ウラン、値崩れ!! 反騰を期待しても原子力産業が結局ダメな理由
2014-06-05
日経新聞によると、「ウランの国際スポット(随時取引)価格が一段と下がり、約9年ぶりの安値水準にある」そうです。「ウラン、スポット価格9年ぶり安値 原発再稼働遅れ」(日経新聞HP 6月4日)
過去最高値をつけた2007年と比較すると8割安、今年の年初と比べても2割安だそうです。
もちろん、日本で原発再稼働がなかなかできないことが、この原因の一つです。「日本は原発事故前の10年には米国、フランスに次ぐウラン消費国で世界の約1割を占めていた」(上掲記事)とのことで、需給状況が、ぐっと緩和します。
しかも、台湾では原発建設が凍結されましたし、チェコでも増設がストップ、ドイツやスイスが脱原発に進んでいることも大きな要因だそうです。
さらに間の悪いことに、このタイミングでカナダ・ナミビア・カザフスタンで、新鉱山からの供給が開始され、ますます供給過剰に輪をかけているそうです。カナダの鉱山には出光興産も絡んでいるとのこと。
もうダメでしょ、原子力産業。
いや、経済学的常識から言えば、値段が下がれば需要が増え、一定のところで踏みとどまるはずということになります。でも、原子力の場合、電力業界がさんざん言っているように、発電コストの中に占める「燃料費の比率は低い」 (設備費・安全対策・地元対策が高くつく)わけですから、燃料費がちょっと安くなったくらいでは原子力発電のコストが大幅に低下したりはしないのです。ウラン価格低下による需要増は限定的と考えられます。
ま、こんなこと書くと、原発推進派は、“発展途上国で多数の原発が建設中だから、ウラン価格はいずれ反騰する”(つまり原子力は衰退産業ではなく、日本も原子力から降りちゃいかん)とか、言うのでしょう。当ブログにもそんなコメントを投稿する人もいました。
実際、この日経の記事自体にも、「ただ、中国やインド、トルコなど新興国では原発の新増設が相次ぎ、約70基の原発が建設中だ。新規鉱山の開発などが停滞すれば、『将来的に需給が逼迫し、ウラン価格が急上昇しかねない』(大手商社)との懸念も出ている」と書いてあります。
でも、やはり原子力は衰退産業であることに変わりはないと思われます。

(IEA『世界エネルギー投資展望』 2014年版 99ページ)
↑国際エネルギー機関(IEA)がつい最近出した『世界エネルギー投資展望』からの図です。2035年までの発電容量と、投資の展望を解説したものです。原子力が黄色、再生可能エネルギーが緑です。
まず、発電容量で、再生可能エネルギーは原子力の6.8倍となっています(3930/580)。もっとも、一日中動き続ける原子力と、自然条件に左右される再生可能エネルギーでは、発電量にすれば2.7倍と、その差は縮小します(11640/4290)。ここで、原発推進派は、「そうそう、やっぱり原子力は発電力が違う」とか思うんだと思います。(ま、昼しか発電できない太陽光発電と較べれば、夜も発電を止められない原子力が倍以上の発電量になるのは当たり前で、で、その夜間電力、使い道がなくて困るだけなんですけどね。)
で、今回の話で一番重要なのはその隣の「投資額」です。5.5倍です(5860/1060)。動く金の量、これだけ違います。
ウランの価格自体は上がったり下がったりするでしょうし、原発設備産業にも、それなりの金は流れるでしょうが、どこで商売するのが有利か(再生可能エネルギー分野か、原子力分野か)、ちょっと考えてみれば、時代の流れは明確でしょう。原発にしがみついている限り、狭いニッチで押し合いへし合いするしかないわけです・・・再生可能エネルギーに力を入れない日本の産業、かくしてまた衰退するのでしょう。
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