玄海原発とフクシマ: 佐世保市・壱岐市
2012-01-26
昨日は佐世保市、壱岐市、松浦市、平戸市の原子力災害時避難計画について、“甘いんじゃないか”と記しましたが、なんでこんな計画になるのかというと、国のUPZ(緊急防護措置区域)指定が30km圏だからでしょう。しかし国のこの指定は極めて便宜的なもので、はっきり言って根拠はありません。実際、この地域指定を決定した時と比較して、安定ヨウ素剤服用基準は2倍に厳格化されているのに、一向に地域指定変更は検討されていません。その名も、意味づけもズバリの「放射性ヨウ素防護地域」(PPA)、“安定ヨウ素剤服用の必要な地域”、についてさえです。30kmというのは、鬼ごっこの安全地帯のように、「この線越えれば大丈夫」といったものではなくて、経済的・行政的理由によって歪められた、極めて縮小された範囲指定に過ぎません。福島で一体何が起こったのか、現実をしっかり頭に入れて、避難計画を立てなければ、意味がありません。福島原発事故の巨大さを認識して、シビアアクシデントに対処するための計画は立てられなければならないでしょう。もう一度作図してみます。「UPZは30km圏」などという空疎な地域指定から避難計画を立てるのではなく、実際の汚染状況がどうであり、何をしなければならないのか、考える必要があるはずです。

上図は、群馬大学早川教授作成の「放射能汚染地図(五訂版)」(Adobe Illustrator CS1版)から、汚染状況のレイヤーを抜き出し、佐世保市の方向に汚染濃厚地帯が向くように回転し、Kenmapで作成した白地図に重ねてみたものです。クリックすると拡大します。
佐世保市近辺、どう避難するのか、市の立てた避難計画(市の南部に避難)で済むほど簡単な話ではないことは一目瞭然だと思います。ちょっとした風向きの違いで、市のどこでも重度に汚染される可能性があることが見て取れます。
壱岐市については、もっとひどい状況です。今度は濃厚汚染地帯が壱岐市に向かうとして、同様に作成してみた図が次のとおりです。(余波の方向も考えて、汚染地帯は裏焼きにしてあります)。図はクリックすると拡大します。

確かに、島の北部は「8μSv/h以上」からは外れています。でもそれは福島の場合。この程度の被曝線量低下は、シビアアクシデントの規模、当日の気象状況によってどうにでもなってしまう範囲です。というか、玄海原発との間に海しかない壱岐では、福島よりダイレクトに放射能雲(放射性プルーム)は届くと考えるべきです。島の北部でも避難が必要な事態になった場合どうするのか、そこまで考えて避難計画を立てるべきでしょう。まあ、この地域、こういう風向きは滅多に無いということで、避難計画は最初からおざなりで良い、と考えているのかもしれませんが。
〔謝辞〕貴重な地図・データを作成・公開されている早川由紀夫先生と協力者の皆様、ありがとうございます。また、使い勝手の良い白地図作成ソフトを作成・公開されてるT. Kamada様、ありがとうございます。
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佐賀県玄海原発