何を仕込んでくるのか、電気事業法改正案・閣議決定
2014-02-28
政府は電力小売を自由化する電気事業法改正案を閣議決定しました。「電力小売り、16年に全面自由化 電事法改正案を閣議決定」(日本経済新聞HP 2月28日)
今国会で法案通過しても実施は2016年ということですから、まずは時間稼ぎをしているわけですが、それでも小売自由化になれば、影響は大きいでしょう。利用者としては、原子力発電を行っていない電力会社の電気を選ぶことができるようになります。(例えば既に城南信用金庫→「『原発に頼らない安心できる社会』実現のため 原発を使わない電力会社への契約切換を実施(平成23年12月2日)」)。今までは大口・業務用だけでしたが、各家庭でも電力会社を選べるようになります。
こんなこと、あの、安倍政権がしちゃうのか?? 何か実効性を骨抜きにする仕掛けが施されている??
実際、単純に価格競争したら、金食い虫の原発を抱えている既存電力会社に勝ち目はないはずです(城南信用金庫なら、「電気料金自体も、2010年度の年間2億円から1億9千万円と、約5.5%の節約ができる」そうです)。そんなことになったら原発依存政治資金に大きなダメージが及んでしまう!!
まあ、どんな仕掛けが施されているか、国会審議の中でそれはいずれ明らかになり、ある程度は修正されると、期待しておきましょう。既に電力を敵に回している議員も結構いますから、その人たち、ちゃんと戦わないと、潰されます。
それはともかく、電力自由化、この動きを睨んで、既に多くの企業が走りだしています。「経産省によると、(新電力・PPS)2008年9月に25社、2011年3月時点で46社だったのが、2012年3月には52社にまで増えた」という状況です。
一番皮肉なのは、原子力にしがみつく東京電力から外に出た技術者、電力に再参入、古巣と勝負です。
「新電力で成長、東電出身者に託す 自由化にらむVB」(日経新聞HP 2月11日)
神戸市で省エネルギーサービスをやっていた洸陽電機、地熱発電です。それにしても、地熱発電というのは、昼でも夜でも発電一定、原発と同じ特性を持っている発電方式ですから、ベースロード電源に最適、まさにガチンコ勝負です。
エネット、サニックス、ダイヤモンドパワー、日産自動車に加えてソフトバンク、それに「エナリス」に「いちごグループ」?? なにがなんだかよく判らないけど、とにかくいろいろ新電力参入です。(サニックスや日産自動車、ソフトバンク、あるいは、昨日の書き込みで触れた、JX日石日鉱とか、東京ガス、新日鉄住金、日本製紙、丸紅なら、もちろん聞いたことある会社名だけど・・・とにかく、いろいろです。)
ラケット屋さんのヨネックスも、原発屋さんのGEも風力で、参入です。あ、ヨネックスは風車の羽根を売るだけで、自分で発電するわけじゃないですね・・・。
なんと柏崎刈羽原発7号機本館を建設した清水建設なんて月面にソーラーパネルを設置です→「月面にソーラーパネルを設置! 清水建設の構想に海外紙が期待(ただし読者は冷静)」

(清水建設HPよりスクリーンショット切り出し)
あ、はい、「読者は冷静になってください」でしたか・・・。
まあ、とにかく、政府の電力自由化の動きはちゃんと実施されるのか、注視して行く必要があるでしょう。
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追い詰められる原子力産業。エネルギー基本計画は、早く泥舟から脱出すべき!!
2014-02-27
原子力産業の終わりは近いようです。なんせ、アメリカでは太陽光発電単価が11円/kWhとなり、6円/kWhを目指そうというご時世です、どうやったって、原子力に勝ち目はありません。本日のニュースからです。
「仏原子力大手アレバ、3期連続の最終赤字」(日経新聞HP 2月27日)
親方三色旗な実質国営原子力企業アレバ、原子力で黒字を出すのは極めて困難な状況です。
手軽にやるなら火力でコンバインドサイクル発電、じっくり取り組むなら太陽光発電、送配電網の体制づくりが出来るなら風力、と、今や原子力よりも安価な発電方式が目白押しですから、普通に経済競争すれば原子力発電に生き残るチャンスはありません。
そんなこと百も承知でありながら、原子力への政策加算で儲けようとする電力会社と、そこから利ざやを中抜しようとする政治家、意地汚いにもほどがあります。要するに原子力をネタに国民のフトコロから金を掴みだそうというのですから(地域独占と総括原価方式です)、けしからぬ連中です。
それにしても、原子力より安価な発電方式、使えば実際コストカットができて、とりあえず経営にプラス、ということで、電力会社、「これをやらない手はない」んですね。
「東北電、3期ぶり復配 14年3月期連結業績予想も上方修正 」(日経新聞HP 2月27日)
「水力発電所や効率を高めた火力発電所の稼働を増やすことで燃料費を減らすことも上方修正の一因となる」(上掲リンク先)のだそうです。いや、あまりに当たり前の話です。要するに、ちゃんとコストカットに取り組めば、(無駄な原発維持費を払っていても)、現在の電気料金で充分に黒字が出るのです。
いつまでも原発にしがみついて赤字計上し続けている落ちこぼれもいますが。
「四国電の経常赤字、120億円に縮小 値上げ効果14年3月期」(日経新聞HP 2月27日)
ま、それでも赤字縮小傾向ではあるわけです。
で、要するに、普通に現在の技術水準で火力発電(コンバインドサイクル発電)すれば、原発保有電力会社より割安で発電できるのですから、これは事業として成り立ちます。差額で儲けが出ます。これは「放っておく手はない」でしょう。

(日経新聞HP「JXエネ、家庭に電力 火力新増設で異業種最大級/2030年までに3倍の400万キロワット」 2月27日)
異業種企業、続々と発電事業に参入です。原発1基、100万kW程度ですから、JX日鉱日石エネルギーの400万kWは原発4基分、新日鉄住金の300万kWは原発3基分、東京ガスの100万~300万kW増強路線は原発1~3基分です。これだけで8~10基ぶんです。
重要な点は、これらの発電所から供給される電気、今より安くなる予定だということです。というか、そこに勝機を見て、異業種が参入してくるわけです。
こんな状況下で、なんで政府案のような「エネルギー基本計画」、恥ずかしげもなく出せるのか。いつまで原子力の泥船に国民を乗せようというのか。
簡単に言えば、エネルギー基本計画は次のようになるべきです。
短期・・・火力発電への異業種企業の呼び込み(規制緩和・補助金等)と老朽化した石油火力発電所のリプレースメント。原子力発電への無駄な投資をやめさせること(総括原価方式の廃止、もしくは計算式見直し)と、速やかな廃炉作業促進。核燃料サイクル事業の即時停止。
中・長期・・・再生可能エネルギーの開発・普及。メタンハイドレート等の新規エネルギーの開発。
短期と中・長期の課題をごっちゃにすると、電力改革を遅らせる牛歩戦術になってしまいます。
ま、安倍政権だからな~、国民全部泥船に載せて、みんなでお陀仏なんだろうな~。
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どうしたもんだい、東京電力・エネルギー基本計画
2014-02-26
まずは東京電力・原発トラブル関連ニュース、本日分です。「浄化装置で警報、処理停止=汚染水対策の「切り札」-福島第1」(時事通信HP 2月26日)
「汚染水流出「極めて稚拙」=福島第1、東電対応に批判-規制委」(時事通信HP 2月26日)
「東電の作業管理不十分が原因 柏崎刈羽の燃料棒接触」(47NEWS=共同通信 2月26日)
いや、これ以外にも4号機の冷却停止とかもあるんですが、これは当ブログでは昨日取り上げちゃいましたから、省いています。
で、ま、どこから引用文取ってきてもいいんですが、例えば、「田中俊一委員長は『東電だけがこういうことをしており、安全に対する企業文化にかなり問題がある』と厳しく批判した」ということです。上の見出しにも「極めて稚拙」とかあるように、とにかく東京電力の原発管理・運営体制、ボロボロです。
東京電力については、個別の原発の安全審査なんてする前に、まともな企業かどうか、審査すべきです。
ただ、おやっ、と思ったニュース記事もありました。
「東電次期会長・数土氏『経営の根幹は火力発電』」(読売新聞 2月26日)
外部から送り込まれた東電会長、普通の視点で東電を見ることもあるようです。読売のインタビューに応えて数土会長は言います、「原子力発電所が再稼働しても(国内の電力供給に占める)火力発電の割合は70%程度になる」と。そして、「『・・・日本は韓国より1割ほど高くガスを買っている。日本の電気料金は世界的にみても高く、0・5円でも1円でも差を縮めるのが私の使命だ』と強調した」そうです。
あまりにも当然の話ですが、これが東電会長の口から出てくるとは、驚きです。日本の電力は「高い」、それもわざと高く買った燃料で「根幹の火力」の発電費が釣り上がっているからです。
これに対し原発なんて、実は日本の電気供給に大して貢献してないんですよ。実際、全部止まったって、現在のように、どうってことない。原発が日本の電力に及ぼしている貢献は、総括原価方式で電気料金を高騰させるという、悪影響だけです(これとバランスをとるため、火力発電燃料も高く買う必要がある)。そのくせ、様々な国費を食い、人々に避難訓練だ何だかんだを強要し、事故ともなれば農業・漁業・人々の生活・生命をズタズタにする、とんでもないものです。
あ、そうそう、

(時事通信HP 2月26日 スクリーンショット切り出し)
福島県では震災関連死が今も続いています。県の担当者は単に“仮設暮らしのストレス”とか言っているけど、放射線は老化や、様々な病気の発生率の上昇という影響も持っていますから、それも関係しているんじゃないでしょうか。ま、いずれにせよ、原発事故がなければ、福島だって宮城や岩手程度に、「1年以内」とか「1年超」の死者は減っていたでしょう。ここは、原発事故による死亡者であることに間違いありません。
こんな原発を「ベースロード」だかなんだか、重要なエネルギー源に位置づけようという「エネルギー基本計画」、政府・自民党、狂気の沙汰です。
原発再稼働したところで、経済にプラスの影響なんて、何もないのです。総括原価方式で高くつく電気を供給するだけですから、「国富の流出」を抑えるどころか、日本の産業競争力を削いでいくだけです。
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富山県が志賀原発事故の影響をSPEEDIで検討
2014-02-26
富山県が志賀原発の事故の影響をSPEEDIでシミュレートし、検討しています(2月26日)。
(「SPEEDI による放射性物質拡散シミュレーション結果の概要」からスクリーンショット切り出し)
「外部被ばく実効線量で、24ケースとも10mSv未満/県内において、初期対応段階における避難の可能性が低い」(上掲“概要”リンク先)そうです。よかったですね(投げやり)。ただし「甲状腺等価線量(小児)で、100mSvを超える線量がUPZ圏内外の一部の地域で計測/放射性ヨウ素の吸入による甲状腺被ばくへの対応が必要(屋内退避・安定ヨウ素剤の予防服用)」とのことです。しっかり対策してもらいましょうね(投げやり^2)。
いや、現実問題として、これで「安心して」富山県に住んでいられるはずはないわけで(福島県を見よ!!)、なんで原発再稼働を考えなきゃならん?
原発再稼働したところで、輸入燃料費は多少減るものの、(総括原価方式のため)電気料金は高止まり、結果として日本の産業競争力を削ぐ(貿易赤字は悪化する)だけなんですけど。誰も得しないんですよ、原発関係者以外。
そんなことのために、なんで日本、国を挙げて危険と向かい合わなければならないのでしょう!!
(リンク)
上掲“概要”の続き1
上掲“概要”の続き2
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取り残される日本・・・この「エネルギー基本計画」じゃ、日本破産だ!!
2014-02-25
なんか今日はいろいろニュースが入ってますが、まずはこれでしょう↓「原発『重要』と位置付け=エネ基本計画、政府案取りまとめ」(時事通信HP 2月25日)
政府は本日、「エネルギー基本計画」案を取りまとめたとのこと。「原発を『重要なベースロード電源』と位置付け、原子力規制委員会の安全審査に合格した場合は再稼働する方針」だということです。
原子力ムラのメンバーがやっている内閣ですから、こういう結論に達するのは当然と言えば当然、かつ、かつて経産省幹部が言った「書きぶりは変わっても政策は変わらない」でもあります。
しかしこんなことしてたらホント、日本は没落しますよ。斜陽産業の原子力と心中です。例えば5日ほど前のニュースと見比べてみましょう。
「米国の太陽光発電、コストが電気料金平均を下回る」(日経新聞HP 2月20日)
アメリカでは、「電力事業者による大規模太陽光発電システムの発電コストが、・・・略・・・、2013年末には11.2米セント/kWh(約11円/kWh)となった」とのことです。(結果、「これで米国の電力料金の平均価格12米セント/kWhを下回っ」ています。)
日本政府のコスト等検証委員会では、太陽光発電(メガソーラー)は、2010年で30.1~45.8円/kWh、2030年になっても12.1~26.4円/kWhだから(56ページ)原発より高いですね~、となっていましたが、なに、このアメリカの発電単価、既に11円/kWhです。
さらに、アメリカじゃシェールガスやオイルを使った発電とか、他にも有望な発電方式がありますから、こんな数字では全く満足してなくて、太陽光発電の発電単価を「2020年までに米国での他の電源に対して十分な競争力がある6米セント/kWhに下げるという計画」(上掲、日経記事)だそうです。6円/kWhです。
これに対し日本では、最も甘い政府試算で、原発発電単価、「1kwh当たり8.9円以上となる。事故費用が1兆円増加するたびに0.1円コストが上昇する。この8.9円/kWhはあくまで下限値であり、損害額が10兆円ならば9.3円/kWh、20兆円ならば10.2円/kWhとなる」です(リンク先47-8頁)。自然エネルギー財団の試算なら原発発電単価17.4円/kWh、原発建設費の減価償却が済んでいる再稼動でも朝日新聞の試算で11.1円/kWhです。
最後の朝日新聞の数字は、日本原電の売電価格実績を持ってきたものですから、既に日本の原子力発電は(原発建設費などを差し引いてなお)アメリカの太陽光発電と同等の発電単価ということになります。原発再稼働したって何の意味もないじゃないか・・・核廃棄物が増えるだけ。太陽光発電は、今後、値下がりを続けるはずですが、原子力発電はまず福島の賠償金、そして安全対策の充実や、まだ計上されていない核燃料再処理費、さらに、実際に始めてみれば予定を大きく上回るだろうと言われている廃炉費用など、これからコストはウナギ登りと考えられます。それでも原子力、というのが安倍政権の電力政策です。
終わってます。完全に日本の電力政策、終わってます。
終わりついでにこれも↓
「原賠機構法改正案を了承=村上氏、反対唱え退席-自民総務会」(時事通信HP 2月25日)
株主や経営陣の責任を何ら問わないまま、税金で東電を救済する法案です。反骨・村上水軍、多勢に無勢の抵抗ですが、原子力ムラ・自民党の中では単に無視されて終わりです(もうちょっとしっかりしろ~、河野太郎!!)。
政治の場が、こんなどうしようもない状態なら、福島の現場も腐ってます。
「弁2個は最初から『開』に…ずさんな管理体制」(読売新聞HP 2月24日)
2月19~20日に汚染水110トンが漏れた事故、原子力ムラ身内の読売新聞からさえ、「ずさんな管理」と非難されてます。
その上、本日は、
「4号機プール冷却停止=ケーブル破損関連か-福島第1」(時事通信HP 2月25日)
核燃料取り出し作業(“クレーンゲーム”)中の4号機、外の工事で電源ケーブル引きちぎって冷却停止です。もうほんと、自爆テロとしか言いようがありません。
こんなバカバカしいこと、いつまでやってるつもりだ、自民党、東京電力。
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これじゃ衰退する日本経済・・・経済人も経済記者も「国富流出」!!(2)
2014-02-24
(前回からの続き)例えば経団連会長の米倉弘昌、“原発再稼動で貿易赤字の解消を”みたいなバカなことを言います。これがどこまで己の馬鹿さ加減を晒していることになっているのかは前回書きましたが、まあ、原子力ムラの一員ですから、そんなもんでしょう。経済界を代表するという立場でもあることを考えれば、こんなバカなこと言っていいのか、というのはありますが。それに対して、明らかに単純にバカなのがマスコミ、貿易収支、経常収支が赤字で「国富の流出」とか言ってます。
「燃料コスト『9兆円超』の衝撃…原発停止で疲弊する日本、国富は流出する」(msn産経ニュースwest 2013年9月6日)
3年間で9兆円というコスト計算もおかしいんですが、そのへんは産経ニュース(年額2兆6千億円となっています)でも勉強してもらうこととして、「国富の流出」って、いったい何世紀の経済学を学んできたのか??
ちょっとでも経済学を齧ったことのある人には釈迦に説法になっちゃいますが、これ「重商主義の誤謬」の一言で終わる、無知蒙昧を絵に描いたような議論です。大航海時代の幕開け以降、ヨーロッパ諸国の経済運営は貿易で儲けること、この一点に集中し、諸国は金を貯めまくったが、ちっともうまくいかなかった、というお話です。だって、貿易で物を売りまくってお金を儲けるということは、使い道のある有用なもの(商品)を他人に渡し、自分は使い道のない金(当時は実際に金だった)を抱えこむだけ、なんですから。溜まった金を見てニヤニヤしていたって経済は発展しません。貿易収支や経常収支は、それ自体では何の意味もありません。しかも今や貨幣として金も使ってないので、眺めるのは単に帳簿の数字でしかありません。
ちょいと日本の貿易黒字(輸出額-輸入額)の推移を見ておきましょう。「貿易収支」や「経常収支」となると統計の取り方がどうのこうのとなって、古いデータが使えなくなりますので、単純に輸出額と輸入額の差し引きです。

(データソース: 1950年~2012年は財務省HPから、2013年は財務省速報から)
すごいですね~、1990年からの“失われた10年”、さらに10年プラスして“失われた20年”、ずっと貿易黒字ですから、「国富の流出」的観点から言えば“黄金の20年”です。国富溜まりまくり、日本経済、絶好調だったことになります。
現実は、外国に売るものはあっても外国から買うものはなく、一部では貯金を貯めこんだ人がいるものの、多くの人にとって生活が豊かになった実感などない、失われた20年です。生活が豊かになるのは外国から買った時、すなわち、貿易収支が悪化した時です。ここ間違えちゃいけない。
え?“原発代替燃料を買い込んでも豊かじゃないだろ”ですか・・・あんな危ない原発を動かさずに生活していける、ってのは充分豊かな気分になりますけどねぇ~。(それに前回からの繰り返しになりますが、原発代替燃料費は現在の貿易赤字のほんの一部にすぎません・・・問題はもっと別のところにあります→本記事の最後【おまけ】をご覧ください。)
それはともかく、それじゃ、貿易赤字は何の問題もないかというと、さすがにそうも言えません。アメリカのように覇権国家・基軸通貨国として、貿易赤字をカバーするだけの資金流入がある国ならば、いつまでも赤字でも良いのですが、日本はそうもいかないでしょう。赤字/黒字はともかくとして、金が回り続ける必要はありますから、あまり大きな不均衡(特に支払い能力がなくなってしまう赤字)は、そういつまでもやってる訳にはいかないでしょう。とりあえず当分は、外貨準備の状況、国外経済への依存度の低さ、などから慌てる必要はありませんが。
それではどうやって貿易収支の赤字を改善するのか、ここでとんでもなく間違っているのが、原発絡みの「国富の流出」論です。
エネルギー政策、日本は何をやれば良いのか、注目点は下図「日本のエネルギー構成」、1950~1970年の20年間です。

(『原子力百科事典ATOMICA』から「日本の一次エネルギー供給構成と推移 (01-02-02-05)」)
1950年~1970年、石炭(オレンジ)の構成比がグッと下がっていきます。言うまでもなく、石油へのシフトです。国内の産炭地では次々と閉山が進みます。福島ではフラガールたちが踊りだし、筑豊では麻生一族が石炭からセメントに乗り換え、夕張ではメロンが栽培され出します。なお、この後も20%程度、石炭は使用され続けていますが、すべて輸入炭です。
「国富の流出」論から言えば、国産エネルギーを放棄して、外国産エネルギーにシフトして行くわけですから、とんでもない間違いをしていることになります。しかもこの時期、日本は貿易赤字状態ですから(上の方の図参照・・・数字は小さいですが、ほぼマイナス側です)、少しでも「国富の流出」を抑えなければならない時期なのに、ということになります。
でも日本は国産石炭から、外国産エネルギーへの転換を図った。そして経済成長を達成し、その後の貿易黒字に結びつけています。
これ、すごく、あたりまえのことです。使い勝手や効率の悪いエネルギー源から、より使いやすく効率の良いエネルギー源に乗り換えることにより、産業競争力が付いたのです。問題はエネルギー源単品の貿易赤字/黒字じゃないのです。貿易収支を黒字にするのは、日本全体の産業競争力の高さなのです。
この時期の日本のエネルギー政策は、舞台で踊ったり、セメント焼いたり、メロン栽培したりしていればいい人まで、石炭で食わせることをやめた・・・合理化を進めたのです。斜陽化した炭鉱を切り捨て、ムダを省いたのです。
つまり、現在、貿易収支・経常収支の赤字が問題なら、エネルギー政策として議論すべきは、燃料の輸入の多寡ではありません。エネルギー供給の効率化、言い換えれば低廉化、もっと具体的に言えば、電気料金をどう下げるかです。1950~1970年よりも遥かにグローバル化が進んだ現在、国産だからなんてことにこだわって高い原料(電気)使っていたら日本の産業、国際競争力なんて付くはずがありません。
原発再稼働派が、ここで、「だから原発再稼動、安くつくから」と言うなら、認識の間違いはともかく、理屈は通ります。しかし、「国富の流出」なんてのは、全くの見当外れです。
経済学の初歩も理解してないやつに経済記事書かせているのが日本のメディアで、それに世論が(ミス)リードされるなら、前回の冒頭の言葉となります → 日本経済は激しく衰退します。なぜなら、日本の経済界、経済記者、人間が激しく無能、パカだからです。
さてそれでは、原発再稼働は安い電気代となるのか? 「安いはずないだろ」というのが、当たり前の見方でしょう。独立系の電力会社(もちろん原発なんて持っていない)に契約変えたら、電気代が3割安くなった、なんてのはざらにある話です。そもそも、福島事故前、原発がフル回転していた状態で日本は世界的に高い電気料金だったのです。八木誠・電気事業連合会会長(関西電力社長)だって言っています、“原発は抱き合わせ販売でないと元が取れない”、と。日本よりもっとコストに厳しいアメリカでは、1979年以降、原発建設がなされていませんでした。先日、そのアメリカで新規原発建設のニュースが入ってきましたが、65億ドル(約6650億円)の資金援助でやっと可能になったものです。原発のコスト問題はまた別に議論しますが、明らかに原発は(効率の悪い=高額電気しか供給できない)衰退産業です。
衰退産業にしがみついた国は衰退します。
【おまけ】

(財務省 貿易統計発表「速報の概要」)
アベノミクスの円安効果で「輸出が伸びた」と、いうことになってますが、それは円が安くなったので円での受け取り額が増えただけです。なんと、数量指数はマイナスになっています。つまり、(円安で)2割引きで売ったのに、日本製品、売上が伸びるどころか、減ったのです(わずかですが・・・2割引セールやった上でです)。
日本の産業競争力、実際、激しく衰退しています。
電力行政で言えば原発がどうのこうのと言っている場合ではありません。電気料金高止まりを狙う既得権益グループ「原発保有電力9社」の暗躍を許さず、抜本的改革、電力自由化を行い、電力価格の引き下げを行う必要があります。
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これじゃ衰退する日本経済・・・経済人も経済記者も「国富流出」!!(1)
2014-02-23
まず結論です。日本経済は激しく衰退します。なぜなら、日本の経済界、経済記者、人間が激しく無能、パカだからです。「経団連会長『原発新設必要になる』 赤字抑制へ『再稼働を』」(日経新聞HP 2月20日)
経団連会長の米倉弘昌、山口県宇部市で行った記者会見で、「1月の貿易赤字が比較可能な1979年以降の過去最大になった理由についても『経済活動の活性化で化石燃料の輸入が増えた』と分析。『安全審査を加速して早期の原発再稼働に努めてもらいたい。そうすれば化石燃料の輸入にストップがかかり望ましいと思う』とも語った」とのこと。
まずデータです。
品名 | 単位 | 数量 | 伸率(%) | 価額(百万円) | 伸率(%) |
原油及び粗油 | 千KL | 18,887 | 5.3 | 1,408,992 | 28.1 |
液化天然ガス | 千トン | 8,179 | -0.6 | 736,517 | 21.4 |
はて、米倉の言では『経済活動の活性化で化石燃料の輸入が増えた』とのことですが、数量を見れば「原油及び粗油」の伸率 5.3%、「液化天然ガス」の伸率は-0.6%です。まあ、「原油および粗油」の輸入はちょっと増えたかもしれませんが、わずかなものです。しかも、「原油および粗油」について、電力に使う比率は、全体のたかだか16%程度です。また、別に原発停止したから輸入が増えたわけではありません(今回データの比較対象、前年同月も既に原発は止まっています)から、ここで原発に言及するのはちょっと無理があるのですが・・・。そもそも原油は、いろいろな燃料やプラスチック原料として、日本の経済活動が盛んになれば輸入が増えるのは当たり前のことで、ここは問題視しても始まりません。
ただし、輸入「価額」は大きく増大していて、それぞれ28.1%と21.4%増です。これは貿易赤字という観点では、ちょっと痛いかもしれません。
これもちろん最大の原因は、「前年同月比:20.2%の円安」(平成25年1月:86.93円/ドル→平成26年1月:104.53円/ドル・・・「平成26年1月分貿易統計(速報)の概要」財務省)です。20%の円安というのは、80円の価値になってしまったお金で、これまで100円払ってきたものを払わなければなりませんから、100÷80=125%ということで、支払価格25%増です。
「原油及び粗油」支払い価額28.1%増、「液化天然ガス」支払い価額21.4%増、というのは、ほとんどが円安の影響で、それ以外の要因は、数量の増加も市場価格の変動も、ほとんど誤差程度の影響しか及ぼしていません。
そもそも、1月の貿易輸入額増全体に対して、「原油および粗油」「液化天然ガス」の寄与度はそれぞれ4.8%と2.0%、単品としては大きいとしても、それ以外(100-4.8-2.0=93.2%)で、全体として輸入増の傾向が強く、これだけ取り上げてどうのこうのという数字ではありません。
さらにその中の一部でしかない、原発代替燃料の、日本経済全体の統計に及ぼす影響は更に小さいものとなります(年額2兆6千億円÷12ヶ月=2167億円/月程度・・・下で計算する円安効果と比較してください)。『早期の原発再稼働に努めてもらいたい。そうすれば化石燃料の輸入にストップがかかり望ましい』(上掲、米倉)って、原発にそんな影響力ありません。
この程度の数字も読めないのが日本の経済界トップ、経団連の会長・米倉弘昌です。
そんなものよりも、日本の貿易赤字、記録更新の最大の原因は、円安です。これはあらゆる輸入品の価格にかかってきます。平成26年1月の輸入総額、8兆429億円、20%の円安がなければ(25%支払いが少なくて良いわけですから)6兆4343億円で済んだはずです。一方、平成26年1月の輸出総額は前年同月比9.5%増えて5兆2529億円ということですので、この9.5%を円安効果と見て差し引けば円安効果抜きの輸出額は4兆7971億円程度と推測されます。輸出入差額(4兆7971億円-6兆4343億円)は、1兆6372億円の赤字となります。
実際の平成26年1月の貿易赤字額、2兆7900億円ですから、差し引き(2兆7900億円-1兆6372億円)、1兆1500億円ほどは、円安効果です。つまり、現在の貿易赤字の40%は、アベノミクスによる円安のせいです。
さてしかし、米倉については、経団連・原発関連企業の代弁者として、自分たちに利益さえあればいいという、いい加減な発言をして恥を晒している人間だとして、原発ムラの論理を受け入れてしまうバカなマスコミ記者連中は自分たちの馬鹿さ加減に恥じるところはないのでしょうか。ここで書いたようなことに関しては、「国富の流出」とか、経済学を勉強したことがある人間なら、バカバカしくて相手にする気にもならないような16世紀的単語を平然と並べる輩がいます。
と、いうことで、本記事には続きがあるのですが、ちょっと書き終わっていませんので、ここから先は明日にさせていただきますm(_ _)m。
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【Cs137の降下】玄海原発だったら(3)北西風
2014-02-22
福島原発の際、季節風の関係で、放射性物質の多くは太平洋方向に飛ばされていると考えられます。しかしリアルタイムで船を出して降下物質の観測をするなんてことはできようはずもなく(被曝の危険もあるし)、データとして上がってこないので、(事故後測定された)陸地に降った放射性物質の状況から福島原発事故の影響を考えがちです。しかし、他の原発で事故が起きた場合、風向き次第では、福島では“海に去った”状況が陸地で再現されることだってあり得ます。
そこで、福島事故の洋上シミュレーションを、他の原発に重ねる、重ねあわせ図を作成してみます。セシウム137に関するシミュレーションの重ね合わせです。原図などはこちらです。なお、原図と現在の状況を見比べてみると、オレンジの領域はほぼ帰還困難区域となり、黄色の領域は半分程度、居住制限区域となると考えられます。
今回は、佐賀県玄海原発についての3回めです。福島事故のシミュレーション図を並行移動した上で、反時計回りに45度ほど回転してみました。今回も冬の季節風のごくありがちな方向、北西風の状況です。佐賀市は壊滅、大牟田市あたりもダメでしょう。

・背景とした地図はKenmapで作成した白地図です。フリーソフト作成者のT. Kamada様、ありがとうございます。
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佐賀県玄海原発
オリンピックどころの話じゃないはず・・・汚染水100トン漏洩、福島第一
2014-02-21
何やってんだよ、日本のメディア!!福島第一原発で2億4千万Bq/Lの汚染水が100トン漏洩、これは重大な放射能漏洩事故なんだけど・・・どこもニュースではオリンピックより小さな扱い。
地球環境と我々の生命・健康への影響を及ぼす原発事故(環境への放射性物質放出量から言って、充分に重大な原子炉事故なんですが)が三面記事扱いって、完全に頭がいかれてるな。
日本から遥か離れた外国でさえ、危機感を抱いて報道してるっていうのに、日本のメディアはお祭り騒ぎのほうが大事らしい!!
CNNも、

NBCも、

VOAも、

BBCも、

New York Timesも、

The Telegraphも、

日本発のニュースが、こんなに揃って取り上げられるなんて、世界的に問題意識が集中しているのに、肝心の“当地の”日本のメディアはさらっと流すだけ。バカか。
この日、汚染水漏洩に先立って100ボルトをつなぐべきところに250ボルトをつないで、なけなしの温度計をパーにしたボロボロの東京電力、既に危機管理能力を喪失しているし、その東京電力に事故管理を丸投げしている日本政府も危機管理能力を喪失しているのだが、なぜ他人ごとのような小記事扱いで終わらせる!!
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再稼動!! 菅直人
2014-02-21
細川・小泉という元首相2人が都知事選で奮戦したのは記憶に新しいですが、こっち↓の元首相も再稼動です。「菅氏、元首相初の質問主意書」(時事通信HP 2月21日)
この記事の記すところでは、「衆院事務局によると、(質問主意書を)首相経験者が提出するのは初めて」とのこと。
そうですよ、菅直人、隠居している場合じゃありません。だいたい、(冒頭の2人と違って)まだ議席持っているんですから、ちゃんと活躍しないとただの“(議員歳費)穀潰し”です。
ブログによると、その質問主意書への回答は、
「結論は、『原子力規制委員会は新規制基準への適合性について審査を行っているが、新規制基準には、地域防災計画に係る事項は含まれていない』という答弁であった。つまり原子力規制委員会は原発事故時の避難計画を含む地域防災計画について、地域住民の安全が確保できるかどうかは判断しないということを意味する。/・・・/それでは地元自治体が安全に避難することは困難と判断した時にはだれが再稼働について判断するのかという私の問いに対し、答弁書は『地域防災計画については都道府県及び市町村において作成等がなされるものである。』と述べるだけで、地域住民の安全性をだれの責任で判断するかについては答えていない。」(菅直人オフィシャルブログ 2月21日)
とのことです。
地域住民の安全を判断する責任主体があって始めて、その責任において、原発再稼動に同意することが出来るわけですから、これでは話にならない、というわけですね。しかも少なくとも、避難計画が立たないうちは、原発再稼動はできないことになります。
再稼働した菅直人、いけいけ~、GO GO!!
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自爆テロ!? 東京電力、2億Bq/L超汚染水、100トン漏洩!!
2014-02-20
なんと言って良いのか、「再発防止の徹底要請へ=汚染水流出で福島知事」(時事通信HP 2月20日)なんて話じゃないんじゃないか・・・・・・まず前哨戦、
「2号機の温度計故障=作業員が点検ミス-福島第1」(時事通信HP 2月19日)
100ボルトをつなぐべき計測機器に250ボルトをつないだ、って、電気屋だろ、東京電力って。温度計1つ、ご昇天です。
しかもここ、「圧力容器内には計11台の温度計があるが、9台は上部にある。底部には壊れた温度計を含め2台しかなかった」(河北新報HP 2月20日)・・・というわけで、2号機の底部、最も監視が必要なところで、残っている温度計はあと1つ。汚染濃度高く、すぐに温度計を補充できない状況なんだそうで、どうするんだ~。
残った1つが壊れて、温度を測れなくなる可能性もさることながら、不安定な状況でも検出された場合、温度計がおかしいのか、原子炉がおかしいのか、即座には判断できなくなるではないですか。
ヒューマンエラー、ったって、やっていい所といけない所があるだろ。
で、
「汚染水100トン、せき外に=放射能濃度2億ベクレル超-タンクから・福島第1」(時事通信HP 2月20日)
これも19日14時1分には“位高高警報”が発生しているのに、“計装系のトラブルと判断”して放置、日付が変わって0時41分になってやっと“福島第一規則第18条第12号「発電用原子炉施設の故障その他の不測の事態が生じたことにより、核燃料物質等(気体状のものを除く)が管理区域内で漏えいしたとき」に該当すると判断”したとのこと(東京電力発表資料 2月20日)。
2億Bq/L超 × (100 × 1000)L = 20兆Bq超、 漏洩ですか・・・
汚染水300トン漏洩の時は“国際原子力事故評価尺度(INES)”の“レベル3”でしたが、今回もレベルが付くでしょう。
しかも、明らかにヒューマンエラーです。14時1分の警報発生時、ちゃんと確認すればここまでは拡大しなかったでしょう。

(東京電力発表資料 2月20日)
あ~あ、そこらじゅうびしょびしょ・・・って、この水、2億Bq/L超なんですけど~。
もう福島原発を管理するのイヤになっちゃった東京電力、自爆テロしてんじゃないか??
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発電効率最低の北海道電力、電気料金再値上げの世迷い言!!
2014-02-19
北海道電力が電気料金再値上げを表明し、茂木経産相からつれなく否定されました。
(朝日新聞西部本社版朝刊 2月19日)
茂木経産相、「値上げを回避するため、ありとあらゆる努力をまず行うのが何より大事」と指摘したそうです。
そりゃそうです。当ブログ2月4日記事から再掲です↓

北海道電力の発電熱効率、みごと最下位です。発電燃料バカ食い状態驀進中で「電気料金値上げしたい~」って、パカも休み休み言え、というところです。
もちろん、だから経営苦しくて、なんとか値上げしたいんでしょうが、民間企業ならそんなこと許されるはずないのは明らか。合理化努力をちゃんとしなさい、と言われるだけのことです。
原発依存度が高かったせいで苦しんでいるのは、発電熱効率ずっこけまくりの九州電力も同じですが、それでも北海道電力よりは発電熱効率良いですし、同じく島1つが縄張りでやはり原発依存度が高い四国電力なんて、猛然と頑張って発電熱効率を上げ、北海道電力を上まわっています。
さて茂木、もしくは経産省、電力会社の倒産手続きについて、きちんと研究しておけ~。「非効率な会社は退場」、これ、自由経済の本質。
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断末魔のアベノミクスと原発過剰投資電力、ツケはみんな次世代だ~!!
2014-02-18
昨年10~12月期のGDP速報が出ました。またぞろアホなメディアが電力に誑かされて、無茶苦茶な記事を書くんだろうと待ち構えていたのに、意外と慎重でした。特に原子力ムラ・バリバリの読売が、“原発停止による燃料輸入増加で、GDPの成長が腰折れした~”と来るのかと思ったら、かなり抑制的な調子で書いていたのには驚きました。「GDP1%増 成長シナリオに狂いはないか(2月18日付・読売社説)」(読売新聞HP 2月18日)
「(GDPの)伸び悩みの主因は、成長を牽引していた公共投資に一服感が出たことだ」と来ました。はい、左様でございます。そして次の理由が「円安が追い風になったはずの輸出も、新興国の景気減速などの影響で小幅な増加にとどまった」です。異存ございません。
さすがにここまで書いたところで原子力ムラ新聞・読売、我慢できず「原子力発電所が停止し、大量の火力発電燃料を輸入している悪影響も大きい。円安で輸入額が膨らみ、貿易赤字がGDPを押し下げている。安全性を確認できた原発を着実に再稼働すべきだ」と来ます。う~ん、3番目の理由ですし、輸入額が膨らんだ理由は円安と明示してありますから、ケチつけにくい論じ方になっています。もちろん、だからって原発数基程度再稼働しても焼け石に水でしょ、とツッコミは入れられますが・・・(さすがに原子力規制委、いきなり全部再稼動許可という訳にはいかないでしょう)。
さあそれにしても、いよいよアベノミクスのメッキが剥げてきました。GDP成長率頭打ちということで、金融政策で出来る経済刺激はもう終わりという結末が見えました。公共投資しようとしても、働く若者が足りなくて、予算消化できない高齢社会ですし、円安誘導政策のめざす輸出拡大も、海外移転で工場はない、しかも工場で働く若者もいない、で、やはり拡大しようがない。
「日銀、成長支援融資を1年延長 大規模緩和の継続決定」(47NEWS=共同通信 2月18日13:35)
「東証、今年最大450円上昇 追加緩和期待で1万4800円」(47NEWS=共同通信 2月18日16:51)
しょうがないから、この期に及んで更に追加緩和だそうです。いや、そのための資金、後の世代の借金になるんで、既に溜まりに溜まった負債を膨らませて、どうするんだ!!
まず成長戦略が先でしょうが・・・もちろん、今いちばん可能性のある成長産業は新エネルギー開発なんですけどね。だって、

(朝日新聞西部本社版朝刊 2月18日)
ただでさえ高くつく原子力発電、これじゃますます、高額電気になってしまいます。原子力発電と競争する他の発電方式、ますます有利です。
地域独占と総括原価方式で電気料金を高値維持できるという目算の上で、電力会社は“原発再稼動すれば儲かる”とソロパンを弾いていますが、さあ、いつまで皮算用の通りに行くか。
既に企業向け電力は自由化されてますから、安倍政権がゴチャゴチャ工作したって、逃げる顧客は逃げて行きます。今だって独立発電事業者 (IPP)は引っ張りだこです。
いずれ無理な投資したツケは電力会社に回るでしょう。
ザマーミロと言いたいところなんですが、最悪な未来図は、そのツケ、どうせ電力会社が払うなんてこと出来るはずないんで、やっぱり次の世代に借金として回ることなんですが・・・やめさせろよ、こういう無意味な投資!!(要するに原発ゼロの決断を早くしなければしないほど、次の世代が損をする!!・・・しかしその損をする当の若者が原発許容的なんだよな~、簡単に騙されやがって・・・)
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自民・高市政調会長「もんじゅを活用」!!
2014-02-17
自民党の高市政調会長、もんじゅの研究機能強化を主張しました。
(朝日新聞西部本社版朝刊 2月17日)
そもそも、もともとの目的の高速増殖炉としてさえ、まともに動かなかったのに、何が出来るというのでしょうか。
だいたい、この原子炉、ちゃんと管理されていない。
「もんじゅ確認中なのに完了と報告 点検計画で機構」(47NEWS=共同通信 1月15日)
「もんじゅ点検漏れで改善策を報告 規制庁へ原子力機構」(福井新聞HP 2月17日)
転用については、新聞社もいろいろボロクソ書いています。
「高速炉「もんじゅ」/開発推進はもはや無理筋」(河北新報HP 2月13日)
「もんじゅ転用 「夢」の乗り換えは論外」(北海道新聞HP 2月16日)
何が危ないって、高速増殖炉もんじゅ、一次冷却材にナトリウムを使用しているので、何か事故があった場合、冷却方法がなくなります。水をかけたら、こんなふうに爆発します↓(再度のリンクです)
こっちもおまけしときましょう↓ ナトリウムの量から言ったらこっちの方が近いでしょう。
もちろん効能書きも付け加えときましょう。↑これらは派手に見えるけど実は単なる露払い。高速増殖炉の実害はその後が本番です。ナトリウム-水素爆発で炉心が吹き飛ばされると、出てくるのはセシウムや放射性ヨウ素みたいな“弱毒性”(?)の放射性物質ではなくて(それも出てくるけど)、“強毒性”かつ半減期2万4000年のプルトニウムです。
もんじゅ みたいなもの、早く廃止しなくてどうする。
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【Cs137の降下】玄海原発だったら(2)北北西風
2014-02-16
福島原発の際、季節風の関係で、放射性物質の多くは太平洋方向に飛ばされていると考えられます。しかしリアルタイムで船を出して降下物質の観測をするなんてことはできようはずもなく(被曝の危険もあるし)、データとして上がってこないので、(事故後測定された)陸地に降った放射性物質の状況から福島原発事故の影響を考えがちです。しかし、他の原発で事故が起きた場合、風向き次第では、福島では“海に去った”状況が陸地で再現されることだってあり得ます。
そこで、福島事故の洋上シミュレーションを、他の原発に重ねる、重ねあわせ図を作成してみます。セシウム137に関するシミュレーションの重ね合わせです。原図などはこちらです。なお、原図と現在の状況を見比べてみると、オレンジの領域はほぼ帰還困難区域となり、黄色の領域は半分程度、居住制限区域となると考えられます。
今回は、佐賀県玄海原発についての2回めです。福島事故のシミュレーション図を並行移動した上で、反時計回りに30度ほど回転してみます。冬の季節風のごくありがちな方向、北北西風の状況です。熊本市あたりまで、居住制限区域となる可能性がありそうです。

・背景とした地図はKenmapで作成した白地図です。フリーソフト作成者のT. Kamada様、ありがとうございます。
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佐賀県玄海原発
始まった電力改革牛歩戦術 舛添都知事、再生エネ・ファンド創設
2014-02-15
金を出すようなふりをしてゴチャゴチャ口を出し、結局、再生可能エネルギーを実用化レベルに到達させない、というのが目的だったんじゃないかと揶揄される、電力会社がやってきた「再生可能エネルギー支援」(例えばこれ→「九州グリーン電力基金」)、それで電力会社は再生可能エネルギーに取り組んでいることになるんですから、なんと便利に利用さたことでしょうか、再生可能エネルギー。選挙中にも、当選後にも舛添は言っていました「再生可能エネルギーの利用率を2020年までに20%に上げ、原発依存を減らしていく方針」(TOKYO MXホームページ 2月14日)と。つまり、そのペースでしか原発は減らせない、そして“細川の原発即時ゼロは無責任だ”と。いや別に「もう原発止まっちゃってて、なんか問題起きてる??」なんですけどね。いやはや実に利用価値があります再生エネ。
「再生エネでファンド創設=舛添都知事」(時事通信HP 2月15日)
来ました。ファンド創設だそうです。「都は約10億円を出資」だそうです。
ところで、昨年秋のニュースです↓
「湾岸100万キロワット天然ガス発電所、猪瀬知事『建設計画見直し』老朽火力の設備更新に全力」(msn産経 9月26日)
ま、こっち(猪瀬前都知事)も“見直し”ちゃったので、“何やってんだ”としか言いようがありませんが、この記事の部分です→「建設費用は最大1600億円と試算され、この秋には自然環境調査の結果が取りまとめられる予定だった」。
なんと舛添のやる気の無さ、副知事時代の猪瀬の160分の1。というか、この数字を見れば明らかなように、これは電力改革を遅らせるための牛歩戦術。再生エネを口実に、電力改革を遅らせるための策謀を始めたに過ぎません。
ところで、1600億円投じて、原発1基分にあたる100万KWを確保しようとしていた副知事時代の猪瀬の計画、“なんと大金かけるのか、無駄遣いじゃないか”と思う向きもあるかもしれません。しかし、建設費で比べれば、最新、2009年に営業運転開始した北電泊原発3号機、2,926億円です。原発と比べりゃ断然安い。
もっとも火力は燃料費が高いと言われますが、使用済み核燃料処理費用もなければ、安全対策費、地元対策費、事故対策保険費用、事故った時の賠償金、いろいろあって、要するに火力発電の方が安くつく→「『電気料金』詐欺にご用心」。
副知事時代に猪瀬が立てた計画、実はとても正しかった。さっさと電力会社による電力供給支配を終わらせてしまう予定だった。まあ本人がその計画を放棄しちゃってるわけだから本人は擁護する必要はないけど、実に惜しい計画を亡くしました、チ~ン。
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何か隠してないか東電 No.1-13井戸セシウム13万Bq/L!!
2014-02-14
ここ連日、福島第一原発の“海側観測井戸”で、非常に高濃度のセシウムが検出されたことが報道されています。「海側井戸で高濃度セシウム=トレンチ近くで最高値-福島第1」(時事通信HP 2月13日)
「セシウム濃度、さらに上昇=地下水で最悪13万ベクレル-福島第1」(時事通信HP 2月14日)
東京電力の発表資料を見れば

(東電発表資料 2月13日)
と、セシウム2種合計(37,000+93,000)で確かに13万Bq/L、この井戸で何かが起こっていることはわかります。
しかし、謎なのは、この井戸、高濃度検出発表の前日までは存在しなかったのです、発表資料の中に。

(東京電力発表資料 2月12日)

(東京電力発表資料 2月13日)
一方、存在しているのに完全に無いことにされている井戸があります。No.1-16です。
当ブログで都知事選の前2月5日に、話題になりたくないから発表をしないで隠しているんじゃないかと指摘したNo.1-16井戸、

その後どの発表でも斜線ばかりで、最高値は2月3日の全ベータ線310万Bq/Lのままとなっています。
実際はNo.1-16とNo.1-13は極めて近い位置にありますので、何らかの理由で観測対象を差し替えた、ということなのかもしれませんが、それでも発表数値を310万Bq/L(全ベータ線)→13万Bq/L(セシウム)と、20分の1以下へと偽装することになります。しかもNo.1-13でも、全β線なら一番上の切り貼りの下から3行め、26万Bq/Lなんですけど。
なんかこういうのって、単なる小手先の偽装程度ならば、むしろ助かるような気分になるのが困るんですけど、実際はもっと重大なことが起きてないか??
そうそう、3号機の水蒸気の発生、一応、一昨日には終息したそうです。

(東電発表資料から)
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今度のパブコメは「自然冷却式コアキャッチャー」!!
2014-02-13
原子力規制委の田中委員長は、原子炉の新基準への適合審査が、年度内には終わらないという見通しを発表しました。
(朝日新聞西部本社版朝刊 2月13日)
いやなんと言うか、もういよいよ終わりそう、という話ですね。4月再稼働は無理としても、早けりゃ5月にも再稼働ですか・・・。福島であれだけひどいめに会ってて、何も学習しない国ですね、ということになりそうです。
ただ、ここで一点、注目しておきたいのが上の記事の最後の部分。「科学技術的な面での意見募集や公聴会を実施する方針を示した」というところです。パブリックコメントが実施されるなら、皆で求めましょう、「自然冷却式コアキャッチャー」。

(詳しくは 1月7日書き込み)
福島で我々が経験したことは、原子炉はメルトダウンもするし、メルトスルーもするということです。従って、その時、炉心溶融物を受け止めるしくみ「コアキャッチャー」を、備えておくことが是非とも必要です。これなしに「新しい基準」などと言っても、何の説得力もありません。そして、さらに、福島で我々が経験したことは全電源喪失です。コアキャッチャーは、いかなる動力も必要としないものでなければなりません。動力を使って冷却水を通さなければならないような仕組みではいざというときに役立たないのです。つまり、上の図のような「自然冷却式コアキャッチャー」の義務付けが意味のある安全基準の要件です。
実際に、ヨーロッパの原子炉の多くで採用されているコアキャッチャーの設置義務付けを求めます。
どうせパブコメなど、聞き置くだけで、聞き捨てるつもりでしょうが、あまりにも多くのコアキャッチャー要求が寄せられれば、単純に無視するのは難しくなっていくでしょう。
その場合、資源エネルギー庁が内々に開発中の「なんちゃってコアキャッチャー」(強制冷却式)が出てくる可能性もありますので、ちゃんと主張しておきましょう「自然冷却式」じゃないと意味がない、と。
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【Cs137の降下】玄海原発だったら(1)北風
2014-02-12
福島原発の際、季節風の関係で、放射性物質の多くは太平洋方向に飛ばされていると考えられます。しかしリアルタイムで船を出して降下物質の観測をするなんてことはできようはずもなく(被曝の危険もあるし)、データとして上がってこないので、(事故後測定された)陸地に降った放射性物質の状況から福島原発事故の影響を考えがちです。しかし、他の原発で事故が起きた場合、風向き次第では、福島では“海に去った”状況が陸地で再現されることだってあり得ます。
そこで、福島事故の洋上シミュレーションを、他の原発に重ねる、重ねあわせ図を作成してみます。セシウム137に関するシミュレーションの重ね合わせです。原図などはこちらです。なお、原図と現在の状況を見比べてみると、オレンジの領域はほぼ帰還困難区域となり、黄色の領域は半分程度、居住制限区域となると考えられます。
今回からしばらく、佐賀県玄海原発について作図してみます。まずは単に福島事故のシミュレーション図を並行移動してきたものです。佐世保市は帰還困難区域、長崎市も、5万MBq/km^2以上セシウム137が降って来る黄色の範囲の中ほどですから、居住制限区域となりそうです。

・背景とした地図はKenmapで作成した白地図です。フリーソフト作成者のT. Kamada様、ありがとうございます。
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佐賀県玄海原発
高額電気料金で日本没落・・・原発再稼動の次に来るもの(経常収支赤字!!)
2014-02-11
またやってます、インチキ・プロパガンダ報道。「昨年の経常黒字が過去最少に 3年連続で大幅減、12月は赤字」(msn産経ニュース 2月10日)
記事によると「輸出から輸入を差し引いた貿易収支が、前年より4兆8258億円増えて10兆6399億円と過去最大の赤字となった。原発停止により原油や液化天然ガスなど燃料輸入が拡大したうえ、半導体など電子部品の輸入も増えた。円安ドル高が続いていることで、輸入額が15.4%増の77兆6093億円へと拡大。自動車や化学製品が健闘し、輸出が9.0%増の66兆9694億円と3年ぶりに増えたが、輸入の拡大に追いつかなかった。貿易赤字は3年連続」とのこと。
燃料輸入の拡大は確かに発生しています。しかしそれは、「前年比22.5%の円安」の影響の方がよほど大きく、原油なら、原発代替燃料はそもそも全原油輸入の9.4%ほどしか占めていません。
財務省発表では、貿易輸入の対昨年比増加は10兆3532億円ほどですが↓、原発代替燃料による増加分は原油・天然ガス合わせて、2兆6千億円ぶんほどにしかなりません。

しかも何がおかしいかと言って、財務省の発表では単に「原粗油の輸入が増えた」となっているところ、メディアでは「原発代替燃料の原粗油の輸入が増えた」と、すり替えられるところです。違います。「原粗油の輸入が増えた」のは主に円安で支払いが増えただけで、対前年比ならば、実は輸入数量、ほとんど変わっていません。
輸入数量が増えたのは、原発停止前後のことで、もうずいぶん古いことです。その増加分が、現状の円安レートで2兆6千億円程度です。他の要因による赤字の方が大きいのです。特にアベノミクス円安、14兆5千億円相当の赤字産出です。
都知事選で舛添が勝ったので、原発推進派は原発再稼動をしようとしていますが、それでどうなるというのでしょうか。
2011年、家庭用電気料金の国際比較です。

(Australian Eastern Standard Time)
まだ原発は止まりかけで、電気料金そのものへは原発停止の影響が及んでなかった頃のことです。高っけ~!!
原発を再稼働して得られる結果が、この高い電気料金です。これで国際競争力が戻るなどと、よく言えたものです。チャンチャラおかしくて臍で茶が沸きます。
しかも、この「高い電気料金」には、核のゴミ処理費も、廃炉費用も、事故に備えた保険金も入っていないのです。ツケはこれから回ってくるのです。実際、賠償金は既に幾ら払わされたことか。
通常の火力の方が、遥かに安く、安全な電力です。→「『電気料金』詐欺にご用心」
危険な上に高くつく発電、原子力にしがみついていれば、わが国経済は一層の地盤沈下を起こします。自分の会社さえ儲かれば良い経団連のサビつき経営者ども、すこしは事態を理解しろ!!
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「都知事選の結果、日本は原発再稼働に踏み切るでしょう」
2014-02-10
うわ、BBC World の極東向けニュース、すごい報道になってるな・・・
(日本時間9:00のNewsdayから)
「東京都知事選が行われ、勝者が決まりました。おそらく日本は原子力発電の再稼働に踏み切ることになるでしょう。勝利を収めた舛添要一氏は、福島第一原発の事故があったにもかかわらず、原発の再稼働に向けで選挙戦を行ってきました。・・・これは単に信任投票ではなかったようです。原子力発電所をめぐる国民投票の意味合いもありました。・・・日本の総理大臣は原発の再稼働を望んでいます。この問題について舛添氏も支持を表明しています。」
だはっ、orz。 うぐぐぐぐ、そう言われてもしょうがないが・・・。
まあ、BBCもフォローを入れてはくれています。
「・・・脱原発については票が割れていました。これを合わせれば、東京都民の意思がわかります。都民は原発の再稼働を望んでいないのです。」
トップニュースですから、コメンテイターも付いていました。元イギリス外交官で、GR Japanのフィリップ・ハワード氏の解説です。
「(今回の都知事選の)争点は、まず第一は経済でした。エネルギーは第二位、社会福祉が第三位となっていました。・・・。細川元総理は・・・負けてしまったのは、今回のこの都知事選を原子力発電をめぐる選挙に変えることができなかったことが敗因だと語っていました。ですから必ずしもそんなに明確な結果とはならなかったのかもしれません。」
そうそう、そもそも脱原発が争点の選挙とならなかったのだから、原発再稼動にお墨付きが出たわけじゃありません。
ここでアナウンサーのツッコミです「もし原発が主な争点だったら結果は違ったでしょうか?」。
ハワード氏: 「確かに多くの市民は原子力発電を段階的にやめていく、あるいは脱原発を目指しています。しかしそれにも関わらず、脱原発の候補は勝利を収めませんでした。昨年の参議院選も衆議院選でも同じような結果でした。その結果、安倍政権が誕生したのです。当時も世論調査では市民は原子力発電をやめるべきだと考えていたのに、勝利を収めたのは、原発の再稼働を求めていた政党でした。今回も同じように脱原発派が分かれていたのが問題だと思われます。」
いや、それはそうなんですが、小泉・細川の支持者が宇都宮氏に投票することも、宇都宮の支持者が細川氏に投票することも、どちらもかなり難しいことなんで、まあせめて、両方合わせれば舛添をかなり上回る、という結果を期待したわけですが・・・。東京都民というのは石原を支持してきたわけだし、やっぱ期待外れの結果しか出してくれませんなぁ。
ハワード氏の言葉を聞いていると、いよいよ暗くなってくるわけですが、次の発言は笑いました。
「猪瀬と違って、舛添は首相にとっても都議会にとってもやりやすい、言い換えれば、あやつりやすい相手でしょう。」
よ~く解ってらっしゃる。
というところでしたが、↓この締めの言葉はキツーイな。
「舛添氏が勝利を収めたことによって脱原発は訴えにくくなったでしょう。ですから、脱原発を巡る議論はこの後、進まなくなっていくのではないでしょうか。」
は~あ、やれやれ。
さっそくこれだもんな→「首相、原発再稼働へ前向き 『現実見据えた計画を』」(47NEWS=共同通信 2月10日)
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また蒸気発生、福島第一原発3号機
2014-02-09
現在、2月9日の17時になっていますが、東京電力HPに、No.1-16井戸の濃度は出てきません。310万Bq/Lで頭打ちになっている汚染濃度、東京都知事選のある本日には更新したくないのでしょうか。隠しようのないフクイチ3号機の蒸気発生だけ、HPに出ています。

(東京電力HP「平成26年1月1日以降の実績」2月9日17時)
ピンクで囲った部分↓

こんな時は周りの県で空中放射線量の値が上がったりすることが多いのですが、本日はこの一帯、強風ということで、数値はむしろ低いようです→全国の放射能
それにしても東日本は悪天候で、都知事選の投票率も上がらない・・・
「都知事選推定投票率24・54%…午後4時現在」(読売新聞HP 16時30分)
組織票のあるところが有利とか、どうでもいいです。
ここまで投票率低くなれば、志ある人の一票の重みが増す状況です。志ある都民の方、是非とも投票を!!
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【Cs137の降下】東京(5)浜岡原発 その2
2014-02-08
福島原発の際、季節風の関係で、放射性物質の多くは太平洋方向に飛ばされていると考えられます。しかしリアルタイムで船を出して降下物質の観測をするなんてことはできようはずもなく(被曝の危険もあるし)、データとして上がってこないので、(事故後測定された)陸地に降った放射性物質の状況から福島原発事故の影響を考えがちです。しかし、他の原発で事故が起きた場合、風向き次第では、福島では“海に去った”状況が陸地で再現されることだってあり得ます。
そこで、福島事故の洋上シミュレーションを、他の原発に重ねる、重ねあわせ図を作成してみます。セシウム137に関するシミュレーションの重ね合わせです。原図などはこちらです。なお、原図と現在の状況を見比べてみると、オレンジの領域はほぼ帰還困難区域となり、黄色の領域は半分程度、居住制限区域となると考えられます。
今回は「東京はどんな危険に曝されているのか」の5回めです。前回取り上げた浜岡原発、5万~10万MBq/km^2汚染される黄色の領域に注目すると、神奈川県の西半分か真っ黄色になる図が印象的です。しかし、東京都について言えば、原図の海側よりも陸側を合わせたほうが危機的です。今回の図は、福島事故のシミュレーション図を浜岡原発に移動し、時計回りに45度ほど回転して重ねてみたものです。この図では2万5千~5万MBq/km^2汚染される黄緑の領域、東京都の人口の多い地域をすっぽりと覆います。この汚染状況、安心などと言っていられる状況ではないと思いますが、政府はきっと、「大丈夫」と言うでしょう。

昨日のニュースです↓
「子どもの甲状腺がん33人=前回から8人増-福島県」(時事通信HP 2月7日)
福島では甲状腺がんの発生率200倍とも言われていますが、「(福島県・県民健康管理調査)検討委は放射線の影響について、『これまでの知見から言えば考えにくい』との見解を示した」そうです。
・背景とした地図はKenmapで作成した白地図です。フリーソフト作成者のT. Kamada様、ありがとうございます。
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静岡県浜岡原発
ホントはもっと汚染されていました“β線「数え落とし」効果”by東電
2014-02-07
東京電力から、福島第一の危機管理体制崩壊状況の発表が立て続けに出てきました。「ストロンチウム500万ベクレル=過去最高、昨年7月地下水-福島第1」(時事通信HP 2月6日)
これは昨年7月に採取した水の再測定の結果についての話。ストロンチウムの分析したら、その量から出ているはずのβ線、全β線の測定結果(公表数値)を上回ってしまった・・・どっちの測定が間違っている? ということで、要するに汚染濃度の高い数値の方が正しかった、というありがちの結論。500万ベクレル/Lという高濃度汚染だったとのこと。
そして、

(朝日新聞西部本社版朝刊 2月7日)
こっちは冷却系の配管から水漏れ。
さらに、
「300トン漏えいでも過小評価か=汚染水濃度、実態より低く-東電」(時事通信HP 2月7日)
これたぶん↓この話。
「ベータ分析における「数え落とし」の影響について」(東京電力HP 2月7日)
β線が測定器に飛び込んでくると、測定器、次のβ線を感じるまでにちょっと時間がかかるとのこと。この間に入ってきたβ線、取りこぼしとなる・・・「数え落とし」効果だそうです。ある程度の高濃度から問題になる(続けざまにβ線が入ってこなければ発生しない)現象なので、海の汚染測定等では問題にならない・・・って、その他いろいろ問題になる場面、目白押しじゃないか!! これまでの測定結果、何だったのか!!
「過小評価分を再測定=ベータ線出す放射性物質-東電」(時事通信HP 2月7日)
ともかく、測りなおしていくそうです。
いやしかし、なんでこのタイミングで東京電力は、こんなことを発表するのだろう?? リアルタイムの冷却水漏れはともかく、測定ミスの話2つは、いわば過去の話。来週に発表延ばしたって特にどうってことない話じゃないですか。明後日は注目の“脱原発”都知事選なのに、なんでわざわざ注目引くようなことするのか・・・。
安倍政権なんて、やる気あるとは思えないものの、高速増殖炉“もんじゅ”の清算を示唆する発言までしています。
「経財相、もんじゅの核ゴミ減量施設転用に含み 」(日経新聞HP 2月7日)
「官房長官、新エネ計画「もんじゅ含め議論・決定」 」(日経新聞HP 2月7日)
これ、リップサービスだけだろう思われるものの、都知事選を意識して、原発問題に取り組んでいるジェスチャーに必死というところでしょう。上の記事なんて調子に乗りすぎて“政府の方針”、「高速増殖炉の実用化目標を白紙に戻す方針」となっています。あまりにリップサービスしすぎちゃったので、慌てて、菅官房長官が「白紙に戻すかどうかも白紙」にまで押し戻したのが下の記事です。
世論調査の結果見て、東電はもう都知事選勝ったつもり?? それとも、東電はもういっそのこと精算されたがっている??
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原発推進鮮明・安倍政権 vs. 細川・小泉連合
2014-02-06
安倍政権は原発推進方針をいっそう鮮明にしています。「原発活用、当面継続=参院予算委で安倍首相」(時事通信HP 2月6日)
「東通原発の建設続行を経産相容認 参院予算委で答弁」(47NEWS=共同通信 2月6日)
そして電力会社も実際に原発再稼動の動きを強めています。
「中部電、浜岡4号機の審査申請へ 再稼働向け14日にも」(47NEWS=共同通信 2月6日)
これがいかにトンデモナイことか、
→“世界最高水準”どころか、“ヨーロッパの普通”にも届かない安全基準で、原発再稼動を強行しようとしている・・・原子炉がメルトダウンした場合、炉心溶融物が炉外へ出て、「メルトスルー」となることを防ぐコアキャッチャーが義務付けられていない。しかも、この問題点について資源エネルギー庁は十分承知しているので、こっそり研究中。ただし、本格的なコアキャッチャーを後から原発に付加するのは無理なので、全電源喪失の時には役に立たない“なんちゃってコアキャッチャー”の研究をしているのです。
→それで経済的利点があるのかといえば、電力会社が儲かる以外、利点なしです。既にいろいろと明らかとなった粉飾決算を剥ぎ取れば、普通に新しい火力発電所を建設した方が電気料金だって安くなる。
→貿易赤字がどうのという話がありますが、外国産の燃料を使うから火力発電がダメという主張は、そもそも貿易が何か解っていない経済学音痴のたわごとです。国内産と外国産で明らかに外国産のほうが安い時、国内産だからといって国内産部品を使う工場は潰れます。もちろん品質に差があれば簡単には言えませんが、今回の場合、電気の原料の品質として、より危険性の少ないのは原発じゃないわけで、この点でも外国産が有利です。非効率で高くつく国内産業保護をすれば日本経済全体が沈みます。
それにそもそも、貿易赤字の原因は原発停止以外の理由が大きい上に、原発代替燃料による赤字ぶんは放っておけば、早晩解消されると予想される程度のものです。
報道規制なのか、報道協定なのか、なぜか小泉元首相の“原発即時廃止”演説がメディアへ登場しないようブロックされているようですが、すごい迫力の演説です。これを聞かずして政治演説を聞いたと言うなかれ、と言いたくなるくらい凄い。
力が入り過ぎて、自然エネルギーを強調し過ぎじゃないかと思いますが(上でリンクを張った各書き込みで述べたように、普通の電力政策で当面、何も困ることはない)、そこがロマンです。こういうのがないと演説にも力が入らないでしょう。それに中・長期的には確かに再生可能エネルギーへとシフトしていく必要がありますから、やはり正しい方向性です。
上の演説の中でも言っていますが、都の具体的政策は、実際の問題状況と様々な制度と、現実に都が持っているリソースを勘案して、都のスタッフやブレーン達が作っていくわけですから、誰がやっても大して変わらないでしょう(これ言い切っちゃうところが小泉のすごいところ・・・政治家の存在意義の否定です・・・もちろん、他のところに意義を見出しているから言えるわけで・・・政治的価値の選択です↓)。
細川氏を選ぶと何が違うか、安倍政権の原発政策に激震が走るところです。
せっかく東京都の選挙権を有している人には、しっかりとした判断をしていただけるよう、期待します。
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なんか怪しい福島第一、観測井戸No.1-16/都知事選 報道規制!!
2014-02-05
報道規制なのか報道協定なのか、都知事選のために何やら異常な事態が起きているような気がします。いや、当ブログ、なんかネタ切れ感があります。言及したい報道がない。こういう時は東京電力のサイトでも行けば、これまではなんかあったものですが、こっちも無茶な数字見慣れちゃったせいもあってか、なんかピンと来るものがない・・・
ということで、観測井戸No.1-16です。(いや、多少はこれ、ピンと来た。)

(データソース→東電資料 東電資料 東電資料)
海ぎわのこの井戸、310万Bq/Lの汚染です。海のすぐそばですから、ここがこんなに汚染ということは、海へも相当高濃度の地下水が流れ込んでいる可能性があると思われます。
しかし、この井戸が最初に最高値310万Bq/Lを記録したのは1月20日のこと。それ以後、高濃度維持ですが、最高値更新をしないので、ニュースになっていません。なんか怪しいですね。たぶん都知事選終了まで、最高値を更新することはないのではないでしょうか。いずれ東電お得意の「後から差し替え」もあるんじゃないかという気がしますが、それどころか、単に数値隠蔽となるかもしれません。
しかしそれにしても、今回の都知事選は異常です。
「「原発に触れないで」放送局が要請 ピーター・バラカン氏の衝撃の生告白がネットで反響」(J-castニュース 1月21日)
「「選挙中テーマ変更求めた」 脱原発降板でNHK会長」(朝日新聞HP 2月5日)
とにかく有権者が原発問題に目を向けないよう、強烈な報道規制が敷かれているみたいです。
特に、小泉元首相の演説は、絶対に報道させたくないようです。
「小泉純一郎「脱原発」を消せ!これは”報道協定”なのか?『週間ポスト』グーグルからも消された?」(「中田潤が無料予想 競馬で「喰えるダメ人間」になろう!」ブログ 2月5日)
「小泉元首相の応援演説は魂の叫びだ。有権者が動かないはずがない。」(「天木直人ブログ」2月4日)
「小泉純一郎の演説はテレビでオンエアされない。」(「どーか誰にも見つかりませんようにブログ」2月5日)
こうなるとやっぱ、見るしかないんじゃないでしょうか。いろいろとアップされてますが、とりあえず短いの↓
言ってます、「(都政についていろいろな課題があると言われているが)原発以外、どなたが知事になっても結論は大して違わないと思ってます」。「原発に依存するよりも風力とか太陽光とか地熱とか、牛の糞、馬の糞までエネルギーに変えちゃうような、自然循環型の国づくりを始めたほうが遥かに発展する余地がある」。「(原子力発電の)ゼロ宣言してないのにゼロになってるのは日本だけですよ。もう、実現しちゃってるんですよ。あとは政治が決断するだけですよ」。
おみごと!!、熱気あふれる演説、一気に畳み掛けてきます。こりゃあ報道されたくないわけです。
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浮かぶ電力、沈む電力
2014-02-04
昨日見たように、中部電力、燃費の悪い石油火力を止め、燃費の良いLNGに切替え作業を急いでいます。切替え後には、石油火力は全発電量中の1%と、恐らくは単なる技術継承のみのためでしょう、わずかには残しますが、徹底的にやります。これもちろん、脱原発するためにやっているわけではないはずです。確かに、原発停止中も安く発電し、赤字を出さないようにすることができるでしょうが、狙いは別のところでしょう。
安倍政権はやる気なくリップ・サービスだけですが、電力自由化、何らかの形で進行するはずです。少なくとも経産省は、一定程度は自由化しようとしています。自由化が進展した時、何が企業の命運を握るか、と考えれば、あまりにも結論ははっきりしています。電気は品質に差が付きませんから、価格競争のみが残るはずです。要するに安く売ったもの勝ちで、そのためには、安い発電をしておかなければなりません。
もともと浜岡原発のみの中部電力としては原発に入れ込んでいませんから、さっさと価格競争できる態勢を作っておこうというところでしょう。原発みたいな高い発電をやっていたら、価格競争になったら勝負になりません。
規制業界・保護産業として(地域独占・総括原価方式で)、高く発電したほうが高く電気料金を設定でき、濡れ手で粟をつかむような儲けが出来る原子力は魅力ですが、今後の展望がはっきりしないならば、保険を掛けておこう、といったところだと思われます。
というところで、電力各社の発電熱効率です。

(電気事業連合会HPのデータより作図)
2010年度は原発が動いていた段階、2011年度に原発は止まり始め、2012年度にはほとんど止まっています。それに伴い、休止していた効率の悪い発電施設を動かしていったため、多くの電力会社は発電熱効率を下げています。
ところが中部電力、ここで一気に発電熱効率を上昇させています。他社にしてみれば、「あまり発電熱効率を上げたら電気料金が下がっちゃうじゃないか、何してんだ」でしょうが、中部電力、そんなことに構ってません。もともと、経済における正義は発電効率化(料金低下)です。
このやる気は大したもので、現在、赤字を出してでも一気にやるつもりです。新発電所建設などに投資せず、既存施設でやりくりしていれば、もともと原発依存率低く、他社よりも有利な状況のはずですが、先日の決算では中部電力、赤字です。「原発停止のせいで赤字です、いやまいりました~、株主の皆さん、申し訳ないですね」などと言いながら、わざとやってますね、これは。単純な決算結果↓では見えてきませんが、この会社、したたかです。

(朝日新聞西部本社版朝刊 2月1日)
あれ、ちょっと余計なところまでスキャンしてますかね。
まあ上のグラフで、発電熱効率で一番急激に落ち込んだ九州電力、赤字も最大ですか。この会社はダメですね。
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“原発代替燃料赤字”の解消法・・・実はすごく簡単、もちろん原発ゼロで!!
2014-02-03
いろいろと数字を見てると、面白いことがわかってきます。「原発代替燃料で貿易赤字」と言われているもの、実は簡単に解消できる、というのが本日の書き込みです。まずは、昨日計算した2兆6千億円ほどの“原発代替燃料費赤字”、放っておいても数年で4割近く減ります。
なぜそうなるか・・・
まずは1月27日の書き込みの中の表から、本日必要分のみです。
輸入品目 | 2012年(H.24年) | 2013年(H.25年) | |
原油及び粗油 | 数量(千KL) | 213,018 | 211,717 |
〃 | 価額(百万円) | 12,247,216 | 14,240,822 |
液化天然ガス | 数量(千トン) | 87,314 | 87,491 |
〃 | 価額(百万円) | 6,003,680 | 7,056,795 |
税関長公示レート | (平均値) | 79.55円/ドル | 96.91円/ドル |
2012年→2013年の違い、円安で輸入価額は跳ね上がっていますが、輸入数量はほぼ横ばいです。2012年は既にほとんどの原発は止まっており、2013年と、基本的なエネルギー経済構造に変化はなかったということをまず頭に入れておきます。
さて、この中で発電に使われた分は、2012年の使用用途比率に従って、次のように見積もることができます。
原粗油 14,240,822百万円 × 15.0%(発電用途向け)≒ 2兆1361億円
LNG 7,056,795百万円 × 71.4%(発電用途向け)≒ 5兆385億円
ところで、良く知られているように燃料費で比べると、石油火力発電の方が高くつき、LNG火力発電の方が安くつきます。どのくらいかというと・・・

(経済産業省・電力需給検証小委員会 資料 2ページ)
2013年実績で、石油火力なら20円/kWh、LNG火力なら13円/kWhということになります。つまり、原粗油で発電している分、LNGで発電すれば65%の燃料費で済むということになります。
ならばさっさとそうすれば安く済む、というか、貿易赤字の話ならば燃料輸入額が減るのに、なぜそうできないのかと言えば、具体的にLNG発電所が足りない、すなわちLNG発電所の建設ができていないから(原発の代わりを作りたくないから)、ということになります。
でも現実として、原発再稼動を待ってばかりもいられないので、体力のある電力会社は、結局、新しいLNG発電所を建設中です。
で、ここで面白いのが、新しい発電設備では発電効率が更に向上するという点です。熱効率60%が達成されます→「関西電力・姫路第二発電所」。
上の図で、LNG燃料単価の計算式では熱効率43.41%になっていますから、これが60%になると、単純に43.41%/60%を13円/kWhに掛ければ良くて、9.4円/kWhとなります。
まあ、全部のLNG施設を一気に更新するわけにも行かないでしょうが、既存施設への技術改良等も加え、LNG発電単価10円/kWh程度を目標にすることは可能でしょう。発電コスト、石油火力20円/kWhの半分となります。
ということで、現在の発電用の原粗油の輸入、2兆1361億円をLNG発電へと移行すれば、このぶんの燃料費は半減、貿易赤字は1兆円ほど減少します。
昨日計算した原発代替燃料費用は総額2兆6千億円でしたから、1兆円÷2兆6千億円≒38%ということで、原発代替燃料費の4割近くが解消されます。
でも、ホントにそうなるのか?? 電力会社がそんなことするのか??

(『脱・石油を急ぐ中部電力、ガス火力発電で年400億円以上のコスト削減へ』)
中部電力は、やる気です。他電力も、何もしない訳にはいかないでしょう。燃料無駄にバカ食いする石油火力で発電しておいて、「電気料金値上げを」なんてのは、無茶な要求です。
これで原発代替燃料費の4割はカバーされます。さて、残りの6割、これも放っておいても減ります。
原粗油をLNGで代替すると発電燃料費はLNGのみ6兆円ほどということになります(2013年輸入額5兆385億円+原粗油代替分1兆円)。(なお、今回の書き込みでは、問題指摘されることがほんどないので、石炭には触れていません。)
LNG、高く買いすぎていることは現在の常識です。米国の4倍とか言われますが、まあ、冷却して液化して移動する手間とかもありますので価格1/4は無理として、現実的にはどうすることができるのでしょうか。
「東電がシェールガス年200万トン確保、調達3割安に」(ロイター 2013年2月6日)
まあ、ヘタレの東電でも、このくらいはできます。だってこれまで、わざと高く買ってきたのですから。
3割安です。もし6兆円全部がこのペースで行けて3割安なら、1兆8千億円、安くなる、ということになります。
お、先ほどの1兆円と合わせれば2兆8千億円、原発代替燃料費の増加分(2兆6千億円)、かくして解消です。
さて、以上で一番重要なのは「放っておいても」というところです。原発再稼働できないという状況で、電力会社をジタバタさせれば、この程度は出てくる、発電は合理化される、ということです。
なぜ電力会社は、それをしてこなかったのかと言えば、地域独占・総括原価方式で、発電に金がかかればかかるほど儲かる料金システムになっているからです。原発を止められ、いざ赤字と直面しなければならなくなったら、やります、できます。
「放っておく」よりも、もちろん、もっと良い方策があります。
電気料金を引き下げる努力をちゃんとするように、地域独占・総括原価方式を止め、自由競争させれば、電力会社はもっと努力するでしょう。あるいは、努力しなかったところは潰れ、結果として、努力した電力会社が主流となるでしょう。電気料金引き下げにもなれば、貿易赤字減少にも役立ちます。原発みたいな経済合理性のないもの、やってられないでしょう。
労働法の規制緩和でブラック企業をのさばらせるようなことばかりやってないで、ちゃんと電力自由化・規制緩和をしろ~、安倍。
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やっぱりおかしい「原発代替燃料で貿易赤字」・・・新聞社の社説など
2014-02-02
2013年の貿易収支速報について、メディアの多くは「原発代替燃料費で貿易赤字となった」という趣旨の速報を出しました。例えば読売新聞なら「「財務省が27日発表した2013年の貿易統計によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は11兆4745億円の赤字だった。/赤字額は、これまでで最大だった12年の6兆9411億円を大きく上回った。円安が進んで輸出額は3年ぶりに増えたが、火力発電用の液化天然ガス(LNG)などの輸入額の増加が上回った」といった調子です。
実際の財務省の発表「概要」にあった文言は、「平成25年分については、輸出は自動車、有機化合物等が増加し、対前年比9.5%の増加となった。また、輸入は原粗油、液化天然ガス等が増加し、15.0%の増加となった。その結果、差引額は▲11兆4,745億円となった」です。原発のゲの字も入っていないんですけど。まあ、ブリーフィングで何か言っているのかもしれませんが。
実際のところ、原発代替燃料はどの程度輸入されているのか、今回さらに考えてみます。
数字をちょっと追ってみますが、これが実はとてもやりにくくできている。
前回引きずりだした「わが国で使用された原油のうちの何%が発電用だったか」by 石油連盟、これ、資源エネルギー庁の『エネルギー白書』だと、古いデータしかないので、その出所が石油連盟だったので、石油連盟HPに行ったわけですが、やっぱり古いデータしかない、といった状態。
資源エネルギー庁、これくらい基本的な数字、自分で計算して出せよ。
まあ電気事業連合会のHP行けば、燃料使用量の統計データは載っているわけで、それで計算すればよいかと思うわけですが、行ってみると、重油と原油が別項目で、今度は輸入原油に対する全体量がよく分からない。まったくもう・・・。
ちっ、と思いつつ、こうなりゃ意地だ、メゲずに推計してやるぞ~!!
まずは、電気事業連合会のHPからデータ取得して計算です。なお、下の表は発電用消費量です(電気事業連合会HPのデータには受入量とか、いろいろあって、これも紛らわしい。しかも現在2012年度までしか無い)。
「重油」「原油」は別項目ですが、後の計算では「原粗油」にまとめる必要があります。強引ですが共に「kl」単位ですので足して考えてみます。2010年度から2012年度で増えた分は、2012年消費量に占める割合としては 重油60.8%、原油64.7%なので、間を取って62.6%ということで、まあ、大きな誤差は生じないでしょう。
2010年度 | 2011年度 | 2012年度 | 2012年度消費量に占める対2010年増加分 | ||
重油 | kl | 6,298,687 | 11,828,097 | 16,065,618 | 60.8% |
原油 | kl | 4,759,378 | 11,604,834 | 13,476,256 | 64.7% |
重油+原油 | kl | 11,058,065 | 23,432,931 | 29,541,874 | 62.6% |
LNG | t | 41,743,774 | 52,869,206 | 55,709,528 | 25.1% |
現在わが国で消費されている原粗油の発電用途向けのうちの62.6%、LNGでは25.1%ほどが、原発代替燃料であると推定されます。(2011年度から原発止まっていって、2012年度にはほとんど止まっていますから、2013年の数値とほとんど変わらないものと思われます)。
さて、石油連盟のデータでは、わが国の原油需要量の11.92%が、2011年度、発電用でした。上の表で2011年度と2012年度を比較すると、重油は35.8%増、原油は16.1%増、重油+原油は26.1%増となっています。そこで最後の数値を取り、わが国全体の原油輸入量自体は2011年度から2013年度でほとんど変化していませんので、2012年度および2013年度の発電用途向け石油消費は、11.92%×(100%+26.1%)≒15.0%と推定することができます。
なお、LNGでは、前回資料の通り、発電用途向けは71.4%です。
かくして、原発代替燃料は
わが国の原粗油輸入量の、15.0%(発電用途向け)×62.6%(原発代替ぶん)≒9.4%
わが国のLNG輸入量の、71.4%(発電用途向け)×25.1%(原発代替ぶん)≒17.9%
ということになります。
2013年度の輸入額にこの比率をかけると、
粗原油 14兆2千億円 × 9.4% ≒ 1兆3千億円
LNG 7兆1千億円 × 17.9% ≒ 1兆3千億円
ということで、2兆6千億円ということになるでしょうか。
わが国の2013年の貿易赤字11兆5千億円の中の2兆6千億円、そりゃあ、小さくはありませんが、他の要因が8兆9千億円です。他の要因による赤字が3倍以上です。
それに、そもそも「円安」。輸入総額81兆2622億円の支払い、これが2013年の96.91円/ドルに対して2012年の79.55円/ドルだったら、66兆7053億円で済んだわけで、差し引き14兆5569億円相当。つまり、11兆5千億円の貿易赤字なんて、なかったわけです(本来なら、その分輸出が減るとかなんだけど、周知のように、円安でも輸出が増えてませんので、今回はそれ、考えなくてよいです・・・アベノミクスの不自然な円安誘導は、害ばかりで益がないということです)。
さて本題です(ここまで長かったな~)。
「揺さぶられる貿易立国・日本 貿易赤字、過去最大 論説委員・井伊重之」(産経msn 2月2日)
↑産経の解説記事です。「赤字拡大の要因は主に2つだ。原発の相次ぐ稼働停止に伴い、火力発電向け燃料の輸入が増えたことがまず一つ。円安で輸入金額もかさ上げされた。この燃料輸入増によって貿易収支は約2兆6千億円悪化した。/もう一つが円安効果を生かし切れず、輸出が伸び悩んだことだ」。相変わらず、原発停止代替燃料を槍玉に挙げていますが、原発代替燃料費計算自体は、当ブログと一致しました。数字はプロパガンダではないようです。
ところが産経新聞、関西向けコラムでは本領発揮、「貿易赤字の解消は原発再稼働しかない(1月29日)」です。記事の中では「原発が停止すれば約3兆円の国富が流出する」と書いています。本紙記事より4千億円、サバを読んでいますが、それで「原発再稼動しかない」って、いや、残りの8兆5千億はどうするつもりなんでしょうかね??
「社説:視点…「国富流出」の議論=論説委員・中村秀明」(毎日新聞HP 2月2日)
↑毎日新聞の社説は「そもそも貿易赤字を『国富流出』といった表現で問題視するのがおかしい。国の成熟に伴って貿易赤字が増え、それを海外投資などの貿易外の黒字でまかなう構造に変わるのは自然なことだ」。まったく正論です。現在の具体的状況についても「量の増加に比べ額の増え方が大きいのは、天然ガスと原油の国際価格上昇に加え、アベノミクスによる円安で円建て価格がふくらんだからだ。増加額のすべてを原発停止に絡めるのは短絡的だ。もともと日本の天然ガス輸入価格は欧米に比べ割高である。足元を見られている面もあるが、コスト意識の低い購入契約に問題がある」。実に正しい。
さて、朝日新聞↓

「直接の原因は国内の原発が止まり、火力発電の燃料である天然ガスや原油の輸入が増えたことだ」。う~ん、原油の輸入量自体は増えてないんですけどね。まあ、原発代替燃料がなければ、もっと減っていたわけですから、それよりは増えたと言えばそうなんですけどね。
議論に盛り込まれている要素は毎日新聞と大きな差はないのですが、書き方として、ひっかかるところがあるなぁ。「貿易収支は東日本大震災後、赤字に転じた」ってのは、いずれ赤字に転じる状況であったところ、たまたま、東日本大震災のタイミングが重なっただけなんですけど。
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【Cs137の降下】東京(4)浜岡原発
2014-02-01
福島原発の際、季節風の関係で、放射性物質の多くは太平洋方向に飛ばされていると考えられます。しかしリアルタイムで船を出して降下物質の観測をするなんてことはできようはずもなく(被曝の危険もあるし)、データとして上がってこないので、(事故後測定された)陸地に降った放射性物質の状況から福島原発事故の影響を考えがちです。しかし、他の原発で事故が起きた場合、風向き次第では、福島では“海に去った”状況が陸地で再現されることだってあり得ます。
そこで、福島事故の洋上シミュレーションを、他の原発に重ねる、重ねあわせ図を作成してみます。セシウム137に関するシミュレーションの重ね合わせです。原図などはこちらです。なお、原図と現在の状況を見比べてみると、オレンジの領域はほぼ帰還困難区域となり、黄色の領域は半分程度、居住制限区域となると考えられます。
今回は「東京はどんな危険に曝されているのか」の4回めです。まわりの原発について作図してみます。福島事故のシミュレーション図を浜岡原発に移動し、反時計回りに120度ほど回転して重ねてみました。神奈川県の西半分ほど5万MBq/km^2以上セシウム137が降って来る黄色の領域となります。東京の大部分は1万~2万5千MBq/km^2の範囲となります。もちろんこの数値は安心などと言っていられるものではありませんが、政府は「大丈夫」と言うでしょう。

・背景とした地図はKenmapで作成した白地図です。フリーソフト作成者のT. Kamada様、ありがとうございます。
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静岡県浜岡原発