「公務員の不作為」: 福島原発事故と薬害エイズ
2011-09-12
「貞観津波」でgoogle検索してみると、最上位に近い位置で出てくるのが「白老の自然情報」というブログの3月26日の記事「貞観津波を原子力安全・保安院が無視 福島原発災害は人災」です。内容は要するに“原子力安全・保安院(と東京電力)は、3.11級の津波の恐れがあることを専門家から指摘されていたにもかかわらず、無視してきた”というもの。経済産業省の原発関連の審議会において、産業技術総合研究所活断層・地震研究センター長 岡村行信 氏が2009年6月、「貞観津波」に言及し、今回のような巨大津波の危険性について指摘していたのです。ここで菅前首相の次の発言を思い返してみることは有意義ではないでしょうか、「菅首相:『薬害エイズとそっくり』保安院を激しく批判」。この記事の要旨は、菅前首相が“監督官庁である原子力安全・保安院が、自らの立場を忘れ業界とぐるになっていることを批判した”ということになるでしょうが、「そっくり」と言ったからには、話はそれだけでは終わらないはずです。薬害エイズ裁判では、重大な判決が下されました。
官僚の個人責任を認定した始めての裁判が薬害エイズ裁判でした。“厚生省の担当課長は、非加熱製剤の危険性について専門家から指摘を受けていたにもかかわらず、必要な措置をとらず、結果として多数の死者を出すに至った”とし、国の責任を認定するとともに、行政担当者も「公務員の不作為」によって有罪となる、画期的な判決でした。
原子力安全・保安院は、津波の高さ想定の問題点を指摘されながら、津波想定高を修正する等の必要な措置をとらず、今回の福島原発事故を招いてしまったのです。「公務員の不作為」という言葉が重くのしかかってくるはずです。原発災害については、原子力損害賠償法において、国を免責したとも読める条文があり、一筋縄では行かないかも知れませんが、どういうケースまで免責されるかは、今までそういう裁判がなかったため、よく定まっていないようです。
まあ、原子力安全・保安院の側からは、「検討はしていたが、間に合わなかった」という言い逃れもあり得ますから、裁判においてどこまで行けるかは分かりませんが、貞観津波という明確な事例提示がありながら、1年半も災害対策を採らなかったというのは、やはり怠慢のように思えます。
さてしかし、原告団を組織し、こういう裁判を行っていく市民団体はあるのでしょうか。「そっくり」発言をした菅前首相を始めとする民主党関係者はたぶん動かないでしょう。民主党の方針が、“責任は全部、東京電力”(だから民主党の政府・国は責任ないもんね)、ということのようですから。
刑事告発ならば誰でもできますが、それで捜査の手は動くのか?
[関連項目]
「公務員の不作為」: 福島原発事故と薬害エイズ(2)
「公務員の不作為」: 玄海原発の危険性
「公務員の不作為」: 福島原発事故と薬害エイズ(3)
「公務員の不作為」: 福島原発事故と薬害エイズ(4)
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