【PAZ・UPZ・PPA】防災参考図: 大飯原発(2)京都・大津・奈良・神戸・和歌山
このシミュレーションは、福島原発と同じ事故が同じ日時に玄海原発で起きた場合、セシウム137がどう拡散するかを気象データをもとに計算したものです。赤い領域が「福島で避難が必要とされたレベル」とのことです。
現在、再稼働の手続きが進む大飯原発、ここにこのシミュレーションの図を重ねてみます。なお、玄海原発汚染シミュレーション地図は、縦横比を調整し、玄海原発から50kmの距離円を基準とし、重ねあわせを行なっています。

風速、降雨といった条件次第ですが、京都・大津だけではなく奈良も、避難必要地域となる事態が十分に考えられるでしょう。
さて大飯原発周辺、気象庁のデータをパラパラと見た限りでは、北東の風が吹くことはないようですが、一応、神戸を念頭において作図してみたのが次の図です。北風が多少回りこむこともあるかと・・・。
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【佐賀県・原発】佐賀県の原子力災害対策のどこがダメか
佐賀県のHPから次のようにたどります。
佐賀県 → くらしと教育 → 防災・安全・防犯 → 防災減災さが
下の方に「防災関係資料」という項目があり、その下に「佐賀県地域防災計画(平成24年2月13日修正版)」があります。
クリックすると示される文章の中に「第4編 原子力災害対策(568KB; PDFファイル)」があります。目次i~iiページと、本文108ページ、表紙なども入ってPDFページ数では112ページとなっています。
内容は、「第1節 総則」「第2節 災害予防対策」「第3節 災害応急対策」「第4節 災害復旧対策」「第5節 複合災害対策」となっています。実際に書かれているのは、組織図や各部各課のやることをどこまでも細かく羅列していったもので、マニュアルと言えばマニュアルなのですが、記載内容に具体性を欠く項目も多く、まあ、備忘録といった感じです。
例えば災害対策本部の組織に関するp.36からp.52に渡る長大な表、p.49なら、「対策部-文教対策部、対策部長-教育長」の欄があり、「対策部長の担任事務」として9項目あがっています。その中の「文教対策全般の総括」について「左の主な内容」として4項目があり、1つは「学校の対応状況についての報道機関への情報提供に関すること」となっています。
「関すること」です。緊急事態に、“どういった情報を、どういう形で報道機関へ提供するのか”、が、重要だと思うのですが、(そして緊急事態対応なのですから、あらかじめ考えておかないと間に合わないことだと思うのですが)、「学校の対応状況」とは何か、それをどう報道機関へ提供するのか、具体的に書いてありません。まあ、この防災計画をもとに後は各部所で考えておいてね、ということなのかもしれませんが。この表、そこらじゅう「関すること」だらけです。
で、このような羅列の中で、実は一番重要なことが見えなくされています。事故発生後のあるステージで、何に重点的に取り組み、何を最優先で処理していかなければならないのか、という流れが見えません。書いてあるのは、ひたすら細かい事項の羅列です。極端に書くならば、実際の事故を想定して考えた対策と言うよりも、「日ごろ県庁で各部所がやっている業務を羅列し、原発事故があったらそれぞれの業務において対応が必要だよな、と書き加えただけの文書」ではないでしょうか。
さて、この無意味にだらだらと書かれた内容のない文書の中で、極めて明確に書かれた部分があります。
「ただし、福島第一原子力発電所における原子力災害を踏まえた国の防災指針の改訂が行われるまでの暫定的な対策として、玄海原子力発電所から半径20kmの円内地域について避難計画の策定等の必要な対策を講じることとし、・・・略」(p.2)
当ブログではさんざんケチをつけていますが、それでも、原子力安全委員会の現在の方針はUPZ(緊急時防護措置準備区域)30kmです。滋賀県は独自シミュレーションの結果、42kmにしています。30kmにも満たない20kmで済まそうとは、暫定対策とはいえ、あまりに手抜きです。
しかも滋賀県、最初は国の放射性物質拡散シミュレーション・システム「SPEEDI」の使用を国から拒否されるなど、苦労を重ねた末得たのが、この結論です。一方、佐賀県は原発立地県として、最初からSPEEDIを使用できたのです。そして実際にシミュレートしていた結果が、グリーンピースの情報開示請求で明らかになった、次のようなことです。
「初公開! 玄海原発事故SPEEDI、1時間で有明海・佐賀市・福岡市汚染の可能性」(グリーンピースHP)

20kmでは全く足りないのは明確ではないですか。佐賀県、自らシミュレートしたこんなデータを持っていながら、そんなことはどこ吹く風と、20kmなどという避難計画を立てているのです。これを悪意ある防災計画と呼ばずして、なんと呼びましょう。
「県は、国、原子力事業者と連携し、必要に応じ平常時から緊急時迅速放射能環境予測ネットワークシステム(以下『SPEEDIネットワークシステム』という。)と環境放射線テレメーターシステムとを接続するなど情報伝達のネットワークの整備、維持に務める。」p.14-15
と、「佐賀県地域防災計画 第4編 原子力災害対策」には書いてあります。なんのために何をするのか、そういったことは一切記載せず、単に各部所のやることだけを記載してある「佐賀県地域防災計画」、SPEEDIの使われ方(県もちゃんとやっているんだよというポーズを見せるためのアクセサリとしての利用-シミュレーション結果は隠蔽)を見れば、県民の命を守るためにやっているのではなくて、単に「佐賀県だって防災計画があるんだよ」というアリバイ作りのためとしか見えません。「防災計画があるんだから原発を動かしましょう」と言うための小細工であり、むしろ県民の命を危険に曝すための計画と言うべきでしょう。
【PAZ・UPZ・PPA】防災参考図: 大飯原発(1)大阪・鳥取
このシミュレーションは、福島原発と同じ事故が同じ日時に玄海原発で起きた場合、セシウム137がどう拡散するかを気象データをもとに計算したものです。赤い領域が「福島で避難が必要とされたレベル」とのことです。
現在、再稼働の手続きが進む大飯原発、ここにこのシミュレーションの図を重ねてみます。なお、玄海原発汚染シミュレーション地図は、縦横比を調整し、玄海原発から50kmの距離円を基準とし、重ねあわせを行なっています。
まずはこの地域で多い北風のせいで、大阪に汚染地帯が伸びることを想定したケースです。

風速、降雨といった条件次第ですが、大阪が避難必要地域となる事態は十分に考えられるでしょう。
さてこの地域、基本的には北~西北西の風向きが多いのですが、時期によっては真東の風になることもあります。2011年6月7~9日の風向きは「東」となっています。この時、どうなるのか、作図してみたのが次の図です。
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「川内2号機 トラブルで停止」!!

(朝日新聞西部本社版3月27日朝刊)
それにしても、「九電の火力がトラブルで停止するのは今年度に入って7件目。・・・略・・・火力の発電量が4倍以上の東京電力で4件、中部電力はトラブルがなく、九電の多さが目立っている」(強調、当ブログ)とのことです。
当ブログで取り上げてきたことだけでも、相当数に登りますが(→ 九州電力カテゴリー)、ミスの多さでは九電、圧倒的のようです。しかもそれをゴマかそうとする姿勢も一貫しているようです(測定ミス隠し・設備新設を国に届け出ず・火力燃料漏れを隠蔽)。
そしてこれが原発になれば、単にミスするだけでなく、
「九電は『よく起きている範囲の冷却水漏れだったので、連絡する必要はないと判断した』と説明している。」
となります。
はあ、冷却水漏れ、よく起きてるんですね、と当ブログで突っ込みを入れたのは2011年12月11日のこと。それが実は放射能漏れだったとなり、結局は、ポンプの主軸が折れていただの「最大規模の冷却水漏れ」だのと訂正されることになります。
やっぱ根本的にダメなんじゃないかぁ、九州電力。
「原発ゼロの会」が発足しました
原発ゼロを目指す超党派の議員集団が発足しました。ニュースは昨日入っていましたが、ちょっとほかに書くことがあったので、今、書いています。
なにはともあれ、政治家に頑張ってもらわないと法制度上の改革はできないわけで、頑張ってもらいたいところです。
ただ、メディアの取り上げは必ずしも芳しくありません。読売はもちろん、毎日・朝日でも、HP上で検索をしてみたところ、「原発ゼロの会」は出て来ません。まあ朝日の地上配布本紙の方では記事がありましたから、全く無視されているわけではないのでしょうが、あまり力を持たないと思われているのでしょうか? 「地下式原子力発電所政策推進議員連盟」の方が報道されているというのは、なかなか深刻な事態です。現実の政治家の実力評価としてそうなっているのか、メディアがそちらを取り上げたいからなのか(もっとも、揶揄的に取り上げるというのもあるかもしれませんが)、いずれにせよ、もう少し「原発ゼロの会」、大きなニュースになってもらわないと困りますねぇ~。
【PAZ・UPZ・PPA】放射性ヨウ素の拡散:伊方原発と大分・高知・北九州市
放射性ヨウ素は、原発事故の際、もっとも早い段階で拡散する放射性物質とされています。また、放射性ヨウ素は、到達する以前に安定ヨウ素剤の服用が出来ればある程度被曝を抑えることができます。従って、予防的に原子力災害対策を行なうならば、まずもって対策を行なう必要性の高い放射性物質ということになります。放射性ヨウ素はどのように拡散するのでしょうか。
NHK教育「ETV特集『ネットワークでつくる放射能汚染地図(5)埋もれた初期被ばくを追え』」(3月11日22:00~23:30)では、福島原発事故の際の、放射性セシウムとは異なる、放射性ヨウ素I-131の拡散状況について、測定記録の掘り起しとシミュレーションが行なわれていました。以前の記事では、そのシミュレーション画像(テレビ画面)をデジカメで撮影したものを掲載しましたが、そこから汚染域を抜き出し、伊方原発の地図の上に重ねてみます。
あらかじめ今回作業をまとめたものを掲載します。上段が海を挟んで向かい側になる大分方向、下段が高知方面です。左が4時時点、中央が8時時点、右が10時時点です。ただし、高知方向に汚染域が広がった場合、10時時点では海へと抜けてしまいますので、角度をぐるっと変えて、北九州市方面まで距離的に汚染域が広がるものかどうか見てみたのが、右下の図です。

以下、それぞれの図を見ていきましょう。
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【佐賀県・原発】ネット発言を監視!

(朝日新聞西部本社版3月27日朝刊)
「『佐賀県』『原発』というキーワードを含むインターネット上の書き込みを同県が2009年から、ほぼ毎日調べている」とのこと。「県危機管理・広報課がフェイスブックやツイッター、『2ちゃんねる』などのネット掲示板、個人のブログ日記などを調査」しているそうです。「年間約120万円で契約する東京のネット検索会社に、二つのキーワードを含む書き込みを毎日探してもらう」のだそうです。
いやはや、当ブログ主、「悪意の佐賀」と書いた時は、書き過ぎかな、とも思ったのですが、全然書き過ぎではなかったようです。
東電CIAもあれば、佐賀県もです。原発推進派のやり方は、市民社会のルールを守っていません。こんな連中があんな危険なものを扱おうというのがどうかしていると言うべきでしょう。
さあ、佐賀県民、こんなことに県税120万円を費やしていることを許すのか、あなた達の動向も、注目の的となったことを記しておきましょう。
【4/16追記】 → 佐賀県の原子力災害対策のどこがダメか
現在の津波耐性8メートル--福島第1原発
「地震:チリ中部でM7.1 日本に津波影響なし」(毎日新聞HP)
「チリ中部でM7.1の地震 政府『津波の心配なし』」(朝日新聞HP)
津波はなかったということですから、こちらとしてはやれやれです。現地は大変でしょうが。
しかしそれにしても、「チリ」、「地震」と来ると、どうしてもこれ ↓ 連想してしまいます。
「チリ地震津波、三陸を襲う」(毎日新聞HP)
で、やっぱり気にかかるのが福島原発。現在の福島原発の津波耐性は公称8m(朝日新聞HP)です。一昨日はストレステスト一次評価を受けた大飯原発の津波耐性が11.4mということを問題視しましたが、まあ、通常状態の大飯原発で11.4mなんだから、応急処置状態の福島原発の耐性がそれより落ちる8mというのはしょうがない、ということになるのでしょうか。1960年の三陸チリ津波も最大6mだったし、と。
で、結局、津波が来てみれば10mで、ドッカーン! なんてことになりそうに思えるのは私だけか ・・・ ・・・。

8mを超える近年の津波の一例(高さは、出典により波高の場合と遡上高の場合あり)
(出典: 明治三陸津波 関東大震災 昭和三陸地震 日本海中部地震 北海道南西沖地震 東日本大震災)
【PAZ・UPZ・PPA】放射性ヨウ素の拡散:伊方原発と松山・広島
放射性ヨウ素は、原発事故の際、もっとも早い段階で拡散する放射性物質とされています。また、放射性ヨウ素は、到達する以前に安定ヨウ素剤の服用が出来ればある程度被曝を抑えることができます。従って、予防的に原子力災害対策を行なうならば、まずもって対策を行なう必要性の高い放射性物質ということになります。放射性ヨウ素はどのように拡散するのでしょうか。
NHK教育「ETV特集『ネットワークでつくる放射能汚染地図(5)埋もれた初期被ばくを追え』」(3月11日22:00~23:30)では、福島原発事故の際の、放射性セシウムとは異なる、放射性ヨウ素I-131の拡散状況について、測定記録の掘り起しとシミュレーションが行なわれていました。以前の記事では、そのシミュレーション画像(テレビ画面)をデジカメで撮影したものを掲載しましたが、そこから汚染域を抜き出し、伊方原発の地図の上に重ねてみます。
あらかじめ今回作業をまとめたものを掲載します。上段が立地県、松山市方向、下段が実は夏の風向きから言ってはるかに実現性の高い広島方向へ風が吹いた場合です。左が4時時点、中央が8時時点、右が10時時点です。

以下、それぞれの図を見ていきましょう。
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あれ? 津波、 11.4メートルですか?
しかし、評価の実際の内容がなんであれ、とにかく原発を再稼働させたいそれ系メディアは“再稼働”へ向けて、行け行けどんどんです。
「これで大飯原発3、4号機の再稼働に向けた技術的な評価は終了した。今後は野田首相と関係3閣僚の政治判断にゆだねられ、近く開く閣僚会議で安全性を確認した上で、福井県に出向いて説明する方針だ。」(「大飯原発3、4号機の耐性検査を了承…安全委」読売新聞HP)
技術的評価、「終了」してないってば・・・まだ一次評価で今後、二次評価も必要、って、班目委員長自身が言っているんだから。
いや~、それにしても、“津波は高さ11.4mまで大丈夫です”と言っていました(3月23日午後7時のNHKニュース)。あれ? 福島第一原発が受けた津波、13mだったはずですが・・・「津波、高さ13メートルで福島第一に到達 東電が解析」(朝日新聞HP)。東日本大震災の時の津波、ところによっては21.1mという話もあります→「図録▽東日本大震災で確認された津波の高さ」。
“日本海側にはこんな高さの津波が来るはずはない”、と、またやっているのですかね・・・。
【PAZ・UPZ・PPA】放射性ヨウ素の拡散:玄海原発と佐世保・長崎・大分
放射性ヨウ素は、原発事故の際、もっとも早い段階で拡散する放射性物質とされています。また、放射性ヨウ素は、到達する以前に安定ヨウ素剤の服用が出来ればある程度被曝を抑えることができます。従って、予防的に原子力災害対策を行なうならば、まずもって対策を行なう必要性の高い放射性物質ということになります。放射性ヨウ素はどのように拡散するのでしょうか。
NHK教育「ETV特集『ネットワークでつくる放射能汚染地図(5)埋もれた初期被ばくを追え』」(3月11日22:00~23:30)では、福島原発事故の際の、放射性セシウムとは異なる、放射性ヨウ素I-131の拡散状況について、測定記録の掘り起しとシミュレーションが行なわれていました。以前の記事では、そのシミュレーション画像(テレビ画面)をデジカメで撮影したものを掲載しましたが、そこから汚染域を抜き出し、玄海原発の地図の上に重ねてみます。
まずは玄海原発すぐそばの佐世保市です。

3月15日4:00段階
市の中心部まで、汚染域の赤い部分が到達しています。
福島原発事故では、3月14日から15日へと日付が変わるころ放射性物質が大量放出されていますので、4時間程度で、この状況へと拡散したということになるでしょうか。
赤い地域では、子供の場合、汚染された空気を吸い続けると1時間で100mSv以上、甲状腺被曝をすることになります。それが黄色い地域なら10~100mSv、青い地域なら1~10mSvの被曝、といったところでしょう。黄色い部分でも、番組中のナレーションによれば「法令で定められた基準値の2500倍」ということですので、非常に深刻な汚染です。
重ね合わせの角度を長崎市の方へちょっと変えて、8:00段階について見てみたのが次の図です。
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読売新聞の工作報道と、藤村官房長官・細野原発相の策動
「班目(まだらめ)春樹委員長は『審査手法に問題はない』と述べ、安全委は来週にも1次評価を了承する報告書をまとめる。これを受け、政府は野田首相と関係閣僚の会議を月内にも開き、再稼働の是非を判断し、地元の説明に当たる。東京電力福島第一原発事故から1年、再稼働問題は新しい局面を迎えた。」(読売新聞HP3月13日)
この記事だけ読むと、あたかも安全審査手続きが進み、再稼働へ向けて、あとは政治判断だけという状態になったようなイメージを受けます。しかし、現実は全く異なります。なぜなら、班目委員長が言ったのはあくまで1次評価のやり方が適切だったかどうかだけであり、1次評価そのものは「再稼働とは関係ない」、とも述べているのです。

「班目委員長は、福島第一原発で起きた津波に大飯原発が襲われても、大事故が起きるような事態にはならないとの認識を示す一方で、1次評価について、『ここまでは確認でき、ここは不十分ということを指摘する』と強調。1次評価だけで安全性を評価するのは不十分だとの考えを改めて示した。」(朝日新聞3月14日西部本社版朝刊)
ただし、読売新聞と同じ“誤解”をしたがっているのが、実は政府だというのが厄介な話。
「『班目発言』火消しに躍起 政府 再稼働の妨げ、懸念」(東京新聞HP2月22日)
審査した本人が、“この審査は(その目的では)使えないよ”と言っているのに、それを無理やり曲解して再稼働に結びつけようとする、藤村修官房長官、細野豪志原発事故担当相、あなた達のゴリ押しが、国民の目にしっかりと写っていることを理解しておくべきでしょう。
原子力規制庁の4月1日発足がいよいよ絶望的となった(「原子力規制庁の1日発足断念 原発監視、当面は保安院」朝日新聞HP 3月22日)現在、再稼働推進派は、今の原子力規制体制(原子力安全委員会と原子力安全・保安院)のままでの再稼働を、強引に無理押ししてくるでしょう。一昨日書いたことを改めて書いておきます。福島原発事故を防げなかった原子力安全委員会と原子力安全・保安院が、いくら審査だの認可だのした所で、笑止千万な話です。しかもその原子力安全委員会の委員長その人が、“今やっている審査は再稼働の審査ではない”と述べている有様です。原発再稼働を考える状況にはなっていません。
国民一人あたり11万円を強要する細野豪志環境原発相

経済産業省の安井正也官房審議官が犯罪的行為によって隠蔽した、使用済み核燃料の直接処分費用4兆2千億~6兆2千億に対し、再処理に要する費用、19兆円。その差額、12兆8千億円以上となります。これを単純に日本の人口1億2千万人で割れば、一人あたり106,666円以上、です。子供から大人まで、赤ん坊から老人まで、全ての人が均等に負担するとして、これだけの金額が、核燃料サイクルの一部分のプロセスに過ぎない使用済み核燃料の処理に必要です。
しかもこの再処理技術、失敗続きですので、今後、必要な費用は更に上昇する可能性があります。と、いうか、この分野いつものことで、実際にやってみれば当初見込みの数倍、といったことになるでしょう。
「溶融炉、れんが片で目詰まり 六ヶ所村・試験運転延期」(朝日新聞HP 2月29日)
「延々19回も失敗続きの施設を続ける理由」(ジージさんのマイページ)
「核燃基地六ケ所村「核のごみ」封印 道遠く/ガラス固化 失敗続き/純国産技術進まず/核半島」(来栖宥子★午後のアダージォ)
いったい細野原発相の“無視できぬ歴史”とは何なのでしょう? まさか、こんな歴史じゃないでしょうね。
「核燃料再処理工場を誘致した六ヶ所村の村民所得は年1364万円」(SAPIOから“阿修羅”に転載)
【PAZ・UPZ・PPA】放射性ヨウ素の拡散と大飯原発(京都市・大津市・大阪市)
放射性ヨウ素は、原発事故の際、もっとも早い段階で拡散する放射性物質とされています。また、放射性ヨウ素は、到達する以前に安定ヨウ素剤の服用が出来ればある程度被曝を抑えることができます。従って、予防的に原子力災害対策を行なうならば、まずもって対策を行なう必要性の高い放射性物質ということになります。放射性ヨウ素はどのように拡散するのでしょうか。
NHK教育「ETV特集『ネットワークでつくる放射能汚染地図(5)埋もれた初期被ばくを追え』」(3月11日22:00~23:30)では、福島原発事故の際の、放射性セシウムとは異なる、放射性ヨウ素I-131の拡散状況について、測定記録の掘り起しとシミュレーションが行なわれていました。以前の記事では、そのシミュレーション画像(テレビ画面)をデジカメで撮影したものを掲載しましたが、そこから汚染域を抜き出し、大飯原発の地図の上に重ねてみます。
あらかじめ今回作業をまとめたものを掲載します。上段が京都・大津方向、下段が大阪方向へ風が吹いた場合です。左が4時時点、中央が8時時点、右が10時時点です。

以下、それぞれの図を見ていきましょう。
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で、誰が責任者なのか? 福島原発事故と原発再稼働
福島原発事故の後に原発再稼働をしようというのですから、事故の再発防止が大前提であることは誰も異論を差し挟まないでしょう。でも、再発防止のためには、なぜ福島原発事故が起きたのかがわからないと、手の打ちようがありません。しっかりとした技術的評価はもちろん重要ですが、それ以前に分かることは、まずはっきりとさせ、対策を行なう必要があるでしょう。
最初に考えておくべきことは、次の点でしょう。
1. 誰かの何らかのミスのためにこの事故が起きたのか?
誰かの何らかのミスのために福島原発事故が起きたのなら、ある意味、話は簡単です。責任者を処分し、ミスを犯さないように環境整備をした上で人を入れ替えれば、原発再稼働の条件は整うことになります。しかし、だれ一人として、責任者が処分されたという話を聞きません。当ブログでは、経産省官僚と電力会社に、犯罪的、確信犯的ミスがあったのではないか、と記してきましたが、誰も福島原発事故の責任を取られさた者がいない以上、政府の立場は違うようです。
2. 個人に責任がない以上、原発運営・管理体制の方に問題があった
ということになるでしょう。それならば、これまでとは違った原発運営・管理体制を作った上でないと、原発再稼働はできないことになります。実際、政府は「原子力規制庁」を作って、原子力監理行政を担わせるとしています。
しかし、原子力規制庁は、できる兆しさえありません。
「原子力規制庁:4月1日発足が困難な情勢に」(毎日新聞HP3月12日)
それどころか、現在、原子力監理行政を行なっている原子力安全委員会は、3月31日限りで無くなってしまうことが予定されています。再稼働などした日には、誰が監理するのでしょうか。

他方、原子力安全・保安院は、やはり消滅する3月31日までに、あらゆる認可を出してしまおうと、駆けこみ認可に余念がありません。
「核燃サイクル施設、認可次々 政策見直し中に駆け込み?」(朝日新聞HP3月19日)
もともと、原子力安全委員会にしろ、原子力安全・保安院にしろ、福島原発事故を防げなかった責任組織ですから、そこが審査だの認可だのして“安全”のお墨付きを出すなど、笑止の沙汰でしか無いわけですが、それさえも無くなる状況下で、政府は、どう原発を監督するつもりなのでしょうか。今度は誰が責任者なのでしょうか?
あり得ません、原発再稼働など。
【PAZ・UPZ・PPA】放射性ヨウ素の拡散と玄海原発(佐賀市・唐津市・熊本市)
NHK教育「ETV特集『ネットワークでつくる放射能汚染地図(5)埋もれた初期被ばくを追え』」(3月11日22:00~23:30)では、福島原発事故の際の、放射性セシウムとは異なる、放射性ヨウ素I-131の拡散状況について、測定記録の掘り起しとシミュレーションが行なわれていました。以前の記事では、そのシミュレーション画像(テレビ画面)をデジカメで撮影したものを掲載しましたが、そこから汚染域を抜き出し、玄海原発の地図の上に重ねてみたのが以下の図です。
今回は佐賀県方面です。既に佐賀県はSPEEDIにより、玄海原発事故の際の放射性物質拡散状況についてシミュレーションを行なっており、改めて重ね合わせ図を作成する意味は薄いのですが、県民の目には触れないようになっているようですので、作成してみます。

3月15日4:00段階
福島原発事故では、3月14日から15日へと日付が変わるころ放射性物質が大量放出されていますので、4時間程度で、この状況へと拡散したということになるでしょうか。なお、図では、唐津市・佐賀市が最もダメージを受ける場合を考えて、重ね合わせの際、角度を決めています。
時間が経つと、これがさらに広がり、福島の拡散状況と同じであれば、8時には次の図程度になります。熊本市が汚染域の中心となります。
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福島原発の石棺化を急ぐ必要がある
福島原発、現在の事故対策は原子炉に対する手当で精一杯で、とても新たな津波に対する対策をしているようには見えません。地上に無防備に、原子炉冷却装置や汚染水浄化装置が置いてある状態のようです。でも、次の津波は待ってくれません。
巨大余震(誘発地震を含む)、とりわけ、「アウターライズ地震」の危険性が繰り返し警告されています。
「相次ぐ地震 今後の活動は?」(NHKホームページ、3月15日)
「余震」(TBS「ニュースキャスター」3月17日の内容を「TVでた蔵(TV DATA ZOO)」が紹介)
「『道内地震増加、長期的な防災計画を』遠田京大准教授」(十勝毎日新聞)
「アウターライズ地震」とは、海溝のプレート潜り込み側で地盤が隆起して起きる地震だそうで、日本の場合、震源地が陸地から遠いため揺れそのものは小さいのに、津波だけはしっかりと来る地震とのことです。それが近日中に起きる可能性があるというのです。
現在の福島の状況では、ちょっとした津波が来るだけで、これまでやってきた原子炉の冷却作業など、簡単に吹っ飛んでしまうでしょう。
しかも、地震・津波は、余震や関連のアウターライズ地震だけではありません。もともと東北地方太平洋側は、30年に1度くらい、沖合を震源とする大規模な津波が来るところです(1835年-天保6年の地震と津波、1856年-安政3年の地震と津波、1896年-明治三陸大津波、1933年-昭和三陸津波、この後、津波の高さが50cm程度の小規模なものばかりになるのですが、1978年-宮城県沖地震、1995年-三陸はるか沖地震、2005年-三陸沖地震と続き、そして、2011年3月11日の東日本大震災となる)。スマトラ島沖地震を見れば、今回のような超巨大地震の場合、1~2年で、次の大地震へと繋がる可能性もあります。さらに、1960年のチリ地震のように、遥か彼方の地震が原因の津波(津波高-最大6m)の到達も考えられます。明日、そこそこの津波が来る可能性は、けっして低くないのです。
このことを警告しない日本のメディア、油断しすぎです。それとも電力会社の手でも回っていて、語れないのでしょうか。古舘伊知郎さんも何やら決死の覚悟でしたし・・・。
現実問題として実現性の疑われる廃炉作業を40年もかけてチンタラやっているよりも、早急な石棺化を行ない、次の地震・津波に準備する必要があるのではないでしょうか。そうでないと、再び「最悪シナリオ」の恐怖に直面しなければならなくなる可能性があります。
「消えていない福島原発『最悪シナリオ』4号機水抜けで東京アウト」(JCASTテレビウォッチHP、2012年3月8日)
【PAZ・UPZ・PPA】放射性ヨウ素シミュレーションと玄海原発(福岡市・糸島市)
NHK教育「ETV特集『ネットワークでつくる放射能汚染地図(5)埋もれた初期被ばくを追え』」(3月11日22:00~23:30)では、福島原発事故の際の、放射性セシウムとは異なる、放射性ヨウ素I-131の拡散状況について、測定記録の掘り起しとシミュレーションが行なわれていました。前の記事では、そのシミュレーション画像(テレビ画面)をデジカメで撮影したものを掲載しましたが、そこから汚染域を抜き出し、玄海原発の地図の上に重ねてみたのが次の図です。

3月15日4:00段階
福島原発事故では、3月14日から15日へと日付が変わるころ放射性物質が大量放出されていますので、4時間程度で、この状況へと拡散したということになるでしょうか。なお、図では、風向は西風ということにして、重ね合わせの際、角度を変えています。
時間が経つと、これがさらに広がり、10時には次の図のようになります。
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どうなる? 玄海原発1号機(その2)

(西日本新聞3月15日朝刊)
記事は、糸島市長の「現時点で議論すべきでない」というコメント付きです。
西日本新聞はこの前日、原子炉圧力容器について、次のような記事を掲載しています。
【PAZ・UPZ・PPA】被災参考図: 柏崎刈羽原発(新潟市・長野市・宇都宮市・前橋市・富山市)
国は、UPZ(緊急防護措置区域)を30kmと指定しています。しかし、国のこの30kmという指定は極めて便宜的なもので、はっきり言って根拠はありません。実際、この地域指定を決定した時と比較して、安定ヨウ素剤服用基準は2倍に厳格化されているのに、一向に地域指定変更は検討されていません。その名も、意味づけもズバリの「放射性ヨウ素防護地域」(PPA)、“安定ヨウ素剤服用の必要な地域”、についてさえです。そもそも、UPZ・30kmというのは、鬼ごっこの安全地帯のように、「この線越えれば大丈夫」といったものではなくて、経済的・行政的理由によって歪められ、極めて縮小された範囲指定に過ぎないということを忘れてはいけません。実際その外側も、甘々な国の基準においてさえ、PPAなのですから。
まずは柏崎刈羽原発で福島級の事故が発生し、放出された放射性プルーム(放射能雲)が、新潟市方向へ向かったとします。汚染がどの様な範囲に広がるのか、福島原発事故の放射能汚染地域を地図上で重ねあわせてみたのが以下の図です。図を見るにあたって、留意しておくべきことは、次の通りです。
1. 福島では、放射能汚染は阿武隈高地を越えて広がり、奥羽山脈に突き当たって120度程度曲がった。従って、汚染地帯は多少の高地は越えて広がるし、曲がりは伸ばして想像する必要がある(風が通常それに沿って吹く山脈などなければ)。次の2つの図を見比べると、伸ばすとどうなるか、状況の見当がつくと思います → (図1)、(図2)。
2. 滋賀県のシミュレーションを見ると、地形・気象条件次第であろうが、福島県の場合よりも放射能汚染はより遠くまで到達する可能性が大きい(福島は放射性汚染物質が広がりにくい地形・気象条件にあったかもしれない)。
より詳しくは、SPEEDIなどによる、しっかりしたシミュレーションが必要となります。

図は、群馬大学早川教授作成の「放射能汚染地図(五訂版)」(Adobe Illustrator CS1版)から、汚染状況のレイヤーを抜き出し、裏返し、回転し、Kenmapで作成した白地図に重ねてみたものです。
新潟市内でも、所により4μSv/h以上汚染されるという、深刻な状況が考えられます。
次に、放射能汚染地帯が長野市に向かった場合について作図してみたのが次の図になります。
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ふ~、とりあえずよかった・・・
「北海道と青森、岩手に津波注意報 八戸などで震度4」(朝日新聞HP)
「茨城県神栖や千葉県銚子で震度5強 震源は千葉県東方沖」(朝日新聞HP)
特に大きな被害は報道されていませんので、とりあえずはやれやれですが、メディアの報道には不思議があります。
「今、福島を津波が襲ったらどうなるか」、です。なぜか日本のメディアはこの可能性について言及しません。外国のメディアでは普通に語られるのですが・・・。
現在、福島原発の冷却機構や冷却水循環浄化システム、みんな地べたに放り出してある状態です。他方、防潮堤の建設には手が回っていませんから、いま福島に津波が来たら、ちっちゃいもの一発でアウトです。かろうじて100℃以下を維持している現状なんて、簡単に吹っ飛びます。
しかも、その可能性は、実はかなり高いのです。スマトラ島沖地震は、2004年、2005年、2007年と、巨大地震が続きました。福島でもそうならないという保証はありません。実際、けっこう大規模な余震、誘発地震は起き続けています。
40年で事故原発撤去なんて夢物語はどうでもいいから、とりあえず頑丈な囲いを早く作ってくれ~、と、切に思うのですが、なぜメディアは何も言わない?
福岡県の原子力防災対策、その後

(朝日新聞西部本社版朝刊3月12日)
「九電の安全協定 福岡県など大筋合意」(西日本新聞HP、3月10日)したそうですから、福岡県もやっと、何かをする気にはなったのでしょうか。まあ、安全協定の内容は情報提供程度の話で、はなはだ不十分なものですが。
工藤和彦教授の非常識

(朝日新聞西部本社版朝刊3月14日)
「安全をどこまで求めるかは、技術だけではなく『社会がどこまでなら許すか』で決めることです。」
「経済やエネルギー確保の面での大きなリスクを避けるには、安全上のリスクを含むものでも使う必要がある。経済性とのかねあいもどこかで考えないといけません。」
「どこかで線引しなければ世の中は成り立ちません。」
ひどくお間抜けな議論なんで、コメントの必要もないかと思いましたが“ウソも繰り返せばホントになる”となっては困りますから、コメントします。
まず、「経済性とのかねあい」を考えたら、原発は最初から採算がとれていない、QED(証明終了)。・・・なんですが、もう少し書いておきましょう。
安全性が100%保証できない技術でも、もちろん私たちは使っています。時々事故を起こす自動車が典型的な例でしょう。社会は、こういう技術を、どうやって使うのか? 事故が起きてしまった場合の「責任のとり方」を法律で明確にすると共に、経済的損失を含む様々な損失に対する「補償」を行なう能力を責任者が保持しておくことを、社会は要求します。
前段(責任のとり方)についてはいろいろと言いたいこともありますが、とりあえず、電力会社が責任者ということで、後半について考えてみます。自動車ならば、補償について、「保険」が強制されていますが、原発についてはどうでしょう? 全くうまく行っていません。東京電力に今回の事故の損害賠償を行なう支払い能力はなく、国の支援を仰ぐしか無い状況です。
今後、原発を動かすならば、責任者に、“保険”でも“準備金”でも良いですが、シビア・アクシデントの際に、被害者の生活を完全に建てなおすに足りる、賠償能力を確保してもらわなければなりません。具体的には、どうするのか? 今、次のシビア・アクシデントに対する補償金支払いに足る資金はないのですから、準備金という方法はなく、まずは保険に入ってもらうことが必要となります。
なお、“原子力損害賠償支援機構がある”、というのは話が違います。これは賠償の必要が発生した後に、金を集めようというシステムですから、リスク準備金の「とばし」に過ぎません。
保険によって賠償が可能という条件が整った上で、被害者の精神的ダメージなども考えた上で、それでも結局この技術が使いたいのか、という判断に、社会は進むということになります。危険性を含む技術の使用について、「社会が線引き」をするならば、こういう手順が必要です。
電力会社は、もし原発を動かしたいならば、まず保険にでも入って(もちろん準備金を積んでくれても良いのですが)、「補償能力はあります、ですから原発を動かさせてください」と言うべきです。「社会が線引き」をするのは、それからです。「社会がどこまでなら許すか」というのは、条件が整い、必要な判断材料が得られてからの話しです。それなしに、「ま、再稼働してもいいんじゃない」などと県知事が言ったなら、単なる無責任です。
そして話は戻ります。きわめて具体的な問題は、保険を引き受けられる保険会社がなく、もしあったとしても、保険金は非常に高額になり、電気料金の非常識な引き上げが必要という点です。これは取りも直さず、原発に採算性がない、ということです。採算も取れず、単に危険なだけの原子力、最初から線引きの外です。
(しかし、原子力工学の専門家というのは、危険性を含む技術の使用といった最も知っていなければならないことについて、どこまで社会常識がないのか。あなた達のおもちゃのために、命の危機に晒されるのは、まっぴらごめんです。)
【PAZ・UPZ・PPA】UPZも拡張必要: 柏崎刈羽原発
あくまで概算ですが、5km、30km、50kmの各地点で旧基準の100mSv(ミリシーベルト)の放射性ヨウ素が検出された場合、そこからどこまで遠ざかれば(原発から離れれば)、新基準の50mSvまで低下するのか、計算して見ました。8km、50km、80kmというのが得られた結果でした。UPZ拡張必要域は、これまでのPPA(50km圏)と一致してしまいました。地域指定をこの程度に変更する防災指針の改訂が望まれます。
さてしかし、原子力安全委員会が防災対策地域指定を拡張をすることがあるのでしょうか。現状では、かなり怪しく見えます。
我々としては、とりあえず具体的に、どの地域が該当するのか、理解しておく必要があるでしょう。自ら安定ヨウ素剤を用意するか、行政に働きかけるか、はたまた引っ越して逃げ出すか、人により取る手段は様々でしょうが、とりあえずは現状を認識することが大事でしょう。
今回は新潟県の柏崎刈羽原発について作図してみます。

書きこまれた同心円の意味については、こちらを御覧ください。
現行の区割りから言えば、新潟市は、一部だけが現PPA(50km圏)放射性ヨウ素防護地域にかかっている状況です。しかしこのPPAは、被曝医療分科会の新基準に照らせば、実質UPZと考えておく必要があります。
さてところで、当ブロクで何度も言及してきたように、滋賀県は、独自シミュレーションの結果、UPZを最遠地点42kmに設定しました。この42kmという数字と、この地点を100mSv/hとした場合、さらにどこまで遠ざかれば被曝医療分科会の新基準50mSv/hまで被曝線量が低下するかを概算した約70km(計算結果は68.91kmとなりましたが、もともとそれほどの精度はない概算結果ですので70kmとしておきます)という数字(UPZ拡張必要域)で、再度描き直してみた図が、次のとおりです。
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放射性ヨウ素シミュレーション/福島・茨城・栃木・群馬
特に気になって見たのがNHK教育「ETV特集『ネットワークでつくる放射能汚染地図(5)埋もれた初期被ばくを追え』」でした(22:00~23:30)。この番組は、2つの方向から放射性ヨウ素被曝の問題を追求する人々を取材していました。(1)実際に被曝した人の被爆線量計測から、人々の被曝状況へと迫ろうという方向と、(2)原発事故により放出された放射性ヨウ素の大気中の動向をシミュレーションすることにより人々の被曝状況へと迫ろうという方向です。
(1)の方向を追求していたのが、弘前大学被ばく医療総合研究所の床次眞司・教授を中心とするチーム。原発事故後、浪江町津島地区に居た65人を調査、うち50人から放射性ヨウ素(I-131)を検出。最大値は2233Bq(ベクレル)というもの。これを甲状腺が受けた被曝線量に換算すれば、経口ならば93mSv、吸入なら87mSv、というものでした。ミスター100ミリシーベルト“山下俊一”なら、「ハイ、規定値クリア、大丈夫です」と言うでしょうが、床次・教授「看過できないレベル」としました。なにしろ、これが子供なら、甲状腺はより敏感に反応しますので、はるかに重大な被曝に相当します。次のような相当値が提示されていました。
成人 | 4歳児(幼児) | 1歳児(乳児) | |
経口(飲食) | 93 | 434 | 811 |
吸入(呼吸) | 87 | 400 | 753 |
白血球の減少が起きるのが250mSv、500mSv超えるとリンパ球および顆粒球が減少、急性放射線障害の起きるのが1000mSvというめやすもありますから、これはもちろん「看過できないレベル」でしょう。
(2)の方向を追求していたのが、海洋研究開発機構・滝川雅之・主任研究員、東京大学大気海洋研究所・鶴田治雄・特任研究員、元理化学研究所・岡野眞治氏のグループ。放射性セシウムとは異なる放射性ヨウ素の拡散状況を、データとシミュレーションから追求していました。
シミュレーションの一部をデジカメで撮影し、並べてみました。

福島原発から北西方向のセシウム汚染地帯とは別に、南方向に放射性ヨウ素汚染地帯がある(あった・・・放射性ヨウ素は半減期が短いので、既にほとんど消滅している)ことがわかります。その地域は、いわき市から、茨城・栃木・群馬という北関東全域へと広がる、広大な地域であることが解ります。
これで実際はどの程度の被曝をすることになるのか、このグループに新たに加わった被曝推定の専門家である茨城県立医療大学・佐藤斉・准教授が、今後分析していく、と番組ではなっていました。
その結果が(1)のチームの結果と繋がるとき、放射性ヨウ素汚染の実態が明らかになっていく、ということでしょう。
さてしかし、気の短い当ブログ主としては、分析結果が出るまで待っていられません。ちょっと検索し、考えてみます。
「よくわかる原子力」というホームページによれば、「大気中の放射性ヨウ素が4,200Bq(べくレル)/m3 の場合24 時間その空気を吸入することによって小児甲状腺の被ばく線量が100mSvとなると予測されます」となっています(“く”は原文のまま)。
4200(Bq)×24(時間)=100800 (≒10^5) ですから、図中の赤く示された地点では、1時間、その濃度の空気を呼吸しただけで、小児は100mSv以上の被曝をすることになります。黄色い地域でも、放射性プルーム(放射能雲)が通過する間に数十mSvの被曝をする可能性があります。ICRP勧告の年間の人為的放射線許容量1mSvといった数字と比較すべくもない、高い被曝量と言えます。なおもちろん、ICRP勧告自体、甘々だという批判もあり、あまり信用できたものではないので、事態はきっともっと深刻です。
【PAZ・UPZ・PPA】被災参考図: 志賀原発(金沢市・富山市)
国は、UPZ(緊急防護措置区域)を30kmと指定しています。しかし、国のこの30kmという指定は極めて便宜的なもので、はっきり言って根拠はありません。実際、この地域指定を決定した時と比較して、安定ヨウ素剤服用基準は2倍に厳格化されているのに、一向に地域指定変更は検討されていません。その名も、意味づけもズバリの「放射性ヨウ素防護地域」(PPA)、“安定ヨウ素剤服用の必要な地域”、についてさえです。そもそも、UPZ・30kmというのは、鬼ごっこの安全地帯のように、「この線越えれば大丈夫」といったものではなくて、経済的・行政的理由によって歪められ、極めて縮小された範囲指定に過ぎないということを忘れてはいけません。実際その外側も、甘々な国の基準においてさえ、PPAなのですから。
まずは志賀原発で福島級の事故が発生し、放出された放射性プルーム(放射能雲)が、金沢市方向へ向かったとします。汚染がどの様な範囲に広がるのか、福島原発事故の放射能汚染地域を地図上で重ねあわせてみたのが以下の図です。この際、留意しておくべきことは、次の通りです。
1. 福島では、放射能汚染は阿武隈高地を越えて広がり、奥羽山脈に突き当たって120度程度曲がった。従って、多少の高地は越えて広がるし、曲がりは伸ばして想像する必要がある(風が通常それに沿って吹く山脈などなければ)。次の2つの図を見比べると、伸ばすとどうなるか、状況の見当がつくと思います、(図1)、(図2)。
2. 滋賀県のシミュレーションを見ると、地形・気象条件次第であろうが、福島県の場合よりも放射能汚染はより遠くまで到達する可能性が大きい(福島は放射性汚染物質が広がりにくい地形・気象条件にあったかもしれない)。
より詳しくは、SPEEDIなどによる、しっかりしたシミュレーションが必要となります。

図は、群馬大学早川教授作成の「放射能汚染地図(五訂版)」(Adobe Illustrator CS1版)から、汚染状況のレイヤーを抜き出し、回転し、Kenmapで作成した白地図に重ねてみたものです。
金沢市は所により4μSv/h以上汚染されるという、深刻な状況が考えられます。この汚染地帯の曲がりがまっすぐに伸びた場合、福井市あたりでも1μSv/h以上の汚染地域が発生しそうです。また、この図のままでも富山市に2μSv/h以上の汚染地域が発生しています。
次に、放射能汚染地帯が富山市に向かった場合について作図してみたのが次の図になります。
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長崎から大分まで真っ赤っ赤/玄海原発シミュレーション、と川内原発
九州大学応用力学研究所・竹村俊彦・准教授による、玄海原発が3.11福島級の事故を起こした場合のシミュレーション結果が下の図です。NHK九州ローカル番組、「特報フロンティア『震災から1年 原発事故に備えよ』」(3月9日午後7:30~7:55)で紹介されていましたが、その後、西日本新聞でも紹介されました。赤い部分が、福島原発で避難が必要となった放射能汚染濃度相当とのことです。西風に乗って東へと向かった汚染地帯、福岡県を横断し、大分県の国東半島でも、避難必要な濃度を保っています。

(西日本新聞5月11日朝刊)
川内原発については、次のようでした。

(西日本新聞5月11日朝刊)
NHK九州ローカル番組、「特報フロンティア『震災から1年 原発事故に備えよ』」という番組については、佐賀県について、“国に先駆けて防災計画を立てた先進的な佐賀県”といった位置づけがなされたりしているので、それで良いのかと、突っ込みたくなる所がいろいろありました。
それでもいろいろと興味深い場面があります。
福岡市の担当者の談話、「(国や県と連携してやらなければ148万都市の避難なんて出来ないので)スピード感がないと批判を浴びるかもしれないが、いろいろ課題があるので手順を踏まざるをえない」と、当ブログの批判に対する言い訳のようなことを言っているのは笑いましたが・・・いや、笑い事ではないのですが。まあ、誰が見ても(たぶん本人が考えても)、グズグズしているので、あちこちから同じようなツッコミがあるのでしょう。
それにしても、福岡県・消防防災課の山田哲生・主幹のコメントが、ある意味秀逸でした。
「40、50キロ圏に対応しなくてはいけない/非常につらい/正直言って、(福岡市148万人は)県や市町村が避難してくれといえるレベルではない」
それはそれはお気の毒に、さぞおつらいことでしょう、じゃなくて・・・あなたにつらがられても何の役にも立たないわけで・・・
つまり、玄海原発は、そもそも事故対策が不可能な原発だということでしょう。救急が専門の番組コメンテーターは、だから国に提言して、国レベルでの対応が必要・・・という、なんだか訳のわからない方向へと話をもっていってしまいましたが、誰が考えても(国が対策を立てたところで)無理なものは無理、でしょう。玄海原発はそもそも存在してはいけないのです。
【PAZ・UPZ・PPA】UPZも拡張必要: 志賀原発
あくまで概算ですが、5km、30km、50kmの各地点で旧基準の100mSv(ミリシーベルト)の放射性ヨウ素が検出された場合、そこからどこまで遠ざかれば(原発から離れれば)、新基準の50mSvまで低下するのか、計算して見ました。8km、50km、80kmというのが得られた結果でした。UPZ拡張必要域は、これまでのPPA(50km圏)と一致してしまいました。地域指定をこの程度に変更する防災指針の改訂が望まれます。
さてしかし、原子力安全委員会が防災対策地域指定を拡張をすることがあるのでしょうか。現状では、かなり怪しく見えます。
我々としては、とりあえず具体的に、どの地域が該当するのか、理解しておく必要があるでしょう。自ら安定ヨウ素剤を用意するか、行政に働きかけるか、はたまた引っ越して逃げ出すか、人により取る手段は様々でしょうが、とりあえずは現状を認識することが大事でしょう。
今回は石川県の志賀原発について作図してみます。この原発も風向き次第で、被害を金沢市方向に及ぼす可能性もあれば、富山市方向に及ぼす可能性もある原発です。国はこれまで立地自治体の意向しか問題にしていませんでしたが、立地自治体と想定被害対象自治体が一致しない場合、福島原発事故の後でも、そういった不合理な立場を押し通すのか、注目しておく必要があるでしょう。

書きこまれた同心円の意味については、こちらを御覧ください。
金沢市と富山市は、志賀原発からほぼ同じような距離にあります。現行の区割りから言えば、金沢市の一部だけが現PPA(50km圏)放射性ヨウ素防護地域にかかっている状況ではありますが。
さてところで、当ブロクで何度も言及してきたように、滋賀県は、独自シミュレーションの結果、UPZを最遠地点42kmに設定しました。この42kmという数字と、この地点を100mSv/hとした場合、さらにどこまで遠ざかれば被曝医療分科会の新基準50mSv/hまで被曝線量が低下するかを概算した約70km(計算結果は68.91kmとなりましたが、もともとそれほどの精度はない概算結果ですので70kmとしておきます)という数字(UPZ拡張必要域)で、再度描き直してみた図が、次のとおりです。
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どうなる? 玄海原発1号機
「玄海原発:圧力容器の『健全』記述を保安院が削除」(毎日新聞HP)
原子力安全・保安院は、3月6日に玄海原発に関する専門家意見聴取会を開きました。その際、提示された資料では、玄海原発1号機について「確認されれた資料などから健全性は確保されているとして良いか」、と、疑問形で安全性が記されていたそうです。2月22日の専門家意見聴取会では「圧力容器の健全性は確保されている」(毎日新聞HP)という見解を示してましたから、原子力安全・保安院の安全性に関する評価が一段低下した印象を与えます。
しかし他方、「前回の見解を撤回するわけではない」とも、石垣宏毅・高経年化対策室長は言っているそうですので、報告取りまとめの段階でごまかそうとしているだけかもしれません。
さてところで、具体的には何が問題となったのか、3月5日の朝日新聞に、もう少し詳しい、聴取会へ向けての事前説明があります。

(朝日新聞西部本社版3月5日朝刊)
「(九電は)鋼材の不純物の組成や電子顕微鏡などによる試験片の観察結果など、未公表の詳細データを次々と提示し『異常は見られない』と強調した。・・・略・・・/保安院も追認し・・・略・・・健全性は確保・・・略・・・。電力会社でつくる電気事業連合会は、予測の計算式を『実態』に合うよう見直す案を提出。今月6日の聴取会で審議される予定だ。」と記されています(強調、当ブログ)。
つまり、「予測の計算式を『実態』に合うよう見直す」、言い換えれば、予測が外れているけど問題ないのだと思い込む方法を提出すると言うのです。
この記事には、このことに関する井野博満・東大名誉教授のコメントも載っています。「異常値の原因がわからないまま予測の計算式を見直しても『つじつま合わせ』になりかねない」、ごもっともです。
「・・・試験片を測定、分析しているのは、電力業界と関係の深い電力中央研究所などに限られている。・・・略・・・(専門家は)試験片そのものを大学の研究者に提供し徹底分析することや、原子炉内に残る試験片を取り出して追加調査することを求めているが、九電側は応じていない。」とも、記事には書いてあります。これまで様々な隠蔽工作を行なってきた九州電力に、資料を身内に抱え込んだまま「健全だ、安全だ」と言われても、どうすればその主張を信じることができると言うのでしょう。
そもそもこの肝心の試験片について、九電、過去のものを抹消(「廃棄」)してきた前科もあります。
さてこんな状態で原子力安全・保安院、月内にまとめられる審査案で、どういう結論を出すのか?
【PAZ・UPZ・PPA】被災参考図: 伊方原発(松山・高知・広島・大分)
国は、UPZ(緊急防護措置区域)を30kmと指定しています。しかし、国のこの30kmという指定は極めて便宜的なもので、はっきり言って根拠はありません。実際、この地域指定を決定した時と比較して、安定ヨウ素剤服用基準は2倍に厳格化されているのに、一向に地域指定変更は検討されていません。その名も、意味づけもズバリの「放射性ヨウ素防護地域」(PPA)、“安定ヨウ素剤服用の必要な地域”、についてさえです。UPZ・30kmというのは、鬼ごっこの安全地帯のように、「この線越えれば大丈夫」といったものではなくて、経済的・行政的理由によって歪められた、極めて縮小された範囲指定に過ぎません。実際その外も、甘々な国の基準においてさえ、PPAなのですから。
まずは伊方原発で福島級の事故が発生し、放出された放射性プルーム(放射能雲)が、東へ向かったとします。汚染がどの様な範囲に広がるのか、福島原発事故の放射能汚染地域を地図上で重ねあわせてみたのが以下の図です。この際、留意しておくべきことは、次の通りです。
1. 福島では、放射能汚染は阿武隈高地を越えて広がり、奥羽山脈に突き当たって120度程度曲がった。従って、多少の高地は越えて広がるし、曲がりは伸ばして想像する必要がある(風が通常それに沿って吹く山脈などなければ)。
2. 滋賀県のシミュレーションを見ると、地形・気象条件次第であろうが、福島県の場合よりも放射能汚染はより遠くまで到達する可能性が大きい(福島は放射性汚染物質が広がりにくい地形・気象条件にあったかもしれない)。
より詳しくは、SPEEDIなどによる、しっかりしたシミュレーションが必要となります。

図は、群馬大学早川教授作成の「放射能汚染地図(五訂版)」(Adobe Illustrator CS1版)から、汚染状況のレイヤーを抜き出し、回転し、Kenmapで作成した白地図に重ねてみたものです。
松山市は深刻に汚染されそうです。さて、この汚染地帯の曲がりがまっすぐに伸びた場合、高知市あたりでも2μSv/h以上の汚染地域が発生しそうです。また、この図のままでも広島市に1μSv/h以上の汚染地域がぽつんと発生しています。
次に、汚染最濃厚地帯の先が高知市に向かった場合について作図してみたのが次の図になります。
【PAZ・UPZ・PPA】被災参考図: 伊方原発(松山・高知・広島・大分) の続きを読む