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北海道の受難・・・アホな電力会社だとこうなるよな

2014-08-23
 17.03%もの、電気料金再値上げを申請した北海道電力、遂にと言うか、やっとと言うか、LNG発電所を作る気になったそうです。

 「北海道で初のLNG火力発電所、2018年度の営業運転に向けて工事開始」(スマートジャパンHP 8月22日)

 支離滅裂な北海道電力、これでなんとかなるのか??
 どう支離滅裂かと言うと・・・企業会計報告見ると、燃料費は減っているのに、「燃料費が高く付いたので電気料金再値上げ」と言い、出してきた数字が17%というバカ高い値上げ・・・実際は原発関連支出が経営圧迫したせいで、実際最初から原発持ってなかった沖縄電力なんて原発依存電力会社が原発依存していた当時で実質9%高ですから、この数字の無茶苦茶さがよくわかります。つまり、既に北電は2013年9月、規制部門(家庭用)7.73%、自由化部門(業務用)11.00%の値上げを行っていますので、この時点で沖縄電力なみで、再値上げはいろいろな意味で、すべて原発のための値上げです。
 「いろいろな意味」のうち、非常に具体的なのは、上でリンクした先で書きましたが、実際に「原子力損害賠償支援機構一般負担金」が経営を圧迫しています。
 一方、あまり具体的でない方は、原発に経営資源を投入しすぎたため、それ以外の発電施設への投資が不足し、ひどく非効率な発電設備しかなくなっていることです。北電の火力発電での発電熱効率、39.06%で、9電力中最下位です。
 で、今、各電力増強中のLNG発電所、なんと、北電はゼロ。全然持っていない。

東電新火力
(朝日新聞西部本社版朝刊 8月22日)

 福島の衝撃で動きの鈍かった東京電力でさえ、LNG新発電所を建設中で、ボイラーの搬入を終えています。
 この施設、なんと熱効率61%、39%なんていう熱効率でやっている北電、どうするんだ!! しかも原油は同じ熱量発生させるのに、LNGの倍といった価格です。ま、燃料費の安い石炭火力も混じってたりするんで単純には言えませんが、LNG発電所がない、ってのは北電、実にたいしたもの。
 と、いう、ことで、やっと今回の報道、「これからLNG発電所を作る」そうです。いや~、地域独占下で電力会社がアホだと、住民がひどい迷惑を受けます。


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これは完全にアウトだろ!! 関電、川内、福島第一

2014-08-12
 続けざまに出てくる出てくる、とんでもない話!!

 まずは関西電力です。
 朝日新聞の連載記事「原発利権を追う」、本日は「送電線で悪影響、コイに1億円」でした。

コイに一億円
(朝日新聞西部本社版朝刊 8月12日)

 関西電力、“送電線のせいで鯉の育ちが悪くなった”とイチャモンをつけられ、払った金が1億円。「相手はいわゆる裏社会の人間」。これ、今なら完全に暴対法違反でしょう。アウト!!です。


 次は川内原発。
 東洋経済のインタビューに、藤井敏嗣・気象庁火山噴火予知連絡会会長が答えています。↓

 「規制委の火山リスク認識には誤りがある」(東洋経済HP 8月10日)

 これ、前々から伝えられていましたが、実に明確に、川内原発の火山リスクが、全く予見できないことを明らかにしています。

 「噴火を予知できるのは、せいぜい数時間から数日というのが現状だ。2011年の霧島新燃岳の噴火のように、地震などの前兆がなかったため、予知すらできないうちに噴火が起きることもしばしばある。」(東洋経済HP 8月10日)
 「数十年とされる原発の運用期間に、火砕流をもたらすカルデラ噴火はあるともないとも言えない。その判断基準もない。」(東洋経済HP 8月10日)

 これ、何も脱原発派が言っていることではありません。国の機関の中で、火山予知をやっている責任者が言っていることです。モニタリングして、たまたま運良く火山噴火が予知できたとしてもせいぜい数日前。原子力規制委員会の方針では、火山噴火が予知できた場合、原発を停止し核燃料を運び出すことになりますが、そんな時間的余裕全くなし。アウト!!です。

川内原発噴火5
(図は九電・規制委提出資料から←「火砕流がよけて行く川内原発!! 九電シミュレーションの怪しさ」で引用したもの)


 で、極めつけが福島第一原発。

 「“切り札”投入したら『詰まった』東電・福島第一」(テレ朝HP 8月12日)

 凍土壁形成の前段階としてやっている、トレンチ内高濃度汚染水除去のための「トレンチ流入口を塞ぐ“氷の壁”」形成作業、「222tの氷を投入」したけどダメなので、「凍結の“切り札”として7日にドライアイス1tを投入しようとしたところ配管が詰まってしまい、それ以降はドライアイスの投入を見合わせている」とか。アウト!!。
 しかし、ドライアイスが詰まる、って、そのドライアイスは溶けないのか?? まあ、配管の入口で凍って詰まり、その先へ行かない、とかか??

氷投入
(東電資料←「凍らない『氷の壁』に、ダメダメ東京電力」で引用したもの)

 う~ん、この件については更田・原子力規制委員、↓こんな発言をしていました。

 「ここ数日の間に、ちょっといい知らせが聞けるかもしれないという状況にありますけれども、タービン建屋との間の凍結による止水がうまくいくかどうかというのが、ちょうど今勝負どころにあります。これが上手く行って初めて、海水配管トレンチから汚染水を抜くことができて、固めることが出来る。そうするとタービン建屋、原子炉建屋といったところに手が付けられるようになってくる・・・」(8月6日 第19回原子力規制委員会)

 勝負、負けました。タービン建屋、原子炉建屋、遠い彼方に消えました。って、どうするんだ、この先!! アウト・アウト・アウトォ~!!
 いや、もともと、これ凍らないって、ずっと言われてきたのに強行してこのザマですから、重大な責任問題です。

 福島第一についてはこれとは別に、

 「停止中の仏製の汚染水処理装置を廃止へ」(NHKホームページ 8月12日)

 結局使い物にならなかったアレバ社製の汚染水処理装置、廃棄です。で、「この装置の導入や維持にかかった費用については『経営にかかわることで公表できない』としています」って、今や税金で運営されている東京電力が言えたセリフか!! いったいいくら、税金もしくは電気料金、ドブに捨てたんだ!! アウト!!


 なんかもう、電力・原発、ここまで異常・反社会的なことやってて、なんでまかり通る!!


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衰退続く原子力、2059年には消滅の可能性も・・・これが現実のデータ

2014-08-07
 世界で何が起っていようと、正しいことをしているならば世界に合わせる必要もありませんが、しかし、何が起きているか、知っておくことは悪いことではないでしょう。原発推進派の人たちは、中国での原発建設計画などを引き合いに出して、「原子力は世界で見れば終わっていない」とか言いますが、本当でしょうか??
 以下は先月出された、Mycle Schneider、Antony Froggatt 編著 “The World Nuclear Industry Status Report 2014”(『世界原子力産業現状レポート2014』とでも訳せば良いのかな??)からです。なお、使われているデータはIAEAなどから得られる、ごく普通のものです。またこのレポートには、鈴木達治郎・前内閣府原子力委員会委員長代理の序文が付いています。

 まず、世界の原子力発電の状況、こんなです↓

世界の原発p13
(13ページ)

 もちろん、2011年3月の福島原発事故と、それを受けて5月に浜岡原発が停止した後、順次進んだ日本の原発停止も大きい要素なのですが、それがなくても発電量は頭打ち、世界の発電総量に占める原発の発電割合は低下中だったわけです。
 具体的にいくつの原発が稼動状態にあって、発電容量がどうなっているのかを見ると↓

世界の原発(発電容量)p17
(17ページ)

 2011年からの落ち込み、やはり大きいです。ま、原発推進派の方ですと、「それでも2012年には底を打って、わずかだが上向き」とか、このグラフを読むのかもしれませんが。
 で、それじゃ、今後原発は増えていくのか、新規原発建設と既設原発廃止の状況がこれです↓

世界原発開設・廃止p16
(16ページ)

 グラフ上側、緑の棒グラフが新規建設、グラフ下側、オレンジの棒グラフが廃止です。なんかだんだん下側にシフトしている感じです。
 これEUに限定すると、もっと状況が顕著になります。

ヨーロッパ原発p119
(119ページ)

 なんかほとんど終息モードですね。
 ま、現在の建設中の原発数で見ると↓となってますからね~

建設中原発p19
(19ページ)

 突出して多いのが中国の28基、そこからはガクッと落ちてロシアの9基、インドの6基、韓国とアメリカの5基、といったところです。
 上の表、1972年に建設開始したものが含まれているアメリカって、何やってんだか理解し難いものがありますが、ほかに典型的な先進国として今、原発作っているのは、フランスとフィンランドがそれぞれ1基、です。原発って、BRICsレベルの国に人気のある発電ということになるでしょうか。
 とはいえ、その中国でも↓

風力・太陽光・原発・中国p78
(78ページ)

 これまでのところ、赤の原発のラインって、青の風力はもちろん、緑の太陽光にも発電容量で抜かれています。これからどうなるんでしょう?? 実は、建設中の28基って、建設僅少の他国との比較では多く見えても、例えば、日本の止まった原発の半数程度に過ぎません。54基で日本の電力の30%程度だったのですから、人口10倍、経済規模2倍の中国では、焼け石に水とは言いませんが、他の発電方式の方がもっと頑張らないと電力不足になってしまいます。ということで、原発は、中国でも(他国との比較で多数に見える建設状況でも)地位低下中と考えられます。

 で、こんな状況で、今後、世界の原子力発電はどうなるのか?? と、行きたいところですが、その前に、もう一つ考えておかなければならないことがあります。建設されてから廃炉になるまで、原子炉の寿命です↓

廃炉年数p22
(22ページ)

 1960年台、70年台は数年で廃炉にされるケースが多かったわけですが、その後、原発の寿命は伸び、この頃は30数年で廃炉になることが多いようです。
 で、実際にこれからどう廃炉されていくかを考えるには、制度との絡みもあって、『レポート』はゴチャゴチャ考察しているわけですが、40年を超えると、運転延長が認められるにしても、安全対策や保守に多額の投資が必要となり、経済的に引き合わなくなっていく、ということで、いちおう原発の寿命40年を基本として、こんな未来図を提示しています↓

2059年原発消滅p24
(24ページ)

 “今のまま、何もしなければ”、2059年には、世界から原発消滅です。
 まあ、国際原子力ムラの皆さん、もちろん策動するでしょうから、こうはならないでしょう。でも、「世界で原子力発電が現状を維持するためには、現在建設中の原発に加えて、2020年までにあと30基、その後の10年間に、さらに188基の建設が必要」(23ページ)とのことです。まあ、衰退フラグ確定してます。


 このレポートを短くまとめたHPとして、こちらもご参照ください→「The rise and fall of nuclear power, in 6 charts


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「2016~20年、もんじゅ廃止」の衝撃

2014-08-03
 もんじゅ・・・これまで何度も実証試験に失敗し、成功の見通しは立たず、しかも今や建設開始後30年近くも経ち、これで実験したところで何の役に立つのかもわからない上、さらに昨今ではズサンな管理体制だったため原子力規制委員会によって実験運転さえ禁じられてしまった、どうしょうもない実験施設です。
 しかしこの施設、核燃料サイクルのキモですので、原子力ムラはこの施設にこだわり、けっして廃止を受け入れませんでした。おかげで、たとえ実験ができなくても、冷却材の金属ナトリウムが冷え固まってはどうにもならなくなりますので、予熱用の燃料費等カットできるわけでもなく、一日あたり5500万円という維持費の支出は止まることがありません。
 まあ、ちゃんと管理せずに、もしこのナトリウムが外部と接触したりしたら、福島第一事故以上に厄介な事故となること間違いなしですから、保守作業はやってもらわないと困ることは困るのですが・・・。

 さてしかし、この「もんじゅ」、2016~20年には廃止されます、d(`・д´・ )キッパリ。なぜなら、

 「全面自由化16年4月実施へ 電力小売り、経産省検討」(47NEWS=共同通信 7月29日)
 「発電参入、1万キロワット以上に 届け出制でハードル低く」(日経新聞HP 7月30日)

 2016年4月には、家庭用電力の小売が自由化されます。そして、

 「経産省、原発と電力自由化の両立探る 関連制度見直し進む」(日経新聞HP 6月13日)

 この記事によれば、「経産省は20年までに、電力会社が積み上げた費用をもとに、電気料金を決める『総括原価方式』も撤廃する方針」とのことです。自由化のお題目(目的)は「市場競争による電気料金の引き下げ」ですから、電気料金を国が決めていては話になりません。
 ここでなくなってしまう総括原価方式における、電気料金算定根拠「電力会社が積み上げた費用」を、どう計算するかを定めた「一般電気事業供給約款料金算定規則(平成十一年十二月三日通商産業省令第百五号)」での、“加工中核燃料”の記載

レートベース分類

 これこそが、もんじゅの存在意義ですから、もんじゅの寿命も総括原価方式の廃止までです。
 電力会社が原発で使用した核燃料の燃えカス「使用済み核燃料」、これを、加工すればまだ使える資源として、資産評価し、発電のために所有している資産として「電力会社が積み上げた費用」に算入すると決めているのが、この“規則”です。
 燃えカス、ゴミを溜め込むことで、電力会社の(算定される)資産は膨れ上がり、電気料金は高騰し、電力会社は濡れ手で粟の儲けを手にしてきました。
 もちろん燃えカスが、なぜ「まだ使える」と査定され「加工中核燃料」となるのかといえば、核燃料サイクル、高速増殖炉がゴミを燃料へと転換してくれる、・・・というお話になっているからです。高速増殖炉「もんじゅ」こそが、この燃えカスを資産として評価する“電気料金算定マジック”を支えているのです。

 ですから、総括原価方式がなくなれば、もんじゅは存在意義を失います。なんせ、高速増殖技術の開発自体には、この古臭い炉、もはや何の役にも立たないのですから。
 と、いうことで、「もんじゅ」は2016~20年には廃止されます、d(`・д´・ )キッパリ。

 さてしかし、そう簡単に行くのか・・・

 ここでちょっと電力会社の有価証券報告書を見てみます。原発依存度の高い、関西電力・九州電力・北海道電力と、依存度の特に低い中部電力、そして、まあ、どうでもよい東北電力です。

関西電力 九州電力 北海道電力 中部電力 東北電力
総資産(百万円) 7,777,519 4,549,852 1,782,776 5,782,180 4,243,037
自己資本比率 15.3% 10.5% 7.6% 24.2% 12.6%
加工中等核燃料(百万円) 447,484 197,395 129,574 205,057 118,817
自己資本に対する加工中等核燃料の比率 37.6% 41.3% 95.9% 14.7% 22.2%
(各社・有価証券報告書2013年度から)

 もんじゅが廃止され、核燃料サイクルが終わりとなると、資産として計上されている燃えカス「加工中等核燃料」、資産からなくなります。財産が消失します。まあ、もともと存在しないものが上の“規則”のせいで記載されていただけで、粉飾決算ができなくなる、ってだけの話なんですけど。
 で、上の表は(会社によって微妙に有価証券報告書の書き方が違ってわかりにくいところがあるので、どこの会社でもはっきりと書いてある)総資産に自己資本比率を掛けて自己資本とし、それを「加工中等核燃料」と比べた結果、つまり、加工中等核燃料/(総資産×自己資本比率)です。
 粉飾決算でも資産は資産、消失すれば自己資本の37.6~95.9%にも及ぶ額を、特別損失とかで処理しなければならなくなるわけで、やっぱ無理かなぁ~、倒産しそうだし。
 もんじゅ廃止は、やっぱ「衝撃」だな~。

 で、上掲記事 「経産省、原発と電力自由化の両立探る 関連制度見直し進む」(日経新聞HP 6月13日)と、なるわけだ~。ここで、どういうインチキをするのか経産省??
 核燃料サイクル・もんじゅを維持して、場当たり的に電力会社救済を行うというのも、一つの方法だろうが、しかし、このタイミングで、もんじゅを廃止しないと、いつまでも赤字のタネを引き摺ることになるわけで、経産省自体も困るはずなのだが(それは当然、国民の赤字でもある・・・ま、原子力ムラの黒字になればそれでいいというところだろうが、電力自由化がある程度機能すると原発依存電力会社、原子力部門に金払うがために発生する赤字(燃えカス加工MOX燃料やら何やらはとにかく金がかかる)のせいでホントに倒産する可能性があり、そうなってしまっては経産省、元も子もない)。

 ま、北海道電力プレスリリース「電気料金の値上げ申請について」(7月31日)によると、「自己資本比率は過去最低の5.4%となりました」とのこと。こりゃ確かに電気料金値上げが必要でしょう。で、上の表にこの数字を代入すると、「自己資本に対する加工中等核燃料の比率」、134.6%です。これで、2016年の電力自由化が乗りきれるのか、いやはや、何がどうなっても、やっぱ終わってます、北海道電力。


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関電・九電「突然死」へ、北電・原電「既に死んでいる」!!

2014-08-02
 日経BP連載コラム「大前研一の『産業突然死』時代の人生論」の7月30日記事では、再稼働審査中の原発で追加安全対策投資が巨額に上り、10年程度では採算が取れないことが示唆されていました。20年でも「微妙」とか。
 この記事については一昨日、当ブログで取り上げましたが、実に興味深いので、各原発の運転開始年順に一覧表を作ってみました。

原発経過年

 原発の寿命40年ということで、上の3つは既にアウト、次の高浜1号機~福島第二1号機の12基も残り10年未満ということで、安全対策投資回収は「微妙」ということになります。
 で、東北電力女川1号機~九州電力川内2号機の8基も、安全対策に10年分の収益が投入されているとすると、これらの原発から上がる収益はほんの1~2年分ということになります。

 「高浜原発、津波想定で計算ミス 再稼働審査遅れる見通し」(朝日新聞HP 7月31日)

 あらら、その1~2年分も計算間違いで消耗中ですね。

 というところですが、しかし、大前の計算は、たぶん「甘すぎる」でしょう。
 その理由は、再掲ですが、NHK 7月25日報道です↓

核燃料ゴミ化
NHKホームページ魚拓)

 「使用済み核燃料を直接処分し、核燃料サイクルにはこだわらない」、という試算が、核燃料サイクル開発機構(と日本原子力研究所および動力炉・核燃料開発事業団)を前身として作られた日本原子力研究開発機構で行われているという“異常”事態です。なぜこんなことが起り得るのか、そこが問題です。
 2016年には家庭用電気が自由化、当然、家庭用電気料金も自由化され、総括原価方式もなくなります。核燃料サイクルは、総括原価方式の下で、核のゴミを“サイクルの次の段階の燃料となる資源”=資産として計算し、電気料金を高値誘導するための仕掛けでしたから、総括原価方式がなくなれば、それ自身価値を生み出さない以上、もはや無用の長物です。批判が強まったせいでも、使用済み核燃料処理工場がなかなか実用化できないからでもありません。核燃料サイクル抜きの使用済み核燃料処分方法を検討しなければならないところへ、現実が来てしまっているのです。
 そして総括原価方式のへんてこりんな計算式は意味を失い、この時、「核のゴミ」は本来の「核のゴミ」として、原発の採算性を圧迫し始めます。電気料金高値誘導のための小細工は、まんま、実際の電気料金コスト・アップ要因として効いてきます。使用済み核燃料は、総括原価方式の計算式の中で金を産む卵ではなく、実際の処分費用を要求する厄介なお荷物となります。新電力との価格競争において、大きく足を引っ張るでしょう。
 この採算性の悪化した原子力発電で、追加安全対策の投資分も回収していかなければならないのが、原発依存電力会社の宿命です。現状の原子力採算計算より、電力会社にとっての事態は、更に悪いものとなるはずです。何より、価格競争が起きれば、電気料金値上げなんてできないどころか、むしろ引き下げ競争をしなければならなくなります。大前の計算より、投資回収にはさらに長い年月がかかるでしょう。
 ま、残り年数20年の、大飯4号機などでも、投資回収は「微妙」でしょう。

6社黒字s
(朝日新聞西部本社版朝刊 8月1日)

 で、上図でも際立つ赤字の関西電力と九州電力、資金回収に役立つかもしれない残り年数20年以上の原子炉は九電・玄海3号機だけです。とりあえず表面は繕っていても、大前研一の言葉をいただけば、いずれ「突然死」するでしょう。
 なお、それ以前に、(“税金いくらでも投入”で黒字になっている東電はどうなるか知ったことではありませんが)、既に再値上げを申請した(上図でも赤字の)北海道電力、「お前はもう死んでいる」です。現状電気料金さえ維持できないのですから、電気料金引き下げ競争時代を生き残れるはずがありません。もちろん原発専業会社なのに動かせそうな原発がなく、しかも何か動かしたとしても元が取れそうな原発のない日本原電、もっと明らかに、もう死んでいます。
 (ま、ということは、この事態を打開すべく、何やら良からぬ手を打ってくるのでしょう、経産省。そして、原発依存電力会社依存政治家・・・)



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関電・大赤字、北電・再値上げ、なのに「9月電気料金、全社値下げ」!!

2014-07-31
 いや何と言うか、矛と盾、ってやつですか↓

 「関電の最終赤字290億円 社長、再値上げに含み 4~6月」(日経新聞HP 7月30日)
 「北海道電が再値上げ申請 家庭向け17%、11月実施」(日経新聞HP 7月31日)

 ⇔ 「9月電気料金、全社値下げ=燃料価格下落で3カ月連続」(時事通信HP 7月30日)

 もちろん、やらせ発覚で突然の番組終了に追い込まれたどこぞのテレビ番組じゃありませんが、どこかに無茶があるからこんなことになるわけです。
 そもそも、家庭用電気料金は電気事業法に則り、経済産業省が厳格に査定して決まっているわけですから、(まあ、政治家への献金をちょろまかして上乗せしてあるとか、使用済み核燃料というゴミが核燃料原料として資産査定されているとかはともかくとして、というか、そういう無駄金も含めて黒字が出るように)、“合理的な”水準に設定してあるはずで、巨額赤字が出るのはおかしいのです。電力会社が真面目にコストカットに励み、地道に発電業を営んでいれば、電気料金は今、値下げされるべき状況にあるわけです。

 にも関わらず大赤字で、再値上げが必要ということは、どこかで大金を無駄に使っているということです。
 もちろん、止まっている原発の維持費が高くついているわけですが→「原発止めると、なぜ上がる? 電気料金 その2」、単なる原発維持費だけではないようです。

 「たとえば柏崎刈羽原発では追加の安全対策にすでに3000億円以上のお金がつぎ込まれている。これだけのコストを回収するには長い期間がかかる。運転経過年数が短く、残りの“寿命”が長い原発でなければ、経営は破綻してしまう。」(日経BPnet 7月30日)

 ↑原発再稼働論者の大前研一が、「『産業突然死』時代の人生論」というコラムで書いていることですが、最低でも10年以上かけて回収しなければならないような投資を、今、電力会社は原発に注ぎ込んでいるわけです。
 で、なかなかなのが、次の図↓

運転経過年
日経BPnet 7月30日記事からスクリーンショット)

 大前研一は記します、「このうち、40年以上経過した原発は、明らかに安全対策コストを回収することができない。建設時には30年を想定していた原子炉をその後40年に延命し、50年まではもたせたいとしていた業界の期待もむなしく、現実には残り寿命が10年を切った原子炉の再稼働は諦めざるを得ないだろう。/30~39年の原発についても、安全対策コストを回収できるかどうか、微妙なところだ。」(日経BPnet 7月30日

 わざわざ川内第1・第2にピンク着色して、採算取れるか取れないかボーダーラインぎりぎり29年・28年というのを指摘しているのも興味深いのですが、さて関西電力、上図に示された美浜1・2号機は運転開始後40年を超え、完全にアウトです。
 関西電力の場合、上の図に出てこない大飯原発は、1番新しい4号機が1993年の運転開始(3号機はその前年)ですから20年程度経過で、採算ライン10年クリアということになります。でも、1・2号機はそれより10年ちょい古いので30年程度経過で採算ライン程度。高浜では1号機がちょうど40年め、2号機はその1年後なので39年ということで、絶望的。3・4号機は1985年の運転開始ですから29年めで、採算ライン程度ということになります。あ、そうそう、美浜には3号機もありました、1976年運転開始・・・やっぱ、アウトですね。
 おおっ、大前研一の計算が正しければ、「微妙なところ」を除いてしまうと、なんと元が取れるのは大飯3・4号機しかない!! それも前半の10年はコスト支払いに追われるわけですから、儲けが上がるのは10年後~20年後までの10年間だけ、ということになります。

 こりゃ~、電気料金値上げしなけりゃならないわけです・・・無駄金が大量に必要(、で、回収の目処も立たない)。
 でも、ま、2016年からは電力自由化ですからね。値上げを決めれば払ってもらえる、というわけには行かなくなります。大前研一のコラム名称が頭に浮かんできますね、「産業突然死」、てか、“関電突然死”なんちて。


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どんどん前進、新電力/もたつくもたつく原発保有電力

2014-07-29
 原発保有電力会社の、遅々と進まない送電網整備に対し、新電力が立ち上がります↓

送電網自腹
(朝日新聞西部本社版朝刊 7月29日)

 送電網の整備に、新電力が連帯して動き出しました。
 原発保有電力会社の接続拒否により、発電能力はあるのに生かされない現状、動き出します。
 もちろん、もう状況が動いているところもあります↓

 「太陽光発電2.4倍に 導入実績42万5千キロワット 13年度末栃木県内」(下野新聞 7月29日)

 ま、原子炉0.5基ぶんといったところですが、栃木県だけでこの実績です。
 そして↓

 「東燃ゼネ、電力小売り参入=16年全面自由化で」(時事通信HP 7月28日)

 石油元売りの東燃ゼネラル石油、電力に参入です。
 再生可能エネルギーも、火力発電も、新電力が、続々動き出します。

 これに対し原発保有電力

 「北海道電力:全国初、再値上げ申請へ 月内、20%程度」(毎日新聞HP 7月29日)
 「汚染水凍結へ氷作戦、手作業で投入…福島第一」(読売新聞HP 7月29日)

 もたつくもたつく原発保有電力、「値上げ」に「手作業」、何やってるのか。
 はっきり言って原発イラネ

 ところで福島第一2号機サブドレインの、このセシウム濃度ぴょんと上昇、何を意味するのか??

福島第一2号機サブドレイン20140729
東京電力報道資料 7月28日



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3割の人が“電力自由化されたら、「電気料金にかかわらず」原発保有電力会社は選びません”と回答・・・楽天リサーチ

2014-07-23
 いつの間にこんな調査をしてたんだ楽天リサーチ、すげっ!!

電力会社の許容範囲
楽天リサーチ「夏の節電に関する調査」 7月18日、pdfは→こちら

 調査の表題は“夏の節電に関する調査”ですが、その中の1問、質問と回答がキてます。「2016年以降の電力自由化で、電力会社を選ぶ際に、毎月の電気代が増減する場合、現状の電気代に比べて、最大どれくらいの電気代であれば許容でき」ますか、と質問です。
 なんと、3割(29.2%)の人が、「原発を保有する従来の電力会社」を「電気代に関わらず選択したくない」と回答しました。現状と同等の電気代もしくは現状よりも高くても原発保有既存電力会社を許容できると答えた者は41.7%(1.3+2.2+1.7+36.5)に過ぎませんから、電気料金値下げできない限り、原発保有既存電力会社からは、6割もの人々が流出予定です。
 これに対し、「太陽光、風力、水力などの電源を保有する新電力」については、電気代1000円アップでも許容 5.5%、500円アップでも許容 10.8%、100円アップでも許容 9.5%です。もちろん同等価格なら 43.9%の人々が許容です。合計 69.7%、頑張れエコ新電力、現在の電気代水準と同等程度を実現できれば、7割は獲得できる!!(そこまで獲得するには営業努力も必要ですが・・・)

 まあ、でも、「電力会社を選ぶポイント」は「電気料金が安くなる」82.9%ですから、結局どうなるかは電気料金の設定次第ではあるのですけど・・・

電力会社を選ぶポイント
(同上、楽天リサーチから)

 原発という金食い虫を抱え、企業向けには出血大サービスのダンピング価格で電力供給している原発保有既存電力会社、価格面では(特に一般家庭向け価格設定では)LNG火力を中心とした新電力に勝ち目はないわけで、こっちの面でも見ものです。

 ところで、

 「(原発利権を追う 裏金システム)政界対策、極秘の『遺書』」(朝日新聞HP 7月22日)
 「(原発利権を追う 裏金システム)2人の議員側に1億4000万円」(朝日新聞HP 7月23日)

 朝日新聞の中部電力裏金追求企画、なんか凄いことになってきました。クモ膜下出血で倒れ、死にそうになっている(実際、死亡する)政界工作担当役員が、とにかく政界工作極秘事項だけは言い残す凄絶ぶりから、国会議員2人への1億4000万円献金、地元対策の金バラマキへと話は展開中。この先まだ何かあるのか??

 原発保有既存電力会社、地域独占・総括原価方式でバカ高い電気料金を人々から搾り取り、福島第一原発の事故の後でも何の反省もなく原発再稼働を追い求め、自らの利益のために汚い裏金工作もやりたい放題、こんな会社から電気買うなんて、ホント「電気料金にかかわらず」ごめんです。


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原子力をめぐり交錯する経済の流れ

2014-07-18
 規制委による川内原発審査書案了承を見て、経済同友会、これまでの態度を一変させました。

 「同友会:『縮原発』見直しで一致 活用推進に転換」(毎日新聞HP 7月17日)
 「経済同友会『縮原発』路線を転換 再稼働念頭に活用に軸足」(日経新聞HP 7月17日)

 経済同友会は、福島事故を受けて、これまで「縮原発」の方針を掲げてきました。経済3団体の中で、原発推進を堅持した他の2団体(経団連・日本商工会議所)とは違う、異色の輝きを放っていたわけですが、しかし、金儲けのチャンスがあるならば、それに乗らない手はないとばかりに、態度豹変です。
 まあ、金儲けクラブですから、当然、こうなるのでしょう。原発というのは、既に経済性神話は崩壊していますが、それをネタに国民からカネを巻き上げ経済界がボロ儲けする装置としては使えますから。
 これで経済界は一致して原発推進となりました。

 やっばいな~、という状況ですが、流れは一方向ばかりに向くものでもないようです。

電力融通機関設立
日経新聞HP 7月17日記事 スクリーンショット)

 「電力広域的運営推進機関」がいよいよ、設立総会を開きました。来年2015年の4月には正式発足です。
 これまで、再生可能エネルギー発電会社の参入障害となってきた「接続容量の壁」に穴が空き、既存電力会社に対して新電力が負わされてきた「配電関連の嫌がらせ(ハンデ)」が軽減されることが期待されます。

 「接続容量の壁」とは、例えば→「風力発電の系統連系可能料について」(四国電力)に出てくるように↓

 「しかしながら、風力発電は、自然条件により出力が大きく変動することから、電力系統への連系量が増大した場合、周波数面での影響が生じることとなるため、当社としては、常に電力の品質保持に配慮しながら、系統連系を進めていく必要があります。/こうした状況から、当社では、現時点で電力系統に悪影響を及ぼさないと見られる風力発電の連系可能量を20万キロワットとして設定し、当面の間、運用することといたしました。」

 なんて言い方で、既存電力は、新規発電業者の電気を受け入れないことを平気でやってきました。一方で「原発止まって電気が足りない」なんて言いながらです。それにそもそも、日本の電力会社間には電気の融通に使える送電線が結構あり、それを使えば、風力の出力変動程度、簡単に吸収できるにも関わらずです↓

 「国の風力発電系統連系対策小委員会でも、この東電を東北電の蓄電池代わりに使うアイデアが議論された。だが小委員会は『送電線の余力に不安がある』との理由でこのアイデアを採用しなかった。これは、この送電線は原子力のためで、風力発電の活性化には使うべきでないと考えたためだろう。」(「風力発電建設に電力会社がブレーキ」井田均/市民エネルギー研究所)

 実際、この送電路は、この夏原発を動かせない関西電力と九州電力に電気を送るために使われるのですけど→「“原発ゼロの夏” 関電、東日本からの助けも求めた『綱渡り』の電力需給計画」(産経新聞HP 4月17日)。ただし、再生可能エネルギーのためには使えないようです。

 そして「配電関連の嫌がらせ(ハンデ)」です。
 発電側への参入障壁が接続容量の壁なら、小売側、新電力への妨害も、もちろんしています。新電力には各利用者まで電力会社のケーブルで電気を運ぶということで託送料金が課されますが、これ遠くにある原発からの送電費用も含めて、原価計算がされています。しかも使用電力の変動は、30分ごとに報告せよと要求しています。東電なんて、6時間に1回しかデータ送れないと、主張していたくせにです。

 こういったことが「電力広域的運営推進機関」の設置により、多少は整理されるでしょう。一応制度設計として、この組織、「電力会社のほか発電事業者、小売りを専門とする新電力の3グループが参加。大手電力会社に有利にならないよう、3グループは機関決定で同等の権限を持つ」(上掲、日経記事)となっていますから。ま、この仕組が現実にどの程度役に立つかは、結果を見てみないと判りませんが。

 電力広域的運営推進機関がそこそこ機能した場合、新電力と比べて割高な電気しか提供できない原発依存電力会社、2016年の電力自由化でどうなるのか、見ものでしょう。


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こりゃいよいよ断末魔だな、日本原電

2014-07-10
 「ある幹部は悲壮感を漂わせながら、こう言い切った。/『たとえ職を失ったとしても規制委の不合理さが白日のもとにさらされれば、悔いはない』」(産経biz 7月9日)

 敦賀原発の活断層を検討する6月21日の規制委・有識者会合で、けちょんけちょんにされた日本原子力発電、怒り収まらず、大爆発です。HP見てみれば↓

日本原電HP抗議
日本原電HP 7月10日の状況 〈ピンク矢印〉書き込み)

 スクリーンショットに写っている3本のプレスリリース、要するに全部、原子力規制委員会の21日会合に対する抗議文です。スクロールすると、実はもっとあって、規制委に対する抗議文は5本になります(当日「お断りされた」資料も掲載されてますので、それも合わせれば6本)。

2014年07月03日
 田中委員長の発言に関する事実関係についてNEW
2014年06月25日
 原子力規制委員会への「公開質問状」の提出について
2014年06月24日
 原子力規制委員会への要請書の提出について
2014年06月21日
 敦賀発電所敷地内破砕帯の調査に関する有識者会合 第2回追加調査評価会合における当社提出資料の取扱いに関する事実関係について
2014年06月21日
 当社コメント(敦賀発電所敷地内破砕帯の調査に関する有識者会合 第2回追加調査評価会合の開催)

 ま、要するに、“1週間前が資料提出締切だなんて言われてない、専門家の出席だって当日じゃだめだなんて言われてない、こういうやり方は不公平だ”という主張です。
 で、その書き方が尋常じゃない。社内の電話対応メモやら、やりとりしたファックスやらを公開しての抗議です。
 確かに、細かい行き違いはあったのでしょうが、しかしやっぱり当日の櫻田原子力規制部長の話と突き合わせてみれば、これで抗議が成り立つはずもないと見えますけど↓

 「資料の提出等、一週間前で切るわけではないと言ったのは、事実訂正等、細かな修正を受け付けるという意味で、発表内容をガラッと変えていいと言ったわけではない。そんなことされたら、一週間前に会合参加有識者に資料を渡して検討してきてもらう意味がなくなってしまい、有意義な議論ができなくなるのが当たり前のことではないか。」(逐語ではなく大意を筆起こし、当ブログ記事6月22日から。実際の言葉は→これ

 日本原電の抗議文の中にもありますが島崎・規制委員が「十分有識者の皆様に事前に届いて検討できるという余裕のもとで次回の会合を開きたい」(日本原電抗議文2ページ)と言っているのですから、これを“前日でも良い”とか“当日でも良い”と考えるのは、あまりに都合よく解釈しすぎでしょう。
 日本原電はそう思ってないのでしょうが(というか、そういうふりをしている)、日本原電の抗議は、規制庁担当者の言葉尻を取った、子供のいちゃもんです。

 まあ、東海第二と敦賀の2つの原発を運営するのみの日本原電にとっちゃ、より古くすぐ廃炉になりそうで、しかも古いということは手をいっぱい入れなければ再稼働が難しい東海第二だけじゃどうにもなりませんから、敦賀が動かせなければそれで会社が終わりでしょう。もうここで必死になるしかないのでしょうが、規制側の官庁怒らせて、ますます窮地です。
 断末魔だな、こりゃ。


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