廃炉って、なんぼのもんや?
2013-05-17
原子力規制委員会による、敦賀原発2号機に対する事実上の廃炉勧告について、メディアはいろいろと報じています。ここでまず、読売新聞、
「敦賀廃炉なら重い負担 関電、再値上げも」(読売新聞HP 5月16日)
“廃炉なんてしたら、電気代が上がるぞ”と、いつもの恫喝です。廃炉しないで原子力発電やってたら、今度は核燃料再処理やら何やらで電気代は上がるんで、そっちと比べてくれ、と、思うわけですが、本日の ぽちたまみけ はちょっと違う。広い心で、廃炉の電気料金への影響、穏健に考えちゃいます。
読売新聞のライバル、朝日新聞は、各電力の廃炉費用の一覧表を掲載しています。

(朝日新聞5月16日西部本社版朝刊)
なおこの表の但し書きとして「経済産業省の試算など。2012年度時点ですべての原発を廃炉にすると決めた場合。各電力の損失額には、原発の核燃料の資産価値がなくなることでの損失なども含まれている」と記されています。
“うわ、巨額!!”と、見えますが、さて、電力会社って、そもそもどのくらいの規模で商売してて、その売上高のどれくらいにこの額、相当するのでしょうか? そして、廃炉には時間がかかることも周知の事実なので、まあ廃炉作業に30年くらい掛かるとして、毎年の負担はどんなことになるのでしょうか? それが全部、電気料金の値上げに回ったとして、どんなことになるのでしょうか? 朝日新聞の表にちょっと付け加えてみます。
電力会社 (原発の基数) | 原発の資産価値 (帳簿上の価格) (億円) | 廃炉費用の積み立て不足額 (億円) | すべて廃炉にした場合の損失額(資産価値がなくなった分と廃炉費用不足額) (億円) (a) | 売上高 (億円) (b) | 売上高に対する損失の比率 (a/b) | 30年間で廃炉措置/損失補填した場合の値上げ率 ({(a/b)/30}×100) |
北海道(3) | 2818 | 820 | 3790 | 5493 | 0.69 | 2.3% |
東北(4) | 3623 | 1504 | 4970 | 16633 | 0.30 | 1.0% |
東京(13) | 7297 | 4031 | 11495 | 50162 | 0.23 | 0.8% |
中部(3) | 2470 | 1428 | 3972 | 22385 | 0.18 | 0.6% |
北陸(2) | 2268 | 948 | 3135 | 4714 | 0.67 | 2.2% |
関西(11) | 3632 | 1460 | 6318 | 26065 | 0.24 | 0.8% |
中国(2) | 769 | 284 | 1533 | 10384 | 0.15 | 0.5% |
四国(3) | 1065 | 407 | 1784 | 5453 | 0.33 | 1.1% |
九州(6) | 2445 | 1021 | 4407 | 14449 | 0.31 | 1.0% |
日本原電(3) | 1864 | 409 | 2559 | 1445 | 1.77 | 5.9% |
計 | 28251 | 12312 | 43963 | 157183 | 0.28 | 0.9% |
データ出典 原発資産価値~廃炉損失額: 朝日新聞5月16日西部本社版朝刊
売上高: 電力会社 売上高&平均年収ランキング(日本原電のみ日本原電HP)H.22年3月期決算
う~ん、原発専業の日本原電は、廃炉したらその後の収入も会社もなくなっちゃうので、そもそも話が別なのですが・・・他の電力では・・・、売上高に対する損失の比率、30年計画ともなれば、なんてことない額じゃないでしょうか。確かに1年で償還するのは無理な額でしょうが、少なくとも、電気料金8%値上げ、なんていう話ではありません。
そもそも電気料金8%値上げをしなければならなかったのは、前に検証したように、止まっている原発の維持費ですから、まずその分不要になった上での廃炉費用負担なら、現在の電気料金を値下げできることになります。
問題は、会計上、廃炉決定した年に全損失額を計上しなければならないことで、その年に電力会社は債務超過になったりしますが、倒産しない保証のある電力会社ですから、なんらかの融資でしのぐことは十分可能でしょう。
なお、日本原電の廃炉費用などは、電力各社の日本原電への株式投資状況・受電状況に応じて分担するほかありませんが、結局全体として(計)、0.9%の値上げですから、全く問題なく吸収可能です。
えっ?? 「廃炉費用、こんな額じゃ済まないだろう」ですか? いや、だから、今日は広い心で、政府試算を信じましょう。これであなたも幸せだ~~。
(ま、このリンク先の試算では廃炉費用15.1兆ですので、上の表の4倍弱ということで、0.9×4=3.6%程度の電気料金値上げ相当かな・・・依然として8%より小さく、今の電気料金に対し、お釣りが来る数字です)
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