玄海原発1号機の危険性: 「住民投票実現アクション」に寄せて
2011-10-05
福岡市に原子力安全協定の締結を求める内容を含む署名運動、フクオカ住民投票の会による「住民投票実現アクション」が始まりました。このブログでも、多少とも応援できればということで、福岡市が原子力安全協定を結ばなければならない理由について、まとめておきます。
福岡市において、まず頭においておかなければならないことは、玄海原発1号機の危険性です。既に、このことに関する指摘はネット上にいくらでもありますが、あまりにも明白な危険性の“指摘”は、九州電力の広報資料の中にあります。この広報ページにある唯一のファイル「玄海原子力発電所1号機原子炉容器の照射脆化に対する健全性について」の2ページ冒頭が、次の表です。

監視試験片の劣化度合いを測定した結果、第1回の昭和51年で、既に昭和57年ごろに到達する予定だった劣化度を示しており、その後も劣化は進み、第4回平成21年4月には、平成72年ごろ到達予定のレベルまで劣化してしまっているのです。耐用年数まで使ったとしても考えられないくらい(原子炉の耐用年数は40年程度とされることが多い)、劣化しています。1975年に運転開始した1号機、2009年(H.21)には、既に2060年(H.72)相当、つまり建設後85年相当の、ぼろぼろの原子炉だということです。この異常な速度の劣化は、現在も進行中であると考えられます。
昨日、玄海原子力発電所では、4号機がトラブルで運転を停止しました。1号機で何かが起きた場合、単純な停止(制御棒の挿入)で済まないと、かなり危険です。緊急時には炉心へ冷却水が注入されることになりますが、上の数字は、一気に冷やされた場合、ピキッと、炉心が割れる恐れが高まっていることを示しています。「玄海原子力発電所1号機原子炉容器の照射脆化に対する健全性について」という文書の後半は、それでも、この値はまだ余裕がある、大丈夫、という説明に費やされ、今後「運転開始後60年を経過しても」まだ「余裕」がある、とされています。
しかし、上の表の注釈として掲げられているのが、次のグラフです。

「運転開始後60年」とは、どういう意味でしょうか?

今後の予想は、これまでの予測カーブに基づく予想のはずですから、「運転開始後60年」とは、かつての予測カーブに沿っていく上図の青のラインとなります。でも、この図に予測を書き込むとしたら赤のラインのように考えるのが普通ではないでしょうか。そうでなくとも、既に予想は大きく外れているのです。今後の予想をするのは(それも“通常の”予想カーブによって予想するのは)ナンセンスです。赤のラインの場合、いずれピキッ、とくることになります。
とにかく玄海原発1号炉は、早く廃炉にすべき原子炉の代表です。1975年の運転開始から36年間、初期の原子炉は減価償却期間16年だったはずなので、もう充分にこの原子炉は使命を果たしたはずです。こんな原子炉を使い続けようという九州電力、いじきたないにもほどがあります。
で、それが福岡市が原子力安全協定を結ばなければならない理由の一つです。九州電力、はっきり言って信用できない。やらせメール問題、佐世保燃料漏れ事件、そして、昨日の玄海4号機の事故が福岡県に通報されたのは停止後2時間を過ぎてからだった、といったように、せめて安全協定でも結ばなければ、福岡市への連絡は玄海原発爆発後2時間を過ぎてからだった、といったことになりかねません。
玄海原発で重大事故が発生すれば、福岡市はダイレクトに被害を被ります。それも時間的余裕なく。玄海と福岡市は次の図のような位置関係ですし、季節風など、この方向に吹くことが多いのは、福岡市在住者ならば自明の理です。

玄海原発の全機廃炉が望まれますが、その実現までは、たとえ気休めでも、原子力安全協定が必要です。
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