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「ストレステストは原発再稼働の条件ではない」

2011-09-06
「ストレステストは原発再稼働の条件ではない」とは、原発再稼働推進派の方々からよく出される言葉ですが、これは正しい主張でしょう。コンピューターの上で様々な事態をシミュレートしてみることは、やって悪いことではありませんが、それで原発の安全性が確保されるわけでもありません。確かに、やるべきことはもっと別のことでしょう。福島原発事故のきちんとした分析と、そこから得た教訓に基づく、適切な安全対策、書いてみればあまりにも当たり前なことになってしまいますが、再稼働の条件とは、これしかないはずです。菅前首相があのタイミングでストレステストのことを言い出し、実質的に再稼働を阻止したのは、なかなかナイスな政治判断だったと思いますが、それならばストレステストが終われば再稼働OKとなったのでは困ります。菅前首相の発言も、“福島の後に、これまで通りの安全基準でよいのか、たとえばストレステストをやってみるのも一法・・・・”といったものだったと記憶しています。重要な点は、福島事故から学習する必要があるということのはずです。

 それでは何が再稼働の条件なのか、大きく分ければ、原子力発電所そのものに関する条件と、原子力発電所の外の条件、の二つがあると思います。

 まず、原子力発電所そのものに関する条件として、経産省が出した緊急安全対策の実施、これは最低限必要な条件でしょう。この緊急安全対策への対応状況は各社公開しています。たとえば、大飯原発ならhttp://www.kepco.co.jp/pressre/2011/__icsFiles/afieldfile/2011/04/14/0414_1j_03.pdfです。この報告書には「中長期的な対策の概要」といった部分があり、そこを見れば、「既存堤防のかさ上げ」の完成予定が「平成25年12月」となっています。つまり、緊急安全対策が完成するのが「平成25年12月」ということなります。そこまで含めて緊急安全対策の完全実施、これが最低中の最低の条件だと思います。ところで、自分が出した緊急安全対策の完成が実は「平成25年12月」となっているのに、さっさと原発を再稼働してしまおうとする経産省って、何なんでしょう。
 さてしかし、緊急安全対策は、あくまで「緊急」ですし、再稼働ありきの経産省が出した一つの対策に過ぎません。本来は福島原発事故のきちんとした分析が出てから、「本格安全対策」が考えられるべきでしょう。その中で、経産省の緊急安全対策がそれなりに評価に値するものと考えられるならば「暫定安全対策」とすることがあり得るかもしれませんが。まずは「東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会」の報告を待つべきでしょう。この報告を受けてきちんと議論し、必要とされた対策は実施する、それがやはり再稼働の必要条件でしょう。なお、もちろん、この「事故調査・検証委員会」の委員長が原子力企業“日立”出身者だということも、議論の際にはしっかり評価する必要があります。
 このほか、リスク評価の考え方についてとか、いろいろ考えることはあるのですが、それはまたの機会に。

 次に、原子力発電所の外の条件です。
 まず、広域避難計画、ヨード剤・ホールボディカウンターを含め必要な機材の備蓄等、被害の考えられる範囲にきちっと原発事故対応策の手当てをする必要があります。本ブログで何枚も想定放射能汚染地図(^_^;;を作成してきたのは、これまでの被害想定範囲では狭すぎる、ということを目に見える形で明らかにしたかったからです。そして、原発再稼働の同意を求める対象は、原発立地市町村、行政単位ではなく、想定被害圏全域にするよう制度改革を行うべきでしょう。玄海原発に事故が発生すれば唐津市も被害を受けるのは当たり前ですし、事故が福島級であれば、風向きによっては福岡市や佐世保市も大きな被害を受けることが考えられます。モニタリングポストについては文部科学省が糸島市や福岡市にも設置するという方針を発表しましたが、福島を教訓とするならば、被害についてあらゆる面で近隣市町村も「地元」です。もし近隣市町村が置き去りにされて再稼働が強行されるようならば、法の下の平等を掲げて裁判闘争を行うべき(国の政策によって同等のリスクを負担させられているにも関わらず、保護措置その他において差別されている)事態だと思います。
 そして原子力安全・保安院改革です。経産省・電力会社とぐるになって“やらせメール”をやるような組織では、原子力監視行政は勤まりません。来年4月には環境省傘下へ移行しますが、この組織改革を手始めに、全管理職の入れ替えくらいの改革はやってもらわなければなりません。経産省出身者は全員、経産省にお帰りになっていただく、というのが妥当なところではないでしょうか。それでは専門的な知識を持った者がいなくなるという声が聞こえてきそうですが、いずれ組織内できちっと専門家を養成できないならば、今と変わりません。自前の専門家の養成方法から構築する必要があります。専門家といっても行政職の専門家ですから、養成にそれほどの時間を要するとは考えられません。「緊急安全対策の完成後(つまり2年半後から)、再稼働審査等、本格的な仕事が発生する」と考えれば、日程的に不可能な話ではありません。

 以上は、今、私が考える、原発再稼働のための最低の条件です。
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