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原発再稼動より、普通の火力発電新設の方がよほど安い現実

2014-01-20
 さて、昨日のようなことを書くと、原発推進派からは、「数字が違う、原発は燃料費が安いので、既設原発についての発電費用は遥かに安くつく。柏崎刈羽5号機の19.7円/kwhというのは、建設費込みの初期運転コストで、その後は発電費用、遥かに安くなる」といったことを言われるでしょう。“燃料も既に買い込み済みだし”とか。
 まあ、それでもまず一点は確認できるわけで、「原発新設は元が取れない」わけです。
 この点がわかっているのか、単に世論対策でそう言っているだけか、安部首相も“原発の新設・増設は考えていない”と言っているわけですが・・・

 「大間、島根3号は推進 原発問題で安倍首相」(msn産経 1月19日)

 大間と島根3号機は、「新増設のうちには入らない」そうです。まあ特に、島根3号機は既に設備はほぼ完成しているそうですから、元が取れる(火力新設より安く発電できる)のか?

 では、原発の運転費用はそんなに安いのでしょうか。
  柏崎刈羽6号機 11.24円(耐用年)
  柏崎刈羽7号機 10.37円(耐用年)
      (大間 11.55円(耐用年))
 なんて数字があります → ここ とか ここ とか ここ
 建設費をどうやって払っていくかの方法で、普通に減価償却計算したのが「初年度」方式で、この数字が「柏崎刈羽5号機19.7円/kwh」です。これに対し、耐用年いっぱい原発を動かしたとして各年に建設費を割り振り、建設費を無視可能なくらいに薄め、できるだけ原発発電コストを低く見せるように操作した数字が「耐用年」方式です。
 “普通に減価償却しないのはゴマかしだろう”、というのが、普通、脱原発派の言うこととなっていますが、今回はむしろ、建設費をゴマかした場合の運転費用がこんなものということで、好都合に利用させていただきましょう。燃料費がいらないとか、なんだかんだと言ったって、既存原発での発電でも、最低限(電力会社が計算しても)この程度、コストがかかるわけです。
 朝日新聞が原電の電力販売価格として計算した結果も似たようなものとなっています。

発電コスト朝日
(朝日新聞西部本社版朝刊 1月20日)

 さてそれなら、既存原発を再稼働した場合の発電コストは10円~11円/kwhということで良いのでしょうか?
 とんでもない!! このままでは無保険状態で車を運転している状態です。事故の可能性のある機器を操作して商業活動を行うわけですから、適切な保険を用意することが必要です。原発には、一応、強制保険として「原子力損害の賠償に関する法律」(原賠法)がありますが、これが全く役に立たなかったことは福島事故で証明されています。原発の事故保険を販売している保険会社はないか、あったら法外な値段となりますので、引当金の積み立てという形になるかもしれませんが、運転に応じて、保険金を積み立てるのが健全な経営となります。それをしないというのは、リスクを周りの者(あるいは国)に押し付けることであり、福島の後では、そんな暴力的なこと、許されるはずもありません。
 適正な保険金額を支払うと原発の発電コストはどうなるのか? 保険金の金額は、これまでの事故において支払った賠償金・事故処理費用によって査定されますから、それを考えると、

 「新潟県にある東京電力柏崎刈羽原発の発電単価は、(福島事故の)損害賠償費用4.1兆円を考慮した場合は13~15円に、10兆円を考慮した場合には19~21円」(金子勝氏計算)

 です。
 この計算時点では「損害賠償費用4.1兆円」とか、当時の電力会社の試算値でも計算しているわけですが、事故処理費用、“現在既に賠償金だけで3.9兆円支払い済みでまだいくらでも増える予定”(日経新聞2013年12月26日)、“既に政府が東電支援に支払った金額4.8兆円”(exceteニュース 2013年12月28日)、“政府の楽観シナリオでも11.3兆円、悲観シナリオなら54兆円”(週刊ダイヤモンド 2013年12月21日)というところです。
 このほか、まだまだ原発再稼動により追加的に支出する必要のあることもありますが(地元対策費とか、核のゴミ増加→バックエンド費用増大など)、少なくとも適正保険費用を考えるだけで原発再稼動によって生産される電気の価格、20円/kwhを下回ることはないと考えられます。電気料金としては、無保険運転すれば10~11円程度の発電源として価格設定することも可能でしょうが、この無謀運転のつけ=差額はリスク負担という形で、結局我々が支払っている(支払う)ことになります。
 さて一方、LNG火力で10.7円、石炭火力なら9.5円です(上掲、朝日記事)。原発電力、無保険状態で無謀運転したって、これより特に安いというわけではありません。しかもその無謀運転価格には、再稼働すれば増える核のゴミの処理費が計算に入っていません。
 原子力は最早、明らかに高くつく発電です。原発を再稼働する経済合理性はありません。


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