「2016~20年、もんじゅ廃止」の衝撃
2014-08-03
もんじゅ・・・これまで何度も実証試験に失敗し、成功の見通しは立たず、しかも今や建設開始後30年近くも経ち、これで実験したところで何の役に立つのかもわからない上、さらに昨今ではズサンな管理体制だったため原子力規制委員会によって実験運転さえ禁じられてしまった、どうしょうもない実験施設です。しかしこの施設、核燃料サイクルのキモですので、原子力ムラはこの施設にこだわり、けっして廃止を受け入れませんでした。おかげで、たとえ実験ができなくても、冷却材の金属ナトリウムが冷え固まってはどうにもならなくなりますので、予熱用の燃料費等カットできるわけでもなく、一日あたり5500万円という維持費の支出は止まることがありません。
まあ、ちゃんと管理せずに、もしこのナトリウムが外部と接触したりしたら、福島第一事故以上に厄介な事故となること間違いなしですから、保守作業はやってもらわないと困ることは困るのですが・・・。
さてしかし、この「もんじゅ」、2016~20年には廃止されます、d(`・д´・ )キッパリ。なぜなら、
「全面自由化16年4月実施へ 電力小売り、経産省検討」(47NEWS=共同通信 7月29日)
「発電参入、1万キロワット以上に 届け出制でハードル低く」(日経新聞HP 7月30日)
2016年4月には、家庭用電力の小売が自由化されます。そして、
「経産省、原発と電力自由化の両立探る 関連制度見直し進む」(日経新聞HP 6月13日)
この記事によれば、「経産省は20年までに、電力会社が積み上げた費用をもとに、電気料金を決める『総括原価方式』も撤廃する方針」とのことです。自由化のお題目(目的)は「市場競争による電気料金の引き下げ」ですから、電気料金を国が決めていては話になりません。
ここでなくなってしまう総括原価方式における、電気料金算定根拠「電力会社が積み上げた費用」を、どう計算するかを定めた「一般電気事業供給約款料金算定規則(平成十一年十二月三日通商産業省令第百五号)」での、“加工中核燃料”の記載

これこそが、もんじゅの存在意義ですから、もんじゅの寿命も総括原価方式の廃止までです。
電力会社が原発で使用した核燃料の燃えカス「使用済み核燃料」、これを、加工すればまだ使える資源として、資産評価し、発電のために所有している資産として「電力会社が積み上げた費用」に算入すると決めているのが、この“規則”です。
燃えカス、ゴミを溜め込むことで、電力会社の(算定される)資産は膨れ上がり、電気料金は高騰し、電力会社は濡れ手で粟の儲けを手にしてきました。
もちろん燃えカスが、なぜ「まだ使える」と査定され「加工中核燃料」となるのかといえば、核燃料サイクル、高速増殖炉がゴミを燃料へと転換してくれる、・・・というお話になっているからです。高速増殖炉「もんじゅ」こそが、この燃えカスを資産として評価する“電気料金算定マジック”を支えているのです。
ですから、総括原価方式がなくなれば、もんじゅは存在意義を失います。なんせ、高速増殖技術の開発自体には、この古臭い炉、もはや何の役にも立たないのですから。
と、いうことで、「もんじゅ」は2016~20年には廃止されます、d(`・д´・ )キッパリ。
さてしかし、そう簡単に行くのか・・・
ここでちょっと電力会社の有価証券報告書を見てみます。原発依存度の高い、関西電力・九州電力・北海道電力と、依存度の特に低い中部電力、そして、まあ、どうでもよい東北電力です。
関西電力 | 九州電力 | 北海道電力 | 中部電力 | 東北電力 | |
総資産(百万円) | 7,777,519 | 4,549,852 | 1,782,776 | 5,782,180 | 4,243,037 |
自己資本比率 | 15.3% | 10.5% | 7.6% | 24.2% | 12.6% |
加工中等核燃料(百万円) | 447,484 | 197,395 | 129,574 | 205,057 | 118,817 |
自己資本に対する加工中等核燃料の比率 | 37.6% | 41.3% | 95.9% | 14.7% | 22.2% |
もんじゅが廃止され、核燃料サイクルが終わりとなると、資産として計上されている燃えカス「加工中等核燃料」、資産からなくなります。財産が消失します。まあ、もともと存在しないものが上の“規則”のせいで記載されていただけで、粉飾決算ができなくなる、ってだけの話なんですけど。
で、上の表は(会社によって微妙に有価証券報告書の書き方が違ってわかりにくいところがあるので、どこの会社でもはっきりと書いてある)総資産に自己資本比率を掛けて自己資本とし、それを「加工中等核燃料」と比べた結果、つまり、加工中等核燃料/(総資産×自己資本比率)です。
粉飾決算でも資産は資産、消失すれば自己資本の37.6~95.9%にも及ぶ額を、特別損失とかで処理しなければならなくなるわけで、やっぱ無理かなぁ~、倒産しそうだし。
もんじゅ廃止は、やっぱ「衝撃」だな~。
で、上掲記事 「経産省、原発と電力自由化の両立探る 関連制度見直し進む」(日経新聞HP 6月13日)と、なるわけだ~。ここで、どういうインチキをするのか経産省??
核燃料サイクル・もんじゅを維持して、場当たり的に電力会社救済を行うというのも、一つの方法だろうが、しかし、このタイミングで、もんじゅを廃止しないと、いつまでも赤字のタネを引き摺ることになるわけで、経産省自体も困るはずなのだが(それは当然、国民の赤字でもある・・・ま、原子力ムラの黒字になればそれでいいというところだろうが、電力自由化がある程度機能すると原発依存電力会社、原子力部門に金払うがために発生する赤字(燃えカス加工MOX燃料やら何やらはとにかく金がかかる)のせいでホントに倒産する可能性があり、そうなってしまっては経産省、元も子もない)。
ま、北海道電力プレスリリース「電気料金の値上げ申請について」(7月31日)によると、「自己資本比率は過去最低の5.4%となりました」とのこと。こりゃ確かに電気料金値上げが必要でしょう。で、上の表にこの数字を代入すると、「自己資本に対する加工中等核燃料の比率」、134.6%です。これで、2016年の電力自由化が乗りきれるのか、いやはや、何がどうなっても、やっぱ終わってます、北海道電力。
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