからです。
 本日の朝日新聞の浜岡原発特集から一部です↓

浜岡b3
(朝日新聞西部本社版朝刊 5月25日)

 このシミュレーションでも、福島事故の規模が想定されています。
 いや、こんなこと書くと、「福島事故の重ね合わせ図をせっせと作っているお前が言うな、先入観作っているのはお前もだろ」と言われそうで怖いのですが、話にリアリティを持たせようと思うと、どうしても現実にあったケースを話の出発点にするほかなくて・・・ゴニョゴニョゴニョなんですけど、とにかく、事態はもっと悪いものでもありえたわけです。

放出量b
wikipediaからのスクリーンショットに書き込み)

 チェルノブイリと比較すると福島は、セシウム137なら、放出割合、20~40%に対する2.1%、つまり、1/9.5~1/19です。原子炉が、チェルノブイリなみの壊れ方すれば、現在の汚染状況の9.5倍~19倍、放射性セシウムが放出されていたことになります。
 なお、このwikipediaの記事は、セシウム137の放出量が1万5千テラベクレル程度と推定されていた時のものですので、

 「1万7千~2万テラベクレル放出 福島原発事故でセシウム137」(47NEWS=共同通信 5月9日)

 最新の知見から言うと、もう少し(かなり)多く放出されているようです。しかし、2万テラベクレル放出でも、2.1%が2.8%だったというだけの話で、これでも、最悪事態にはほど遠いことになります。
 ここで、さらに言えば、チェルノブイリさえ、ある意味ではラッキーであったことになります。放出されたセシウム137は、20~40%で済んだのであって、これが80%とかだったら、もっと大きな事故でありえたわけです。いや、既に現在ではチェルノブイリよりひどいと評価される福島なんて、1~3号機ドッカンですから、そのチェルノブイリ(爆発したのは1基だけ)より、さらにおおごとです。で、実際、その危険があったからこそ、菅(当時)首相は、最悪シナリオを受け取ることになったわけです。
 “あの福島事故が最悪なのではない”、我々はこれを肝に銘じておく必要があるでしょう。

 大飯原発運転差し止め判決、“250kmまで原告適格”というのは、当然の話です。


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9割は逃げた、福島原発従業員&10割止まった、ALPS!!

2014-05-20
 今日はやっぱりまず、↓これですね。朝日新聞、大スクープです。

9割撤退
(朝日新聞西部本社版朝刊 5月20日)

 なんと、2011年3月15日早朝、2号機の水素爆発を見た福島第1原発の従業員の9割、スタコラサッサと福島第2原発へと逃げ出していました。吉田所長は「その辺で待機」と言っていたのですが、そんなこと、聞いてられません。逃げろや逃げろ、です。
 「なんて奴らだ」、とも思いますが、「まあ、そりゃそうだよな」とも思います。原発で食っているという立場はありますが、自分の生命が危機にさらされているのです。会社クビになるくらい、どうという問題でもないでしょう。まず、逃げるでしょう。
 ここで逃げなかった吉田所長以下69人、とりあえず「アッパレ」でしょうか。まあ、間が悪くて逃げそびれただけの人もいるでしょうが。
 ここで株が急上昇したのが菅元首相。東電本店に怒鳴りこんで「逃げるな!!」とやらかしたイラ菅の一喝、そうする必要があったわけです。彼の本日のブログでは、次のように書かれています↓

 「海江田経産大臣から『清水社長が撤退したいと言ってきている』と連絡があったのが3月15日午前3時ごろ。清水社長を呼んで撤退はありませんよと止めたのが4時過ぎ。東電本店に乗り込んだのが5時半ごろ。そこで会長、社長を含む東電幹部を前に撤退せずに頑張ってほしいと強く発言」(菅直人オフィシャルブログ 5月20日

 いやいや、「強く発言」というか、あまりの怒気に皆立ちすくんだ、と語り伝えられていますが(それで現場が萎縮したと批判されてもいますが)、それ、必要だったわけです。なんせ、逃げた者の中には、事故収束作業の中核となるはずだったGM(グループマネジャー、部課長級社員)も含まれていたわけですから。

 で、ここで重要なのは、次に原発事故が起きた場合、従業員が逃げ出さない保証があるのか、という点です。時の首相の怒気だけが最後の保証というのでは、あんまりです。
 “原発従業員は、生命の危険があっても、原発事故では、事故対応をしなければならない”、なんて法律あるのでしょうか(「原子力災害対策特別措置法」を見ても、それらしい条文って見当たらないような・・・)。それに、命かかっていたら、法律で何定めても、無意味としか思えません。
 船長は事故の際、乗客や乗員の救済に「手段を尽くさなければならない」と規定した船員法では、これに違反した時の罰則は5年以下の懲役だそうです。死ぬのと5年の刑務所暮らしとどっちを選ぶか、です。まあ、逃げる人は逃げるでしょう。どこぞの船長のように真っ先に逃げるかはどうかはともかくとして。それに、あからさまに「船長が船を捨てるのは最後だ」と定めていた旧船員法は、変わったそうです。合理的と考えられる範囲で努力していれば、それ以上責任を追求されないのは当然でしょう。原発所長の果たすべき合理的な義務の範囲って、どこまででしょう??
 まあそれ以前に、原発の場合、所長とか幹部だけじゃなくて、実際に作業を請け負っている下請け・孫請けの従業員にも原発に残ってもらわなければ事故収束作業はできないわけで、そこまで原発離脱禁止を義務付けるなんてこと、できっこありません。なにしろ、命と天秤にかけるのですから、罰則が死刑になってない限り、逃げた方が正解です。孫請け作業員に死刑を科す法律なんて作った日には、法律体系のバランスが無茶苦茶になってしまいます。

 やめです、やめです、原発。「過酷事故対策」とか言ったって、原発従業員が逃げちゃ、何の役にも立ちません。原発の過酷事故対策は成立しません。原発の再稼働なんて、あり得ません。


 で、とりあえず緊急には生命が危険にさらされているわけではない現在の福島第一、逃げ出せない事故収束作業ですが、

 「福島第1、汚染水処理停止=ALPSで白濁トラブル-東電」(時事通信HP 5月20日)

 あ~らら、遂にALPS、動いていた最後の1系統が止まり、全滅です。汚染水処理、完全ダウンです。ま、どうせALPSでトリチウムは取り除けませんから、汚染水問題、何をすべきか、根本から考え直すべき時です。凍土遮水壁なんてものではなくて、ちゃんとコンクリートで遮水壁作って、福島第1原発を環境から隔離することを考えるべきです。


 あ、そうそう、朝日新聞は上の吉田調書の全公開を要求しています。当然のことと思いますが、しかし、

 「故吉田所長の証言資料、開示せず=菅官房長官」(時事通信HP 5月20日)

 政府は開示しないそうです。まだまだ、知られたらマズイことがいっぱいあるようです。


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なぜみんな気づかない?? 国の対応の異常さ・・・「美味しんぼ」鼻血問題

2014-05-19
 まず考えてみましょう、今回の「美味しんぼ」鼻血問題の、最も平和な解決の仕方。国の担当者(大臣でも、役人でも良いです)が、次のように発言できていれば、それで終わりでした。

 「ああ、鼻血については次のような○○省の調査結果がありまして、福島で特に鼻血の発生率が上がっているという事実はございません。マンガ家の方というのは実に想像力豊かな方ですね、ハッハッハッ。」

 これで一件落着すればよかったのです。

 問題は、環境省なのか文部科学省なのか、はたまた厚生労働省なのか、どこの役所も、今回出せるデータを持っていなかった、ということです。で、そういう状況下で、政治家がやたら肩に力入れて「風評被害だ!!」と叫ぶものだから、ますます人々の不安感が増幅されてしまったわけです、「国は何か隠しているんじゃないか」と。
 もちろん、鼻血というのが、今回初めて原発事故に関連して語られる新たな症状であるなら、データがなくてもしょうがありません。しかし鼻血は、チェルノブイリ事故でよく語られる、被曝が疑われている症状の一つです。これについてデータがないというのは、許されないでしょう。これは国の事故調査・被害監視体制の欠陥でもあれば、医療関係者の怠慢でもあります。

 「正確な知識と情報を=菅官房長官」(時事通信HP 5月19日)

 なんでも菅官房長官は「漫画『美味しんぼ』での東京電力福島第1原発事故の健康影響に関する描写について『正確な知識と情報を伝えることが極めて大事。根拠のない風評には政府として全力を挙げて対応したい』と述べた」そうです。
 まさに、「正確な知識と情報」がないのが問題です。“重度被曝による全身症状の一環としての鼻血”と“とりあえず鼻血だけ”の区別もつかない医師のたわごとがまかり通り、実際の福島における鼻血に関する統計データは存在しない状況下では、鼻血不安は終息のしようもありません。
 政府に伝えることができる「正確な知識と情報」があるならば、ちゃんと伝えてもらいたいものです。というか、そうするのが、政府の責任なんですけどね。
 しかし、そこは何もせず、「根拠のない風評」とか決めつける、国の対応は異常です。メディアは何で、この点(政府が“正確な”情報を出せない点)を批判しないのでしょうか?? 「風評被害」なんて空疎で強圧的な言葉繰り返されると、 鼻血について、国は実は何か知られちゃマズイことを知っているのじゃないかと、ますます怪しく思えてきます。ちゃんと「全力を挙げて」データ収集と公開を行え~!!

 「福島、子どもの甲状腺がん50人『県民健康調査』、疑い39人」(47NEWS=共同通信 5月19日)

 福島では、甲状腺癌と確定した子供が、また17人増えて、50人となったそうです。

朝日×ヨウ素_部分
(図の説明については→こちら

 チェルノブイリと比較しても、十分に放射能汚染されている福島で、チェルノブイリで出てる鼻血が出なかったら、それはかえっておかしいわけですから、ちゃんと調べてほしいわけです。そして、鼻血は鼻血で終わりなのか、それとも、それに引き続く被曝症状へと展開するのか、しっかりと調べる必要があるはずです。


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福島の鼻血については、もうちょっと科学的な議論をした方が良いと思うのだが・・・

2014-05-15
 まだやってますね~、政府閣僚、『美味しんぼ』の鼻血描写批判。

 「麻生財務相『裏取れずに描いた』=美味しんぼ鼻血描写」(時事通信HP 5月15日)

 よほど原発推進派の弱みのツボにはまってしまったのでしょうか。
 よくある批判に「原因不明の鼻血などの症状を訴える町民が大勢いるという事実はない」というのがあります。いや、結構なんですけどね、これ、本気で主張するなら、ちゃんとデータを取った上で言ってほしいわけです。その辺の医者に聞いてみた、なんて話じゃなくてね。ちゃんと疫学調査をしてほしいわけです。
 その辺の医者に聞いてみたというレベルなら、作者の雁屋哲氏が実際に鼻血を出した、そして取材先で鼻血の話をよく聞いた、というレベルと違わないわけで、雁屋氏の取材先にも、医者もいれば井戸川町長もいるわけです。
 必要なのは、きちんとした科学的な調査です。福島と、他地域についての、比較可能な正確なデータこそが重要です。ごちゃごちゃ言ってないで、国は正確なデータを取るべきです。

 で、どう見ても一番あてにならないのが、放射線医学の専門家とかいう医者たちのコメントです。

 「『科学的にありえない』美味しんぼ鼻血描写で遠藤啓吾・京都医療科学大学長」(msn産経ニュース 5月12日)

 この遠藤とかいう人は、「1千ミリシーベルト以上の被曝をした場合であり、それ以下の被曝では影響がない。・・・略・・・住民の被曝線量は大半が10ミリシーベルト以下。原発作業員の中に、白血球や血小板の数値に異常がある人がいるとは聞いていない。もし低線量被曝の影響で鼻血が出るのだとしたら、一般の人々より被曝線量の高い放射線技師や宇宙飛行士は鼻血が止まらないことになる」とか言っています。
 まずおかしいのは、そりゃあ1千ミリシーベルトも浴びたら、血小板が減ったり、いろいろな全身症状の一環として鼻血も出るでしょう。これは深刻です。でも、今、いろいろ言われているのは、そんな話じゃないということです。結局、医者に行かなくなてもなんとかなるくらいのものです。ただの鼻血なら(多少出血量が多いくらいは「ただの鼻血」の仲間です)、鼻粘膜がちょっと傷つけばすぐに出ます。鼻粘膜の局所被曝なら、たいした放射線量(総量)はいりません。
 で、もう一点、この人がおかしいいのは、完全に数字の使い方を間違えている点です。上の引用の言葉を見る限り、この人は、平均的な被曝で、すべてを語れると思っているようです。この人は、次のようなニュースに何というのでしょうか??

 「福島市中心部で170万ベクレル超のコケ 緊急除染へ」(朝日新聞HP 2013年7月3日)

 この人はこの記事に対して、“福島市でそんなに高い汚染レベルが検出されるはずがありません”、とでも言うのでしょうか。今回のように大量の汚染物質が撒き散らされた場合、一般的な汚染レベルとは別に、ホットスポットができるのは当たり前のことです。
 上の記事もそうですが、水が流れて集中したところのコケで高濃度汚染ケースが良く発見されています。流れが集まるところはホットスポットになりやすい、と考えてみれば、人間の呼吸量は一日14,400L、20kgにもなります。それがほぼ全部鼻を通って行くのですから、鼻の粘膜に「マイクロ・ホットスポット」ができたって不思議はないと思えますが・・・。それも、偶然に高濃度汚染状況に行き当たっていたとか、の場合に。
 遠藤とかいう人は、放射線技師や宇宙飛行士を取りあげて反例としていますが、これは全く見当外れです。これらの人では平均的な被曝量から逸脱するケースがほとんど考えられないからです。宇宙という放射線的に比較的均質な状況、医療機器による被曝という管理された被曝状況では、ホットスポットの発生のしようがありませんし、被曝と言っても外部被曝だけです。実際に放射性物質がそこらじゅうに濃淡をもってバラ撒かれ、行き当たりばったりで吸入してしまう福島事故とは比べようもありません。

 で、吸着・濃縮系のホットスポットとは別の話になりますが、やはり、平均値で語るのは今回のようなケースでは不適だということを、もう少し一般的に書いておきましょう。

ポアソン分布

 統計学やったことのある人なら誰でも知ってるポアソン分布です。比較的起きることがレアな場合に使う分布ですが、まあ、具体的に、何個の放射性元素が崩壊したかというのに使うと良い分布です。
 当然、平均発生回数(平均的な原子崩壊回数)が多くなれば、より多く崩壊が発生する確率が高くなっていきますが、ここで注目すべきは、平均発生回数が多くなると、単に平均値(グラフの山)が右へ移動していくというだけではない、ということです。山の裾野がなだらかになっています。
 これがどういうことを意味するかというと、

ポアソン分布2

 平均発生回数2のオレンジの線を右へ2、ずらして平均値が4になったとしても、それだけなら、9回も発生する可能性はほとんど無いと思えます。ところが実際は、山の裾野がなだらかになるため、ホントの平均値4のケース、黄色の線で見てみれば、この事態、ちょっとですが、発生する可能性が見て取れます(青い線だと、オレンジ線をさらに1、右に動かしたものと比較することになります。想像してみれば・・・劇的に可能性が高まりますね~)。
 つまり、汚染数値(平均値)が上がるということは、逸脱的な事態が発生する可能性をも高めるのです。
 環境の汚染数値が大きくバラついている状態(あっちこっちにホットスポットがある状況)での、鼻の中の粘膜の上という、微小環境におけるホットスポットの発生可能性と考えた場合、統計的なゆらぎは極めて大きくなると考えられます。鼻血を出すほど部分的に被曝した人が多数発生している、という事態は、統計的に考えてみれば、何も不思議はないように思えます。
 少なくとも、鼻血を出す人が多数いるという報告があるのに、頭ごなしに「そんなはずはない」というのは、とても科学的な態度とは言えないでしょう。まずはしっかりと調査を行い、分析する必要があるはずです。

 とはいえ、『美味しんぼ』はマンガです。作者が自分の経験に基いて(あるいは基づかなくたって)、何書いたって、政府が目くじら立てるほどのものでしょうか?? やはり原発推進派の、何かよほどの弱点のツボ・・・ホットスポットに、はまってしまったようです。


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