PAZ・UPZ・PPZの意味
2011-10-26
【12/15追記: 「PAZ・UPZ・PPZの意味」改訂版を作成しました。こちらも御覧ください。】原子力安全委員会の作業部会が方針を打ち出した、原子炉災害防災対策区域の区域割り設定変更案、少しは解説記事など出るかと思っていましたが、新聞記事を見ている限り、全然出てこないので、自分で考えたことを書いてみることにします。
まずは、3.11福島原発事故だと、どのあたりが新しい区域割りの対象区域となってくるか、地図を見てみます。

予防的防護措置準備区域(PAZ)5km
緊急時防護措置準備区域(UPZ)30km
屋内退避、ヨウ素服用対策準備区域(PPZ)50km
各区域が、具体的にどういう危険を背負い込むことになるのかというと・・・
PAZ、5km圏は、もちろん、危険ということで、即座に対応が必要な場所であることは言うまでもありません。
問題はUPZ(30km圏)とPPZ(50km圏)です。地図を見る限り、この両者の間の境界、30kmという距離に分割線を引く理由を与えるのは、「19μSv/h以上」という汚染濃度地域の存在ということになります。早川先生の地図ではこんな濃いレベルに違いを設けても、意味はないという判断でしょうか、このカテゴリーは設定されていませんが、文部科学省サイトの放射線量等分布マップにはあります。ちなみにこのマップ、国民の税金で作った地図なのに、著作権関係の利用制限がごちゃごちゃ記載されていて簡単には使えそうにありませんので、上図は、そこに記載されていた19μSv/h以上汚染地域を目測・手書きで、早川先生の地図上に書き写したものです。なお、この文部科学省汚染マップでは、10km圏は危険すぎて近づきたくないということで、測定空白地帯(元の地図上では網かけ)になっています。PAZは、そこにすっぽり含まれる領域ということになります。上図ピンクの書込ではその部分、なんとなく輪郭を延長して点線にしてあります。ピンクの領域の原発直近付近は、危険すぎてデータがないだけで、汚染濃度が低いわけではありません。
19μSv/hという数字がどういう意味を持つかというと、ICRPの勧告による、一般公衆が1年間にさらされてよい人工放射線の限度は1mSv(=1000μSv)ですから、1000÷19≒52.6(時間)、ということで、2日と5時間ほど居ると、ICRP勧告を超えてしまうという数字です。もちろん、実際の危険は、放射性物質を吸入して内部被爆する方が深刻ですから、これよりももっと高く見積もっておかなければならないでしょう。他方、汚染濃度は、直接飛散にしても一瞬ではなく、ある程度の時間(事故への応急対策ができて放射性物質の飛散が止まるまでの時間)をかけて上昇するので、この濃度に達するまでには、多少のタイムラグがあるかもしれません。「放射性プルーム(放射性雲)」の動向を左右する風と、そこから放射性物質を地上に降らせる雨の状況なども影響するでしょう。雨という要素を考えるならば、直接この雨に当たるのは極めて危険ということになります。
と、まあ、ごちゃごちゃ言っても、要するに、空中放射線だけで、そこに2日はいたくないレベルということになります。ただし、繰り返しになりますが、この辺の数字は、セシウムを中心に測定された値ですので、原発事故直後は、もっと半減期の短いヨウ素など、より危ない元素が存在し、空中に放射線を放射すると共に、吸い込んだり付着したりという危険を伴っていますので、この数値よりずっと危険だということは忘れてはなりません。実際、放射性ヨードが飛散してくる可能性があるので、早めにヨード剤を飲んでおく必要のある区域、というのが、PPZの説明となっていますから、空中放射線は危険の一部に過ぎず、より強力な危険がPPZ一帯に存在しています。要するに19μSv/hという数字が示される地域は、実際は一刻も早く、避難する必要がある地域ということになります。付け加えておくと、原爆手帳の交付基準は2mSv、ICRP勧告の2倍です。つまり19μSv/hという場所に4日半居ると、空中放射線だけで原爆被爆者なみの被曝となります。
以上は、UPZとPPZの境界の話ですから、風向きにより、UPZとは、これよりもひどいことになる可能性のある地域であり、「8μSv/h以上19μSv/h未満」という汚染濃度地帯を抱えるPPZとは、そこまでひどいことになる可能性のある地域ということになります。ヨード剤を配る必要があるPPZは、決して避難の不要な地帯ではありません。それどころか、国の、何を言っているのか分からなくする華麗なレトリックでは「計画的避難区域」となりますが、PPZは、風向きによって緊急避難の必要のある地域です。しかも、避難の緊急性がUPZより低い、という理由はないと考えられます。実際、ヨード剤を緊急に飲む必要があるから、あらかじめヨード剤を用意するのがPPZなのですから。まあ、風速しだいで汚染物質の到達が多少、UPZより遅れるということはあるでしょうが。(続く)
続きはこちら→ 「PAZ・UPZ・PPZの意味(2)実は100倍危険!」
【11/16追記: 放射性ヨウ素からの被曝について計算して見ました・・・「78倍危険!」】
【12/15追記: 「PAZ・UPZ・PPZの意味」、改訂版を作成しました。こちらを御覧ください。】
(以下は図についての説明です)
図は、福島原発事故の「放射能の広がり」(http://kipuka.blog70.fc2.com/)からダウンロードさせていただきました四訂版・電子国土版(リンク先はhttp://gunma.zamurai.jp/pub/2011/0911dkokudo06.jpgでした)の該当部分を切り出し、PAZ・UPZ・PPZ、19μSv/h以上汚染地区などを書き込んだものです。凡例もその図からコピペし、19μSv/h以上についての記述を付け加えました。早川由紀夫先生、ならびに協力者の皆様、貴重な図の作成・公開、ありがとうございます。
問題はUPZ(30km圏)とPPZ(50km圏)です。地図を見る限り、この両者の間の境界、30kmという距離に分割線を引く理由を与えるのは、「19μSv/h以上」という汚染濃度地域の存在ということになります。早川先生の地図ではこんな濃いレベルに違いを設けても、意味はないという判断でしょうか、このカテゴリーは設定されていませんが、文部科学省サイトの放射線量等分布マップにはあります。ちなみにこのマップ、国民の税金で作った地図なのに、著作権関係の利用制限がごちゃごちゃ記載されていて簡単には使えそうにありませんので、上図は、そこに記載されていた19μSv/h以上汚染地域を目測・手書きで、早川先生の地図上に書き写したものです。なお、この文部科学省汚染マップでは、10km圏は危険すぎて近づきたくないということで、測定空白地帯(元の地図上では網かけ)になっています。PAZは、そこにすっぽり含まれる領域ということになります。上図ピンクの書込ではその部分、なんとなく輪郭を延長して点線にしてあります。ピンクの領域の原発直近付近は、危険すぎてデータがないだけで、汚染濃度が低いわけではありません。
19μSv/hという数字がどういう意味を持つかというと、ICRPの勧告による、一般公衆が1年間にさらされてよい人工放射線の限度は1mSv(=1000μSv)ですから、1000÷19≒52.6(時間)、ということで、2日と5時間ほど居ると、ICRP勧告を超えてしまうという数字です。もちろん、実際の危険は、放射性物質を吸入して内部被爆する方が深刻ですから、これよりももっと高く見積もっておかなければならないでしょう。他方、汚染濃度は、直接飛散にしても一瞬ではなく、ある程度の時間(事故への応急対策ができて放射性物質の飛散が止まるまでの時間)をかけて上昇するので、この濃度に達するまでには、多少のタイムラグがあるかもしれません。「放射性プルーム(放射性雲)」の動向を左右する風と、そこから放射性物質を地上に降らせる雨の状況なども影響するでしょう。雨という要素を考えるならば、直接この雨に当たるのは極めて危険ということになります。
と、まあ、ごちゃごちゃ言っても、要するに、空中放射線だけで、そこに2日はいたくないレベルということになります。ただし、繰り返しになりますが、この辺の数字は、セシウムを中心に測定された値ですので、原発事故直後は、もっと半減期の短いヨウ素など、より危ない元素が存在し、空中に放射線を放射すると共に、吸い込んだり付着したりという危険を伴っていますので、この数値よりずっと危険だということは忘れてはなりません。実際、放射性ヨードが飛散してくる可能性があるので、早めにヨード剤を飲んでおく必要のある区域、というのが、PPZの説明となっていますから、空中放射線は危険の一部に過ぎず、より強力な危険がPPZ一帯に存在しています。要するに19μSv/hという数字が示される地域は、実際は一刻も早く、避難する必要がある地域ということになります。付け加えておくと、原爆手帳の交付基準は2mSv、ICRP勧告の2倍です。つまり19μSv/hという場所に4日半居ると、空中放射線だけで原爆被爆者なみの被曝となります。
以上は、UPZとPPZの境界の話ですから、風向きにより、UPZとは、これよりもひどいことになる可能性のある地域であり、「8μSv/h以上19μSv/h未満」という汚染濃度地帯を抱えるPPZとは、そこまでひどいことになる可能性のある地域ということになります。ヨード剤を配る必要があるPPZは、決して避難の不要な地帯ではありません。それどころか、国の、何を言っているのか分からなくする華麗なレトリックでは「計画的避難区域」となりますが、PPZは、風向きによって緊急避難の必要のある地域です。しかも、避難の緊急性がUPZより低い、という理由はないと考えられます。実際、ヨード剤を緊急に飲む必要があるから、あらかじめヨード剤を用意するのがPPZなのですから。まあ、風速しだいで汚染物質の到達が多少、UPZより遅れるということはあるでしょうが。(続く)
続きはこちら→ 「PAZ・UPZ・PPZの意味(2)実は100倍危険!」
【11/16追記: 放射性ヨウ素からの被曝について計算して見ました・・・「78倍危険!」】
【12/15追記: 「PAZ・UPZ・PPZの意味」、改訂版を作成しました。こちらを御覧ください。】
(以下は図についての説明です)
図は、福島原発事故の「放射能の広がり」(http://kipuka.blog70.fc2.com/)からダウンロードさせていただきました四訂版・電子国土版(リンク先はhttp://gunma.zamurai.jp/pub/2011/0911dkokudo06.jpgでした)の該当部分を切り出し、PAZ・UPZ・PPZ、19μSv/h以上汚染地区などを書き込んだものです。凡例もその図からコピペし、19μSv/h以上についての記述を付け加えました。早川由紀夫先生、ならびに協力者の皆様、貴重な図の作成・公開、ありがとうございます。
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福島県福島第一/第二原発