高速増殖炉、核燃料サイクルに「さよなら」を
2011-10-07
高速増殖炉、あるいはそれを核とする核燃料サイクル、何が危険かといって高速増殖炉それ自体。普通の原子炉(軽水炉)と違って、この炉では一次冷却材としてナトリウムを使用する。この原子炉では、炉心から熱くなって出てきた、融けた状態のナトリウムから、二次冷却材である水に熱を移して利用することになる。もちろん、直接ナトリウムと水を触れさせたのでは爆発してしまう(後日注記: あれ、このブログ記事を書いたときには、何もなかったのに、今見たら、年齢制限がかかっている・・・この映像を見られたら困る人が工作したのか?10月9日)ので、水の中に通した管の中をナトリウムは流れていくわけですが、こんな構造ですから、この管の信頼性は100%でないと困るわけです。強度および施工の可能性から、この管は金属製となるわけですが、問題は「金属」です。「金属は金属に溶けやすい」というのが、物理法則です。金属特有の硬さ(確かに硬い)と柔らかさ(曲げられる、変形できる、だから簡単には折れない)の同居を可能にするのが「金属結合」という分子の結びつき方。で、この金属結合、特に相手は選ばない。相手が金属であれば、誰が来たって結びつく。お互いに溶け合う。だから金属どうしを混ぜて合金を作ることも出来るし、表面に違った種類の金属をくっつけてメッキをすることも出来る。
ナトリウムも金属です。ナトリウムの通る金属管は、常にナトリウムによって溶かされる可能性があるわけです。もちろん、様々な合金技術や何やらで、簡単に溶けて穴が開かないようにはしてありますが、100%とは行かない・・・では、困るのです。ナトリウムは水と接すれば常温でも水素を発生し、反応の激烈さから熱が出れば、水素に火がついて爆発する・・・それ単体で福島原発と同じ、水素爆発をするわけですから(後日注記: リンク先変更)。
それにまた福島との関係で言えば、全電源喪失になると、ナトリウム配管の原子炉外部分でヒーターが止まり、冷えてしまう可能性もあります。炉内はアッチッチでナトリウムの流動性が確保されていたとしても、圧力逃し機構とか、ナトリウム追加投入配管で冷えたナトリウムが固体の金属となり、管を塞ぎ、原子炉の機能に重大な問題が発生することが考えられます。それに何よりも恐ろしいのは、炉心に多量のナトリウムが存在する高速増殖炉では、事故が起きた際、水をかけることができない。配管が破損していた場合、水素爆発の恐れがあります。福島では結局、水をかけるしかなかったのですが、高速増殖炉では、それもできず、全くのお手上げとなることが考えられます。
「原理的に安全」なはずの、水を使用した軽水炉で水素爆発を経験した今、「原理的に危険」な高速増殖炉を開発するなど、何の学習能力も無いばかげた話としか言いようがないはずです。
「増殖炉の開発費7割削減」ということが報じられました。高速増殖炉実験設備「もんじゅ」の予算が7割削減され、維持費のみになったとのこと。まあ、廃炉にするにはまた別に相当な予算が必要ですから、とりあえず維持費だけ、というのはしょうがないかもしれません。しかし、まだ廃止ではありませんから、けっして復活などすることがないよう見張っておく必要があるでしょう。なにしろ核燃料サイクルこそ、電力会社が濡れ手で粟を得るための魔法の技術なのですから。特に要注意なのは、これによって電力利権(天下り先、寄付金、選挙要員提供等々)を手にしている経産省官僚・政治家あたりです。朝霞の公務員宿舎のように、どんな工作をして「再開」などと言い出すか、わかったものではありません。
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