驚愕の放射性ヨウ素の拡散 その4
2013-02-01
NHKスペシャル「シリーズ東日本大震災 空白の初期被ばく~消えたヨウ素131を追う~」(1月12日午後9時00分~10時13分)、また、この番組についてですが、録画を見返せば見返すほど、事態の深刻さが印象づけられます。再々度、滝川雅之氏・鶴田治雄氏・岡野眞治氏の作成されたシミュレーションについてですが、何がどう深刻なのかと言いますと・・・まずは、放射性ヨウ素131による汚染状況図と、放射能雲の広がり(3月15日10:00)の図を合成しておきます。

問題は汚染域・放射能雲の広がる方向です。まったく常識的な方向とは違う方向に広がっています。

日本列島は大陸の東南方向に位置していますから、季節風の方向は上図のようになります。陸地は海よりも温まりやすく冷めやすいですから、このあたり一帯が温まる夏には陸地で上昇気流が発生し、空気が薄くなり、そこへ比較的温度の低い海上の空気が流れ込み、冬には逆になります。つまり、夏は基本的に南東の風を中心に、南風や東風が多いことになり、冬は北西の風を中心に北風や西風が多いことになります。
ですから、3月の原発事故、放射性汚染物質は北西の風で、太平洋上へと吹き流されるはずだったのです。実際、3月17日17:00には、そうなっています(番組からシミュレーション図)。

ところがです、実際の汚染状況はこれとほとんど直交するような方向に広がっています(一番上の図)。季節風があるとはいえ、実際の風は結構いろいろと方向を変え、原発が爆発したタイミングの風は、季節風とは関係ない方向に吹いていたということです。汚染域は南北もしくは南南西に広がったのです。
これがどう深刻なのかと言うと、要するに、一般的な風向きを前提に原発事故対策地域を設定しても、ほとんど意味が無い、ということです。
原子力規制委員会は、“深刻事故の際の放射性物質拡散予測”を発表し、それをもとに原子力防災計画を立てるよう促しています。たしかに、確率分布で言えば、こういった形で力を入れていくのが正しいということになるでしょう。でも、上の3図は、「そんなの関係ねえ~」と、雄弁に物語っています。
(「驚愕の放射性ヨウ素の拡散」リンク → その1、その2、その3)
・放射性ヨウ素131による汚染状況図と、放射能雲の広がり(3月15日10:00)の図を合成した図の背景地図はKenmapで作成した白地図です。フリーソフト作成者のT. Kamada様、ありがとうございます。
・季節風の方向を記した図の背景とした日本周辺の地図は Craft Map のホームページで生成させていただいた白地図に着色等を行なったものです。Craft Map 様ありがとうございました。
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