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【図解で明白②】九電・川内原発・火山噴火シミュレーション、やっぱりヘン

2014-03-28
 「第95回原子力発電所の新規制基準適合性に係る審査会合」(3月19日)での、川内原発に関する九電の説明、九電の担当者自身が、「自分たちの火砕流シミュレーション・モデルは現実的でない」と言ってしまう迷走ぶりでした↓。

 「敷地周辺での流れを見ますと、・・・この解析で図面上で広がり具合を、速度を簡単に出しますと500kmとか700kmぐらい、じゃないと再現できない、実際にそのくらいの速度があるのかというと、甚だ疑問ではありますが、そういう非物理的なものを入れている状態で計算があうという状態ですので・・・」(九電・香月・副長、当日の発言

 いったい九電は何をやったのでしょう?? 「非物理的な」って、このシミュレーション、どんなものなのでしょう。原子力規制委員会の吾妻専門委員は、九電シミュレーションで「初速度がゼロに設定されている」点に注目して、「噴煙柱が上がって、自然落下で落ちてくる」設定になっていますねと言っています。まずはこのあたりですね・・・、

普通の火砕流イメージ

 普通の火砕流のイメージとしては、↑こんなふうに、ある方向に初速度をもって打ち出されるケースが多いと思われますが、九電シミュレーション・モデルでは初速度ゼロです。つまり↓

初速度0シミュレーション

 こんな感じです。
 使用されているのがTITAN2Dというシミュレーション・ソフトです。ググると、火砕流以外にも、土砂崩れ、雪崩といったもののシミュレーションに使われるようです。要するに粉状のものが、どう斜面を流れ落ちていくのかを見る時に便利なソフトということになります。
 九電のやった、初速度0のシミュレーションというのは、審査会合配布資料↓の図(ピンク矢印のところ)の、こんな形のバケツ、というかボールに砂を詰めて、砂浜ならぬ九州のジオラマの上に伏せて置き、さっとボールを外すとどう崩れるか、といった感じのことをしたことになります。

パイル形状

 九電・香月・副長が気にしていたのは、摩擦係数をほとんどゼロにしないと、五木村まで届いてくれないこと。その結果、川内原発あたりでは、火砕流の速度が時速500kmとか700kmというとんでもない高速になってしまうことでした。
 ま、そりゃそうで、初速0で、勢いがついていませんから、普通に抵抗があったら(普通に摩擦係数を設定したら)、90kmも離れた五木村どころか、すぐ近くで止まってしまうでしょう。
 では、それをどうやって回避するか、九電は摩擦係数を非現実的なまでに小さくしました。何でそんなことする必要があったのでしょう。いや、別の方法もあるわけで・・・
 一つは噴出物の量をとてつもなく多く想定すれば、火砕流は広範に広がります。ま、でも、噴出物の量は推定値がありますから、あまりに多く設定するのは無理でしょう。
 とすると、横方向への力が大きく作用した、と考えるのが妥当でしょう。実際の火砕流は、どこかで横方向へのエネルギーを獲得し、90kmも離れた五木村まで到達したはずです。
 横方向の力の1つはもちろん初速です。でも、もうひとつ重要な要素があります。
 TITAN2Dは、もともと斜面を流れ落ちる様をシミュレートするのが得意なソフトです。つまり何が言いたいのかというと、打ち上げられた火山灰やら何やら、落ちてくるところで斜面にぶつかれば、横方向への力を獲得します。カルデラというのは「噴火後、陥没した地形」とされますので、姶良大噴火の際には、落下地点にはまだ大きな山体があったのではないでしょうか。それにぶつかって横方向への勢いを得ているはずです。そうやって横方向への力を火砕流に与えてやれば、摩擦係数を非現実的なまでに小さくしなくてもよいはずです。
 ところが、九電シミュレーションでは、地形として入力されたのは現在地形です。カルデラが陥没した後のくぼみへ火砕流が降ってくるわけです。それでは横方向への力が発生するはずもないでしょう。(むしろ、陥没後のエッジに遮られ、特にエッジの出っ張った方向へは、落ちてきた粉、流れにくくなるはずです。ということで、その先に川内原発が来るよう、わざとやっているのかな~)
 と、いうことで、九電には何が何でも現在地形でシミュレーションを行う必然性があるわけですが、これではとても火砕流のシミュレーションにはならないでしょう。

 ま、あとは蛇足ですが、火砕流の速度自体はどうだったのでしょう?? 九電の計算の仕方がカルデラのエッジにこだわったもので、ヘンだとしても、何らかの理由で、火砕流の速度は相当速かったはずです。摩擦係数が小さいにしても、横方向への力が大きくかかったとしても、いずれにしてもかなりの速度がなければ、山二つ越えて三つ目の山の中腹にある五木村まで、火砕流は到達しないでしょう。
 消防防災博物館HPの記載によると、「火口から噴出した火山灰や軽石が一体となって地表にそって流れ下る現象が火砕流です。その速度は10m/s~100m/s以上に達し・・・」(消防防災博物館HP)となっています。100m/sということは、360km/hですから、この記述に従うなら、360km/h以上に達する可能性があるということになります。
 おお、ここまで来たら、500km/hも、ありじゃないかと、そんな気もします。まあ、火砕流の速度は斜面の傾斜のきつさ次第という面がありますから、ほとんど平地となっている川内原発近くでこの速度が出るかといえば、かなり難しそうではありますが、それはあくまで、よくある“普通の”火砕流のケースです。
 今回問題になっている“九州山地の山の頂2つを越え、もう1つの九州山地の山の中腹(姶良カルデラ90km地点)まで登った”姶良大噴火の際の火砕流であれば、50km程度の地点にある川内原発近辺でも、これまで観察された最大級の火砕流を上回る速度が出ていないと、その先、山2つ越えて40kmも行けないでしょう。ま、九電のシミュレーションとは全然関係のないシナリオになりますが。

 さらに蛇足となりますが、そもそも、火山の「ドッカーン」という音は、火山爆発の際に噴出したガスが音速を超えることによって衝撃波が発生したということですので、その程度の速度(超音速)まで、火山弾も加速される可能性があるんじゃないでしょうか。新燃岳の空振は音速の3倍に達していたという解析結果が報道されたこともありました。超巨大爆発の場合、こういった気流の流れによって、固形物がそれに近いスピードまで加速されるということはないのでしょうか??
 音速の1倍(マッハ1)の場合だと水平速度は・・・(音速を超えて衝撃波が発生すると、それにエネルギー取られて、急減速となるので・・・)

マッハ1

 あ、そうそう、肝心なことを書き忘れていました。

 「阿蘇山における7万年前の火砕流は180km離れた中国地方西部にまで達しました.噴出した大量の火砕物は火砕流台地をつくり,それが抜け出た跡は陥没してカルデラになります(図13.2 日本のカルデラと火砕流台地).高い尾根や山は運動の障壁になり,先端は谷に集中しやすいという地形の効果はありますが,危険域は火口を中心とし噴火規模に応じた半径の同心円の範囲に設定されます.」(防災基礎講座HP

 大規模噴火の場合、「高い尾根や山」なら多少の影響はあるが、危険域の考え方は、ちまちましたこと考えるんじゃなくて、ざくっと同心円で行うと書かれています。どうせうまく行かないんだから、小細工やめろよ、九電。



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